我が家
アルヒレスタの自分の部屋に転移した。
ティオに頼み、持ち出したベッドやちゃぶ台を元の場所に出して貰う。
其れから、部屋全体を眺めると 帰って来たと言う思いが沸き上がってきた。
……もう、此処が私の家何だと思う。
マントを脱ぎティオに渡す。
「此処が主の部屋ですか?ニャ~。」
キョロキョロと猫バルトが部屋を見回し動き回る。
「狭いですヨ?ニャ~。」
…………まぁ、バルトは魔界でも伯爵やってるらしいし、契約後に居た部屋はヴァンの城だったから、そりゃ狭く感じるだろう。
でも、狭いと言われてむかついても仕方無いよね?
私は猫バルトの頭を鷲掴みにして持ち上げた。
「此れが普通!一般家庭の普通!此れで充分なの!」
「駄目とは言ってませんヨ!ニャ~!」
人間、狭い方が落ち着くの!
寝る時だって壁寄りだし!
何てやってたら、走ってくる足音がした。
乱暴に部屋のドアが開かれる。
「ああ~~~~!やっぱりチナツ!帰って来たんなら直ぐに居間の方に顔を出してくれよ!いきなり、部屋から物音がしたら不審に思うだろう?」
言いながら、ズカズカと部屋の中に入ってきて抱き締められた。
「今、帰って来たばっかりだよ?お兄ちゃん。」
そう、部屋に入って来たのはトヴィアお兄ちゃんだった。
この家でドタバタするのはお兄ちゃんしかいないけど。
ドタバタと言うか、乱暴と言うか、雑?
「……お兄ちゃん、仕事は?」
「今日は休み!」
「…………休みじゃなくて夜勤でしょ?」
お兄ちゃんが開けっ放しにしたドアから、お母さんが顔を出して言った。
「お帰り、チナツ。早かったのね~。」
「ただいま、お母さん!うん、無事に攻略してきたよ!」
お母さんにティオが駆け寄り、抱き上げられる。
「ティオちゃんもお帰りなさい。」
「ただいまなのニャ~!」
ゴロゴロ、ゴロゴロ。
ティオはお母さん大好きだね。
「……羨ましいですヨ!先輩!ニャ~。」
「猫が増えてるぞ?チナツ。」
パタパタと猫バルトがお母さんの側へ飛んでいった。
「あらあら、まだ2匹目だから良いけど、これ以上は拾って来ちゃ駄目よ?チナツ。」
……いや、拾った訳じゃ、
其れに、喋ってるのに 羽生やして飛んでるのにスルー?
「……私と契約した悪魔のバルトだよ。猫は仮の姿なだけだから胸に抱っこは駄目だよ?お母さん。」
私の言葉に猫バルトが床に……落ちた。
「酷いですヨ。主~。もふもふされたいですヨ。お胸でもふもふされたいですヨ~~~!ニャ~!」
「……ティオと違って、こぅ、下心?が、透けて見えるんだよね。」
「心外ですヨ!私は猫として」
「猫じゃ無いでしょ?ちゃんと戻って挨拶して。」
「…………ニャ~。」
仕方無さそうに猫から人型に戻る。
黙ってればイケメンなのに……残念な悪魔だ。
「改めて、悪魔伯爵のバルトと申しますヨ。お嬢さんには、契約と言う形でダンジョンから解放して頂きましたですヨ。以後、宜しくお願い致しますですヨ。」
視線を外し、ムスッとして言う。
「うふふ、本当に悪魔なのね。母のユウナ・クロイツです。宜しくね。」
「……トヴィア・クロイツだ。猫で居ろ。ずっと猫で居ろ。一生猫で居る事を望む!」
お兄ちゃんがバルトを睨みながら言った。
「チナツに変な事をしたら許さないからな!」
「ハッ、変な事とはどんな事でしょうね?1から全部言って貰わないと分かりかねます。大体、血の繋がらない妹にいきなり抱き付くのは如何な物かと思いますがね?自分の事を棚上げにして何を偉そうに言うのか、貴方に命令される筋合いは有りませんよ。」
「うぐっ!」
おお、バルトの語尾が普通……。
会っていきなり睨まれれば、機嫌も悪くなるよね?
仕方無い。
お兄ちゃんが悪い。
……普段の語尾はわざと?
つけない方が格好いいのに……言わないけど!
「お父さんは、厨房?」
「ええ、そうよ。あ、チナツが居ない間に2人雇ったのよ。今の時間帯なら手も空いてるし、紹介するわ。」
全員で居間へと移動した。
バルトは言わなくても猫の姿に変わっている。
椅子に座って待っていると、お母さんが3人を連れてやって来た。
1人は当然だけど、お父さんだ。
私は立ち上がり、お父さんに抱き付いた。
「ただいま、お父さん!」
「ん、無事で何より。」
大きな手で頭を撫でられた。
お父さんが撫で終わるのを待ってから、後ろに立っている2人を見た。
「…………兄妹?」
そう、2人ともオレンジの髪と茶色の瞳。
整ったたまご型の顔で、そっくりだった。歳も同じくらいで双子かな?とも思う。
男性の方が少し背が高い。
何となく緊張してる?
「ふ、双子の兄のモリスです。厨房の方を手伝いながら、ご主人の料理を学ばせて貰っています。」
「妹のモモです。兄にくっついて雇って貰いました!」
「「宜しくお願いします!」」
おお、ハモってきた。
「チナツ・クロイツです。一応、冒険者?やってます。歳も近そうだし宜しくね。で、茶色の虎猫がティオで黒猫がバルトだよ。」
お母さんに抱かれたまま、ティオが右前足を上げる。
「ティオニャ。」
猫バルトはパタパタと私の頭に着地して、
「バルトですヨ。ニャ~。」
2人は目を見開き驚いている。
「「凄い……!猫が喋ってる!飛んでる!」」
また、ハモってきた。
流石双子。
て言うか、驚くのが普通だよね。
2人の反応にほっこりしてしまった。
「まぁ、普通の猫では無いけど宜しくね。」
「うふふ、家の看板猫よ?殆ど居ないけど、「猫の憩い亭」の猫はティオちゃんの事だからね。」
双子は顔を見合わせると、チラチラと私を見てから 兄のモリスが恥ずかしそうに言った。
「猫が居る事は知ってました。その…………「双黒の天使を見守る会」会員ナンバー251番です!握手して貰っても良いですか!!」
驚きのカミングアウト~!?
何で入るかな!!
「…………えっと、どうぞ?」
私はモリスさんに右手を差し出した。
凄い勢いで、両手で掴まれブンブンと上下に振られた。
「有り難うございます!もう、思い残す事はありません!」
両手を握り締めガッツポーズ!
……成仏する気か!?
思いは残して!って思いだけ残ったら幽霊か!
普通の人だと思ったのに、ドン引きしてるよ!
「モテモテですヨ?主、羨ましいですヨ!ニャ~。」
猫バルトが肉球で私のおでこをテシテシ叩く。
……気持ちいいだけですよ?
「チナツ!暫くは此処で活動出来るんだろ?ダンジョン攻略に行ってたんだから、ゆっくりすればいい。」
お兄ちゃんが言い、私はお父さんの方を見て言った。
「明日1日は部屋でのんびりするつもり。明後日にミシェルが来るから、クロイツ家に行こうかと思ってる。もしかしたら、登城が先になるかも知れないけど。」
「……登城!?何で、何かしたのか、チナツ!」
お兄ちゃん、ちょっと煩い。
「別に、悪い事はしてないし。夜勤なんでしょ?その時、アルから聞くかもね?」
「げっ!」
……げっ!て、
「後で話しは聞くとして、トヴィア?そろそろ行かなきゃでしょ?遅れるわよ?」
「え!あ、や、行くけど……、」
「ん、遅刻、駄目だ。」
「どうせ、いつかお城で会うニャ。」
「煩い男はさっさと行け。ですヨ?」
「あ、仕込みに戻らないといけません。「行ってらっしゃい、トヴィアさん。」」
「行ってらっしゃい、お兄ちゃん。」
全員で「行ってらっしゃい」だ。
お兄ちゃんは肩を落とし、とぼとぼと出掛けて行った。




