猫以下の人
昨日のご飯
野菜炒め!
肉、肉は何処だあああああああ!
叫びながら入ってきたお兄ちゃんに、猫バルトを投げつける。
顔面ヒット!
「ぶっ!?」
「うニャ~!!」
そのまま猫バルトがわざと、爪を立ててお兄ちゃんの顔から擦れ落ちた。
お兄ちゃんの顔に見事な爪痕が残った。
「いっっってぇぇぇぇぇ!!」
顔を両手で押さえその場に踞る。
「静かにして、お兄ちゃん。」
「此処は図書館ですよ?他の方の迷惑になるでしょう、トヴィア?」
「いきなり投げ付けるとか、酷いですヨ?主!ニャ~。」
満更でもない様子で猫バルトが飛んで戻ってくる。
「ごめん。でも、また投げるかも?」
「別に良いですけどね。爪、研いどきますですヨ!ニャ~。」
ヨロヨロとお兄ちゃんが立ち上がる。
「その猫、捨てろよ~。チナツ~。」
が、後ろから現れたルークさんから、拳骨が落ちた。
「いだっ!!」
また、頭を押さえてお兄ちゃんは踞った。
「静かにしろと何度言えば分かるんだ、お前は!」
此処に来る前から、お兄ちゃんは五月蝿かったらしい。
自業自得?
「……皆が酷い……。」
また、ヨロヨロと立ち上がる。
「ルークさん、お久し振りです。いつも兄が御世話掛けてすいません。」
「やぁ、チナツちゃん 久し振り。普段はもう少しマシ何だけどね。いつも、世話してるよ。でも、チナツちゃんのせいではないから、気にしないで。」
見れば、ルークさんも変装していた。
髪を全て後ろに撫で付けて、眼鏡を掛け アル同様のシンプルな服装だ。
変装してないのはお兄ちゃんだけ。
そんなお兄ちゃんは放っておいて、アルに視線を戻した。
「……探して迄会いに来たのは、やっぱりキャンディの事?」
「会いたいから探した。では駄目なのかな?」
アルが少し寂しそうに微笑んだ。
「……駄目、何じゃないかな?アルもルークさんも忙しい筈だもの。」
「寂しい言葉だけれどその通り。あ~、息抜きを兼ねてるのは本当の事だ。本来なら、チナツを賓客として持て成さないといけないんだが……。」
賓客と言う言葉に、顔をしかめてしまう。
王様に謁見するわけだから、そう言う扱いも仕方無いとは思うけど嫌な物は嫌だ。
慣れるとも思えないし……。
「…………そう言う顔をされるのは分かっていたから、謁見も夜会も無しだ。安心して良い。」
アルが苦笑して言った。
ルークさんも笑っている。
「チナツちゃんのドレス姿が見れないのは残念だけどね~。」
「同感だ。……夜会は無いが、ドレス姿で夕食を共にするのは有りじゃないか?」
「そうだ!チナツ、今から本家に行ってドレスに着替えよう!」
「主のドレス姿!私も見たいですヨ!」
「……ZZZ」
ティオ以外の全員でドレス姿を推してくる。
因みにティオはいつの間にか、私の腕の中で寝てしまった。
ドレスは綺麗だし、憧れが無いわけではないけれど……。
動きにくいし、裾踏んだら~とか汚したら~とか、めっちゃ気ぃ使う。
お腹も締め付けられて苦しいし、ぶっちゃけ、めんどくさい!!
「慣れない姿は疲れるので、遠慮します。」
「「残念。」」
アルとルークさんが同時に言う。
が、顔が笑っているので私が断るの分かってて言っただけみたい。
「じゃあ、せめて髪くらい整えても良いよな?」
言って、お兄ちゃんが私の後ろに立った。
まぁ、髪型くらいなら
「……髪止めるピンとか有るか?」
「……有るよ?これで良い?」
「ああ、良いぞ。……どけ、糞猫。」
猫バルトをお兄ちゃんが睨み付けて言った。
「…………。」
無言で頭の上から、猫バルトが飛んで長机に移動するが、お兄ちゃんの顔面を尻尾で叩くのを忘れない。
「てっ!可愛くねぇ~!」
「ハッ!貴様に可愛い等、思われたくも無いですヨ。主だけが可愛がってくれれば満足ですヨ!ニャ~。」
後半は言いながら擦り寄ってきたので、頭を撫でてあげた。
「ちっ!」
仲悪いなぁ。
お兄ちゃんは手際良く私の髪を2つに分け、編み込んでいった。
…………ミシェルより速い?
編んだ髪を1つに纏め、最後に何かをキュッと縛って完成の様だ。
触って確認する。
綺麗に編み込まれ、リボンが結ばれてる?
「上手すぎるよ、お兄ちゃん。後、リボンはどうして持ってるの?」
「カルーナに居た時の幼馴染に叩き込まれた。リボンはチナツに似合いそうだと思って、さっき買っといた奴。早速、出番がきて良かった。うん、似合う。」
腕を組み満足気に頷く。
「ムム、不本意ながら綺麗ですヨ。主。ニャ~。」
「ありがと、バルト。お兄ちゃんも有り難う!」
へへッとお兄ちゃんが笑う。
「じゃあチナツ、本部で話しをしたいんだが時間は良いかい?」
「良いですよ。特にやりたい事とか無かったですから。」
「それは良かった。断られてたら、セトの説教だからな。」
「街に出る条件だからね。セトもチナツちゃんに会いたがってたよ。て事で夕飯は本部で……トヴィア 、ひとっ走りゼナス殿に伝えて来い。」
「へっ!?俺!そんなの、この糞猫にやらせれば良いでしょう。パタパタ飛んでけば直ぐです!」
猫バルトはパタパタと飛んで見せ、私の頭に戻る。
「弱い奴が使いっぱしりになるのが、世の常ですヨ。ニャ~。」
「なっ!?1番弱いって言ったらティオだろ!」
「…………ティオの方が強いよ、お兄ちゃん?」
「「「えっ!?」」」
お兄ちゃん、アル、ルークさんも驚いてる。
「んニャ~。呼んだかニャ?」
起きたティオが欠伸をしながら伸びる。
「先輩が強いって話しですヨ!ニャ~。」
「ニャ~。うちは強いニャ!ご主人とバルトのおかげニャ~!」
「……軽い尻尾の一撃で、ダンジョンの階段が砕けてたから、」
「「「なっ!?」」」
両前足で顔を覆って、ティオが身体をくねらせる。
「恥ずかしいニャ!ちょっと、テンション上がってただけニャ!今はそんな事しないニャ~!」
クネクネ、クネクネ……。
ちょっと、くすぐったい。
お兄ちゃんが膝から崩れ落ちた。
「……猫以下……。俺、猫以下……。」
ルークさんがお兄ちゃんの前にしゃがみ、肩をポンと叩いた。
同情の目を向ける。
「伝言、宜しく!」
顔を上げたお兄ちゃんの目に、涙が……。
「猫なんか、大っ、嫌い、だああああああああ!!」
お兄ちゃんは叫びながら、走り去って行った。
図書館では静かにって言ったのに!!




