10話 ソロ活動開始
気付いたらブックマークが100件を突破していました。
本当にありがとうございます。励みにして、頑張っていきますので、よろしくお願いします。
5/29 加筆しました。
双子と別れた後は、西区に買い物に出かける。
プレイヤーが経営している賃貸型商店のほとんどが王都に移転したと聞いた為、住民経営の雑貨屋を探し出し、生産系作業道具の更新を行う。
兄さん曰く、チュートリアルで貰える生産系作業道具のお試しシリーズは最低限の機能しかなく、すぐ買い替えるのが当たり前の常識になってるそうだ。
調合と料理の初級キットと初級薬学書を購入する。
更にセーフティエリアでログアウトをする必要がある為、一人用野外キャンプセットも購入。しめて6500G。持っていた所持金のほぼ全額が吹っ飛んじゃった。
どうせこれ以上買うものはないしね。
しばらく初心者装備で困らないと思う。
行き詰ったら考えよう。作ったポーション類を売れば、多少元が取り返せるはずだし、討伐した素材も売りに行けばいいし。
今は入れないらしいけど、精霊神殿の雰囲気と神殿騎士の姿も見に行きたかった。精霊魔法使いとして、何か思うところがあったかもしれない。
ただ、ゲーム内時間がそろそろ夜に変わるし、夜分に押し掛けるのは何だか失礼な気がして後回しにした。
今度は北門から出門。住民達からまんま『北の森』と呼ばれている森林地帯に移動する。
こちらのフィールドはそこそこ難易度が高いが、植物系の採取ポイントはたくさんある。昼間の兄さんの説明によると、種族レベル5もあれば大丈夫らしい。
この森は第1弾と2弾のプレイヤーには既に用がない場所だし、ボクと同じ第3弾の人だと、まだ初日だし無理して来ないとあって人気がない。
それに夜の帳は既に降りている。仄かな月明かりが、木立の間から僅かに差し込むのみ。
隠れて色々試すのに都合がよかった。こそこそしてるようで気に食わないけどね。
魔法の実験を色々する予定だから、極力目立ちたくないし。
〔気配察知〕のスキルを意識しながら、精霊眼も意図的に使っていく。
夜の山歩きもそれなりに経験があるから、これくらいの明かりが差し込んでいれば大丈夫かな。
それでも何が起こるかはわからない。安全の為に、そして楽をする為に〔夜目〕のスキルを新たに取った。
採取をこなし、歩いたところを自動マッピングしていく。
〔気配察知〕のスキルが警戒範囲に入った存在を乱雑に伝えてきてくる為、最初は混乱することもあった。
でも回数を重ねるごとにそこは段々慣れてきて、今では手際よく処理していけるようになった。
昼間の戦闘で教えてもらった事だけど、スキルとして存在する各武器術。
これらは『アーツ』と呼ばれる、いわゆる必殺技スキルを覚えるためのスキルだと聞いた。特定の行動を繰り返し行っていると、『開眼』というかたちで『アーツ』を覚えるらしい。
それとスキルレベルが上がれば、その武器種での攻撃力補正が上昇していく仕様なんだって。
あと〔剣術〕スキルを取得したからと言って、急に剣の達人になったりすることはない。
アシストは一応あるんだけど、レントは「邪魔」の一言で、コードを外していた。アシストがあると出来ない動きがあり、行動が制限されるらしい。
普段からアシスト無しでその武器の扱いを練習するのが、強くなる上で一番近道みたいだね。
そしてこの『アーツ』なんだけど、これにも賛否両論がある。
アーツを使用すればその技を繰り出すんだけど、決まった技の型を再現しようとして無理矢理身体が動かされて気持ち悪いと、レントは話していた。
しかも一度発動してしまえば、途中で停止出来ないおまけ付き。
もし連続攻撃系アーツを避けられたら、敵の横で間抜けなダンスを踊り続ける事になるんだよ?
使う意味あるのだろうか?
結論から言うと、一応意味はある。
練習用としてね。
あれだ、あれ。
型を覚えた後に自身の腕だけで再現する。それならば止めるのも簡単だし、変化も自在に付けられるんじゃないかな?
そんなことをレントに言ってみたら、微妙な顔をされた。
確かに開始前は「よっぽど有効なアーツを覚えない限り、使うことはないだろうな」と言い切ったレントは、うちの祖父から御陵流古武術を習っていたこともあって、アーツの使用を全否定していた。
けどボクの発言を切っ掛けに意思変更したみたいだ。
暇な時に練習して、システムを使わず、独力でその型を出せるように練習するそうだ。
ボクも祖父から無理矢理教え込まれた護身術程度しか使えないけど、機会があれば練習しよっと。
森の中のセーフティエリアを目指して歩いていると、〔気配察知〕に一匹の獣が引っ掛かった。その獣の事を『フォレストウルフ』という名の敵性存在だと、精霊眼が教えてくる。
どうやらこちらの存在に気付いていないようなので、昼間に思い付いた事を実験してみることに。
足元に転がっていた小さな石を拾う。それを手のひらにのせ、脳裏にイメージする。
──高速回転して音速で飛ぶ拳銃の弾
お願いっ!
心の中で呼び叫んだ願いを、風の精霊は素早く見事に再現してみせた。
軽く放り投げた小さな礫は、高速回転しながら轟音をたて、ウルフの頭を熟したトマトが潰れたかのように吹っ飛ばす。
「ふぎゃぁっ!?」
音がっ、耳がぁっ!?
何でこんな爆音が?
あ、音速の壁か。耳が、頭がものすごく痛い。
音につられて敵が集まる前にと、ふらつきながらも慌ててその場を離脱する。
うう、爆音を間近で聴いたせいか、平衡感覚までおかしくなってる。
予想外な事が発生したものの、動画のようにイメージを描いて伝える事で、時間短縮と威力の両立が出来るね。
MPの消費量は少し多い。
これはちょっと力を込め過ぎたからかな?
うん、これなら練習すれば実戦でも問題ないかな。後は身体の動作も取り込んでイメージを補完していけば、もっと楽に発動出来そう。
散発的に襲い掛かってくる狼を、手にした『初心者の杖』を棍や木刀のように振り回して牽制し、魔法で倒していく。
初心者の杖は耐久値が設定されていないので、多少乱暴に扱っても壊れる心配がないのが利点である。
〔杖術〕と〔体術〕のスキルは、レベルアップした際にすぐ取っておいた。
〔杖術〕は基本武器術の中で珍しくINT補佐やMND補佐があるらしく、魔法職はとっておいた方がいいと聞いた。
それはステータスに反映されないマスクデータで、数値としては見えないけど、高レベルになれば実感出来る差があるらしい。
〔体術〕は身のこなしに影響のあるスキルで、身体バランスの補佐をしているそうだ。ただし〔武闘術〕スキルとは違い、肉体攻撃に補正はかからない。
戦闘の立ち回りだけでなく普段の行動にも有効らしいので、これも取得しておく。
ちなみに『杖術』も『体術』も初期スキルのせいか、必要SPが3Pとかなり少なかった。『夜目』は1P消費。
BPはまだ振っていない。後で落ち着いてから振る予定。
名前:セイ
種族:古代森精種 種族レベル:5
職業:精霊魔法士 職業レベル:5
HP:170/150〔+20〕
MP:245/220〔+15〕(+10)
STR:10〔+1〕
VIT:10〔+2〕
AGI:13
INT:20〔+2〕(+2)
MND:19〔+1〕
DEX:13
BP:16
SP:9
所持スキル
種族系:〔精霊眼:森羅万象〕
職業系:〔精霊魔法Lv5〕
攻撃系:〔杖術Lv5〕new〔体術Lv3〕new
補佐系:〔INTアップLv3〕〔気配察知Lv7〕〔夜目Lv3〕new
生産系:〔採取Lv4〕〔調合Lv1〕〔料理Lv1〕
魔法系スキルよりも、なぜか物理系スキルの方が上がりがいい事について。
杖を振り回しすぎたかな……気のせいだ、うん。
SPが余ってはいるけど、むやみやたらにスキルを取ると後でSPが足りなくなって困るかもしれないから、必要なスキルが出てくるまで取らないでおこうと思う。
ただ、スキルのレベル上げが滞るという弊害もある。どちらがいいのか、よく考えたほうがいいかもしれない。
後、いつの間にか『??????』というのが称号欄にあった。
説明文を開くも「解放条件が未達成です。効果は不明」とだけしか書いてない。
知らない間に称号獲得してるとか、ナニコレ怖いんですが。
まあすぐにどうにかなる話じゃないみたいだし、いずれ兄さんに聞くとして、そろそろ調合でポーション作りを始めようっと。
今いる場所はセーフティエリアの一つで、森の中を流れている小川の畔。
その近くにあった切り株を机がわりにして、調合キットの一つ、薬研で薬草を磨り潰していた。
光源は満月の月明かりと、お願いした光の精霊。
ランプの明かりのように照らして欲しいとイメージを伝えたら、きっちりと仕事をしてくれた。
この調子で精霊魔法をモノにしていきたいね。
生産スキルはオート作成とマニュアル作成の二通りがあり、レシピやマニュアルで一度作ったものは登録され、次からはMPを使って自動作成出来るシステムを採用している。
もちろんマニュアル作成の方が品質が良くなりやすく、オリジナルな物を作れるそうだ。
ボクは生産職の薬師ではないので、生産する際の補正が発生しない。自分達で使う分が作れたらいいだけなので、その辺は気にしてない。
補給ができないから死に戻りしました、という情けない事態を避けたいだけなのですよ。
不慣れながら、なんとか完成したのがこれ。
名称:HPポーション(10等級)
状態:不良
種別:アイテム
効果:HPを回復させる下級ポーションで回復量は最大HPの9%
クールタイム5分
初心者HPポーションは50%回復するのだが、種族レベル10までしか使えない。直にこちらが必要になるだろう。
薬学書によると10等級が最低等級で、最高の1等級だとHP100%全快するそうだ。現在でも1等級ポーションは誰も作れないらしいけどね。
10等級のポーション品質『並』で回復量が10%、クールタイム3分だからちょっと下がってるなぁ。
うん、ちょっと練習していこう。
手持ちの薬草をどんどんポーションに変えていく。
磨り潰した薬草に小川の水を混ぜて煮沸するだけなんだけど、タイミングが変わるだけで品質が上下するし、先に煮沸した水を使った場合でも品質が変わる。
色々考えながら作っていたら、気付けば結構時間が経ってしまっていた。
……おそるべし生産。ハマる人はこうしてハマっていくんだなぁ。
途中お腹の虫が鳴いたのを見てステータスを見てみれば、満腹度がかなり減っていた。
この真っ暗な中、料理を作るのはものすごく面倒に思ってしまい、インベントリーに入れて置いた串焼きを齧る事にした。
メニューを開いて現在の時間を確認する。ゲーム内時刻二十二時、リアル時刻十七時半になっていた。
「兄さんはまだログイン中かな」
フレンドリストを見てログイン中なのを確認する。
……やっぱりまだいるね。
ボクの両親は「仕事で家に帰れない」と今朝言っていたので、夕飯作りを後回しに出来そう。
このまま続行だね。
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《ASの知識の何故?何?TIPS》
●スキル取得における計算式
例題)
種族レベル1→5でレベルUP4回分、2px4=8
職業レベル1→5でレベルUP4回分、2px4=8
この場合、計16p分を所持していることになる。
スキルのレベルアップはポイントを消費しない。スキルを使用または所定の行動を取ることによってのみ、スキルレベルが上がる仕様である。
特定の設置型試練クエストをクリアした時のみ取得できるスキルも存在する。
またBPの取得条件もSPと同一であり、1ポイントで所定のステータス値を1ポイント上昇させることが出来る。
HPやMPにBPを割り振ることはできない。