初めての友達だから
私達は、中庭からヴァンの執務室に移動した。
何故かヴァンの膝の上に乗せられてる私。
お腹にヴァンの左腕が回されてて、逃げられない。
救いになるのか、対面のソファーに座ったキースメリアさんも、ミシェルを膝の上に乗せている。
さっきの「消えてしまう」が、ヴァンにこの行動を取らせているのだろうとは思う。
「消えないよ」って言ったし、実際、消えてないんだから普通に座りたかった。
心配させてるみたいなのは分かるから、大人しくしてるけど。
ティオと猫バルトは、1人用のソファーに仲良く丸くなってる。
「写る君」で撮って欲しい。
執務室に来たのは、王様達の意見を聞く為。
キースメリアさんが、1枚の紙を差し出してきたので受け取る。
紙には国の名前が、巡る順番で書かれていた。
「アルヒレスタ」・「カルーナ」・「オブゼスタ」・「エーテリア」・「ウォル・ド・ネシタ」・「ランドルク」・「マルジェシタ」の順だ。
何処の国も「リジェネキャンディ」は欲しいらしい。
特に「ウォル・ド・ネシタ」は、特攻する獣人が多くて困っていたみたい。
人より治癒力が高いのも特攻する原因の1つ。
「ランドルク」は、商売として欲しい。
「マルジェシタ」は、研究材料として欲しい。
この3国が多目に買いたいと言ってきたんだって!
「アルヒレスタ」と「カルーナ」は、国に予備として少し多目に
「オブゼスタ」と「エーテリア」は、回復出来る人が他国よりは多く居るのでそんなでも無いらしい。
教会は「亜人」(教会だけが呼んでいる。)には興味無いんだと!
余談だけど、「マルジェシタ」の女王様が巡る順番にごねたとか?最終的に最後の方が引き留めやすいって、納得したらしい。
いや、用が済めば帰るけど……。
「チナツは、SSになったからギルドカードを提示すれば 大抵の場所は素通り出来る。一応、ギルドの在る場所に行ったらギルドに顔を出してくれ。冒険者の決まり事だ。」
ヴァンの説明に私はコクコクと頷いた。
ギルドが冒険者を把握する為の決まりなんだろうね。
今、この人此処に居ますよ~的な。
SSとかになれば、国にも連絡が行くのかも知れない。
今回は私が何処に居るのか知ってもらえるのは良い。
もうすぐ着きます。と言ってるようなものだしね。
「……転移しやすいように、1度連れて行こうか?各国の王都に」
其れをやってもらうと凄く楽だけど……。
「適当な所に転移するよ!それで、ちょっとでも旅気分味わいたいかな?」
「冒険者として?」
「冒険者として!冒険してない冒険者は、果たして冒険者と呼べるのか?答えは否!」
ズビシッ!と両手を突き上げて言った。
上げた両手を胸まで下ろし、握る。
「私にとって、旅は立派な冒険なの!」
この世界では、旅と言ってもチケット買ってびゅーんとはいかない!
基本歩き。
魔物も出るし、山賊とかだって居る!
旅行ガイドみたいな物も無い。
見る物全てが、新鮮に違いない!
「この世界に来て冒険者になった目的が、世界を見て回るだったもの。楽しみたい!」
猫バルトが言う。
「私もこの世界は知らないので楽しみですヨ!」
ティオも言う。
「うちもニャ~。知らない事いっぱいニャ~!」
ミシェルが挑む様に言う。
「当然、私もついていきますわ。お嬢様!」
ミシェルの言葉に私は目をパチクリとした。
「え、ミシェルはお留守番でしょ?」
「え!?」
「え?」
「私はお嬢様の護衛ですよ!ついて行くに決まってるじゃありませんか!例え、海の中だろうと教会本部だろうと行きますわよ!」
……教会本部って、頼まれても行かないって!!
キースメリアさんがミシェルを抱く力を強めて言った。
「ミシェル……巫女様はもう、SSランクの冒険者です。然も、貴女並に戦える悪魔のバルト殿もティオ殿も居る。護衛と言うには充分な戦力でしょう。此処で巫女様の帰りを待ちましょう。」
「……護衛だけがメイドの仕事ではありません!」
「分かっているでしょう?巫女様は箱入りの貴族令嬢ではありません。自分の事は自分で出来ます。寧ろ、自分でやりたい方でしょう。ミシェルが必要になるのは巫女様が令嬢として振る舞う時です。」
みるみる内に、ミシェルの目に涙が溜まる。
私はヴァンの腕を叩いて、離してくれる様に頼んだ。
膝から下りて、ミシェルの側へ行く。
ミシェルの前で、膝立ちになり視線を会わせた。
「お嬢様にはもう、私は必要有りませんか?」
ん~、どうやって説得しよう?
今にも涙が溢れそうだ。
「私がミシェルを要らなく思う日なんて、一生来ないから!どうしたの?以前に、拒否られたら離れて見守ります!とか言ってたじゃない。」
私から視線を外し、ミシェルは下を向いてしまった。
「……分かってます。キースの言った通りなのは……でも、お嬢様と過ごす」
「はい。ストップ!!キースメリアさん、ミシェルを離して貰えますか?」
「え、あ、はい。」
キースメリアさんから自由になったミシェルが立ち上がる。
すかさず私はミシェルに抱き付いた。
「ちょっと……2人で話そうか?」
ミシェルの耳元で囁く様に言うと、其のまま転移した。
私がミシェルを連れて来たのは、水遊びをしたキースメリアさんの所有地。
私とミシェルの周りに、音が漏れない様に結界を張った。
「お嬢様…………何を?」
「うん、ヴァン達にはまだ知られたくないから……さっき、私と過ごす時間が少ないから、とか言おうとしてなかった?」
困惑しながらもミシェルは頷いた。
「もう、半年も有りませんわ。もしかしたら速まる可能性も有りますでしょう?少しでも長く、お嬢様の側に居たいのです。」
「…………帰らないから、」
私の言葉にミシェルが瞬きを繰り返した。
「役目を終えたら帰るって言ってあるけど、帰らないから、私。」
真っ直ぐにミシェルを見て言い切った。
「何故、その様な嘘を……?」
「私の役目はね、種を無事に植えたら終わり では無いからだよ?考えてみてよ。植えたばかりの種に何が出来る?謂わば、世界樹の赤ちゃんだよ?」
呆然とするミシェルに其のまま言葉を続ける。
「世界中の瘴気を押さえる為に、世界樹の……核?みたいな感じで、世界樹の中で眠りに就かなきゃいけないの。そうする事で、生まれたての世界樹を一気に成長させられる。でも、その成長は仮初めだから、本当に成長するまで私は出られないの。」
「……どれくらい…眠られる、のですか?」
ふっ、と私はミシェルに微笑んで見せた。
「長くて300年位?」
ミシェルが目を見開き、驚く。
「そん、そんなに!何故、お嬢様がそんな目に合わねばならないのですか!まるで生け贄ではないですか!其れなら世界樹が成長するまで地道に魔物を倒し続ければ!」
「駄目だよ。世界樹が滅んでいない今ですら、魔物は強く成りつつ在るのよ?持たないわ。少なくとも、人族や獣人族はね。エルフやドワーフも厳しいかも知れない。」
ミシェルは、へなへなとその場に崩折れた。
「…………嬉しかったんだ。ミシェルが吸血鬼だって知った時」
私もミシェルの側にしゃがみ込んで言った。
ミシェルが顔を上げる。
「吸血鬼なら、私が起きた時も生きてるでしょ?」
「……あっ」
「今回の旅は予行練習だとでも思って?300年に比べれば直ぐだし。旅するのは夢みたいな物だったから…………あ、300年後もミシェルが私のメイドで居てくれるの前提になってる?ゴメン、嫌なら嫌って言ってね?」
ミシェルはブンブンと大きく頭を振った。
「い、幾らでもお待ち致します!」
「ふふ、有り難うミシェル。ミシェルはこの世界で初めて出来た友達だよ。その友達が待っててくれる。覚えててくれる。其れだけで私も耐えられるよ。目覚めるのが待ち遠しくなるよ。……目覚めたら、子供の1人や2人出来てるかもね?」
私はニヤリと笑ってミシェルを見た。
ミシェルは一気に顔を赤く染めた。
「あ~………うう、…………で、出来てる、でしょうね……。」
「あはは、ミシェル真っ赤っ赤!可愛い!」
「からかわないで下さいな!」
「あはは、あっは!何人産んでるのか今から楽しみで仕方無いよ!ミシェル!」




