おっきくなっちゃった!
階段を上る。
最初に出てきたのはオーガの群れ。
私は鉄扇を構え、バルトが10cm程爪を伸ばした。
「……爪なの?」
「爪で充分でしょう?」
私が主でバルトが従者って契約なので、バルトの力は私の力に含まれるらしく、このダンジョンでも戦闘OKなんだと。
先頭にいたオーガが走ってきた。
避けながら鉄扇で首を跳ねた。
バルトも同じようにオーガの首を跳ねていた。
「どんな爪をしてるのよ!普通は爪、曲がってるよ!」
言いながら次のオーガを、斬る。
「こんな爪ですヨ!」
バルトは、左の爪を私に向けチャキチャキと鳴らして見せる。
反対の爪でオーガを斬り伏せながら。
あっという間にオーガの群れが全滅する。
2人がかりだと楽だね。
ティオがオーガの魔石を回収して回る。
「…………ティオ先輩は戦わないので?」
「ニャ~?」
「こんなに小さいのに、何言ってるの?」
「いやいや、主よ。猫にも立派な爪と牙が有るでしょう。主の魔力で大きくすれば立派な戦力じゃないですか?」
「ニャ!大きくなれるニャ~?」
「……考えた事無かったわ。出来るの、そんな事?」
「私が小さい猫になるのと同じですよ。猫になってる間は魔力を消費し続けていますヨ?ティオ先輩に魔力の元が無いのなら、其れに当たる物を持たせればいける筈ですヨ!」
「…………変わりになる物?」
ティオがキラキラとした目でバルトを見ている。
「もっと、お役立ちになれるニャ?なりたいニャ!」
「ふ~ん、魔石とか?」
「ああ、良いですね。ティオ先輩、さっきのオーガの魔石を5つ程出してもらえますか?」
ティオが私を見るので、頷いた。
小さい青い魔石が5つ、其れをバルトが両手で包むと1つの青い球体になった。
「此れに、主の魔力を込めて下さい。」
渡された魔力球?に魔力を流してみる。
貯まった魔力が光を放ち始める。
パキッ!
「あっ!」
「……込めすぎですヨ。もう1度ですヨ。」
パキッ!パキッ!パキッ!
何とか、5回目で出来た!
「くっ!難しいよ此れ!何となく分かってきたけど!」
20個の魔石がパァだ。
其処にゆっくり階段を上がって来ていたヴァン達が到着した。
「何をやっているんだ?此れは、」
床に砕け散った魔石の残骸を見ながら、ヴァンが聞いてきた。
「見てのお楽しみですヨ!」
私の掌の上にある光輝く魔力球を、ティオが待ちきれないとばかりに奪って飲み込んだ。
「あっ!」
「んニャ~!お腹が熱いニャ!」
「其れが魔力ですヨ!その、熱いのを意識しながら魔法を使うのです!さぁ、先輩!大きくなるのですヨ!!」
「大きくなるニャ~!!」
ティオの身体が光に包まれる。
みるみる内に、光が大きくなりそして消えると…………黒豹が居た。
いや、猫何だけど、ぱっと見どでかい黒猫なので……しなやかさと真っ黒な感じが黒豹?
「…………なんで黒?」
「驚きですヨ!先輩は闇に特化しているのですヨ!だから、黒と言うよりは闇色なんですヨ!」
「闇ニャ?…………嫌ニャ響きニャ~!でも、此れで戦えるのニャ~!!」
ティオが嬉しそうに尻尾をブンブン振りながら、私の足に頭を擦り寄せてきた。
おおっと、力入れてないと倒されそう。
「ティオ様、黒くて格好いいですわ!」
ミシェルが誉める。
「ニャ~。そうかニャ?うち、格好いいニャ~?」
「確かに黒と言うのは、かっこ良くて強そうです。然も、巫女様なら乗れそうですよね。」
キースメリアさんもティオを誉めまくる。
「うん、黒は格好いいよな。」
ヴァンが腕を組んで頷いている。
黒ばっかり着てるものね?
ティオは誉められまくって恥ずかしいのか、器用に前肢で目元を隠すといやいやと頭を振った。
尻尾は高速で揺れまくっている。
尻尾の威力で階段が削れていっているのだが、見なかった事にしよう。
「ティオ先輩、大きくなるのにどれ程魔力を使ったか分かりますか?」
「んニャ?」
ティオが口を開けると、舌の上に飲み込んだ筈の魔力球が乗っていた。
輝きが少し落ちていた。
その状態で、魔力球に触れて魔力を流してみる。
元の輝きを取り戻す。
「うん、4分の1位かな?」
「主の魔力は大丈夫ですか?」
「此れくらいなら全然問題ないよ?強化魔法位しか使わないしね。」
キースメリアさんが不思議そうに聞いてきた。
「疑問だったのですが、巫女様はどちらかと言えば魔法特化型ですよね?何故、接近戦中心なのですか?」
「あ、私も疑問ですヨ?此れだけ魔力を与えても余裕なのに、前衛は私と先輩で充分ですヨ?後方からバンバン魔法を撃たれても大丈夫ですヨ!」
「うっ、ま、魔法特化型だから、だよ。うん、」
ミシェルが痛まし気に私を見た。
「アレからですわよね、お嬢様。アレは私にとっても悔やまれて仕方ありません。御守りできず、申し訳ありませんでした。」
ミシェルの言葉に、男3人が目を見張った。
「はは、もう、無事だったし終わった事だよ?ミシェルが悪かった訳じゃないんだから気にしちゃ駄目だよ。」
「…………はい、」
「……じゃあ、気を取り直して進もう!!」
階段を歩き出そうとする私の肩を、ヴァンが掴む。
「気になるだろうが!何があったんだ?話せ!」
ですよね~。
私はティオの側に座ると、ティオの頭を撫でながらアンディス商会会長宅での出来事を話した。
「…………だからね、魔法は練習しなくても其れなりに使えちゃうから、近接中心に鍛えてたの。まぁ、今では身体が勝手に突っ込んじゃうんだけどね!あはは!」
シ~~~~ン
静まり返った空気が重いです!
ヴァンの指がそっと首に触れる。
「……生身では、辛かっただろう?」
「…………い、今思うと、恥ずかしい位叫んじゃたよ!」
ほんとに恥ずかしい~と言いながら、ティオの首元に顔を埋めた。
切なそうな顔で見詰めるな!
赤くなりそうな顔を隠し、元に戻すためティオにぐりぐりと顔を押し付けた。
「しかし、そんなに小さな転移魔方陣が使い捨てとは言え実在するとは、信じ難いですね。」
「実際、お嬢様を拐われてしまいました。知っていたらゲルティ隊長がずっとお嬢様を抱えていた筈ですわ。」
ヴァンの眉間に皺が寄る。
「抱えてって言っても、腕に乗ってる感じですわよ?此れくらいの事でいちいち目くじら立てないで下さいな!嫉妬深い男は嫌われますよ!」
「ちっ!自分が1番驚いてるんだから、わざわざ言うな!顔をしかめる位ほっとけ!」
…………ぐりぐり、ぐりぐり。
「んニャ~。」
「まぁ、気になるのは小さな転移魔方陣ですヨ?其れも、此処で論じてても仕方の無い物ですヨ。主よ、いつまでも もふってないで先に進みましょう?」
ガバッと、頭を上げた。
「あ、うん。その前にティオ、あ~ん」
「ニャ~」
魔力球を確認する。
「その姿で居るだけなら、そんなに魔力は消費しないみたいだね。OK。先に進もう!」
「次からは戦うのニャ~!」




