目立ちたくない!
遅くなり申した!
スンマセンm(。≧Д≦。)m
目立ちたくないので、魔王城の中庭に転移した。
初日に泊まったけど、夕方だったから城の中って殆んど見ていない。
勿論、この中庭も初めて見る。
キョロキョロと辺りを見渡していると、ヴァンが話し掛けてきた。
「興味が有るなら少し散策でもするか?ギルドなら、1日中開いてるから何時でも大丈夫だしな。」
「ん~、いいよ。早く用事は済ませときたいからギルドに行こう。」
出口は何処かな、とキョロキョロするとキースメリアさんが提案を口にした。
「バルト殿は外が久し振りなのでしょう?少し自由行動にしたらいかがですか。」
「は?あ、あああ、そうですね!ちょっと自由に空でも飛び回りたいですヨ!たぶん、いや、絶対!先輩も一緒に空の散歩に行きましょうですヨ!ニャ!」
バルト猫がキースメリアさんから、視線を反らしながらティオに言った。
「ニャ~?うちは飛べニャいニャ?」
「私がもう少し大きくなりますから!背に乗って下さいヨ!ニャ!」
「ニャ~?分かったニャ~。」
宣言通り、倍の大きさになったバルト猫の上にティオが乗る。
「では、行ってきますですヨ。主……ニャ~。」
「……うん、気を付けて行ってらっしゃい。」
「……主も……いえ何でもないですヨ。ではではニャ!」
そう言うと、ティオを乗せて駆け出した。
まるで空中に階段でも在るかの様に空へ昇っていった。
ミシェルが私に近付こうとして、キースメリアさんに抱き止められた。
「ミシェルは私とお留守番です。」
「何故ですの!私にはお嬢様の護衛が!」
反論するミシェルに悲しそうな顔でキースメリアさんが答える。
「ミシェルも明日帰るのでしょう?巫女様と共に……。」
「……それは……。」
ミシェルが項垂れる。
「…………仕方無いね、まぁ、ギルドに顔を出すだけだし……ヴァンは仕事?」
ヴァンが口を開くより先にキースメリアさんが言った。
「仕事は明日からで問題ありません。なのでヴァン様は巫女様の護衛をお願いします!ついでに、夕食も外で済ませて来て下さい。」
「「…………。」」
あからさまだよね!
はぁ~、と溜め息をついてヴァンが手を差し出してきた。
「……行くか。」
「分かったよ。じゃあキースメリアさん、ミシェルを宜しく。」
「はい。巫女様もヴァン様を宜しくお願いします。」
ジト目でキースメリアさんを見てから、ヴァンの手を取った。
「出店通り」をヴァンと手を繋いで歩く。
ヴァンは堂々と歩いているけれど、すれ違う女性が振り返ったり、立ち止まったり……。
耳付きマントを深く被ってみるけど、視線が刺さる~。
ヴァンは見られる事に慣れてそうだけどね、私は慣れてない。
結局、目立ってるんじゃないの?
ギルドの前に転移した方がマシだったかも……。
「……悪かったな、」
急にヴァンが謝ってきた。
「何が?」
「キースの強引さ?あからさま過ぎたからな。少なくとも、ティオは一緒が良かったんじゃないのか?」
「……言われてみれば、ティオとこんなに離れるの初めてかも……バルトが付いてるから心配はしてないけどね。」
「俺と2人になるのは嫌じゃないのかって事だ。」
「……嫌そうに見えてる?」
「マントを深く被って、俯いてれば、な。距離も取りたそうに見える。」
…………。
「ヴァンが嫌なんじゃなくて、目立つのが嫌なの。ヴァンは……女性の目を惹き付けるから、さっきから視線が痛いよ。」
辺りを見渡しながら言う。
数人の女性がこそこそと囁き合ってたり、中には睨んでる人もいた。
もしかして、ヴァンが魔王だとバレてるんじゃないの?
「俺にはチナツの方がこそこそし過ぎだと思うがな?逆に、堂々としていた方がそう言うものだと納得するぞ。」
言うや、空いている手でマントのフードが払われてしまう。
其のまま、軽く握った拳でおでこをコツンとやられた。
「った!」
「もっと堂々としてろ。ーー勇者様。」
「うう~、ヴァンに言われると変な感じ!」
「ははっ!魔王と勇者の組み合わせなんだ。目立たない方が無理だ。開き直った方が楽だぞ。」
私はヴァンを恨みがましく見詰めた。
「ちょっと違う格好をしてれば、魔王とは気付かれ難いって言って無かったっけ?」
「其処まで気付いてる奴はいないと思うが……。勇者で巫女なのは変えようの無い事実だって事だ。」
「そうだけど~。」
「……抱えて走っても良いんだぞ?ギルドまで」
「堂々と行きましょう!歩いて行きましょう!ちゃっちゃと行きましょう!!」
お~。と空いてる腕を空へ伸ばして言った。
ギルドへ到着!
長いようで短い距離でした!
ぶっちゃけ5分位……。
ギルド内に入ると、中は冒険者でごった返していた。
騒がしい、と言うより慌ただしい?
ギルド職員がカウンターの向こう側で、忙しく動き回っていた。
「ギルドマスター」「被害者」「オークキング」「回復」「神官」等の単語が聞き取れた。
オークキングにやられた人がいて、回復が必要と言うところかな?
「……なんか、手続きどころじゃ無さそうだね。」
「ああ、ギルドマスターも不在の様だし帰るか?」
「教会のクソッタレがあああ!」
いきなり、後ろのドアが乱暴に開かれた。
声の大きさに、肩が跳ねた。
入って来たのは竜人と呼ばれる種族で、獣人よりもステータスが高く寿命も長めなので、見た目20歳位でも実年齢は分からない。爬虫類独特の瞳と肌の所々に鱗があり、竜の様な太くて鱗に覆われた尻尾が特徴的だった。
竜人がヴァンに気付いた。
「……な、何で陛下が此処にいいい!?」
叫ぶ竜人の額にヴァンがチョップをかます。
「声がでかい!」
もう、手後れですけどね。
ギルド内の視線が全部、ヴァンと私に向けられてしまった。
「陛下?って……魔王様?」
「やだ、本物?凄い格好良いよ~!」
「え、全然魔王っぽく無くない?お忍びって奴?」
ん、完全にバ~レ~て~る~。
他人の振りしたい。他人だけど!
ヴァンが頭をガシガシと掻いた後、竜人の胸ぐらを掴み引き寄せた。
「俺達の用件は後で良い。何があった?教会と揉めたのか?」
「……俺達?」
竜人がヴァンの手を解きながら、ヴァンの後ろにいた私に気付いた。
じ~~~~~~~。
「そ、」
「そ?」
「双黒の天使キタアアアアアアアア!!」
大音量で竜人が叫んだ。
余りの大きさに目と耳を塞ぐ。
再び、ヴァンのチョップが竜人の額を直撃した。
「だから、叫ぶ癖を治せ!」
「陛下は直ぐに手を出す癖を治して下さい!すっげぇ痛いんですからね!」
仲が良さそうですね。
ヴァンと竜人が話している間、ギルド内をぐるっと見回してみた。
「……ねぇヴァン?天使なんて何処にも居ないけど……?」
「「…………。」」
ヴァンが視線を反らしながら言った。
「「双黒の天使を見守る会」、此れがチナツのファンクラブの名前だ。」
竜人が腕を組み、うんうんと頷く。
「つまりは、お嬢ちゃんが双黒の天使。」
「…………はあぁぁぁぁぁぁぁ!?私の何処が!双黒しか合ってないじゃない!」
「まぁまぁ、落ち着いて」
「落ち着けるかああああ!」
「いや、ほんとに落ち着いて。確認したい事が有るんだよ。」
フ~~~!!と竜人を睨む。
竜人は私の両肩に手を置くと、真面目な顔で聞いてきた。
「お嬢ちゃんが双黒の天使なら、回復魔法が使えると思うんだけど どれくらい使える?」
「…………死ぬ寸前の人を助けた事は有りますよ?」
両肩に置かれた手に力が入る。
「お願いだ。地下の奴等を助けてくれ!!」
言うなり、竜人は私の両肩から手を離し土下座した。




