猫増える?
私達に気付いているだろうに、踊り場の中央から動かないデーモンに近付く。
1m程浮かび、両腕を組み目を閉じている。
……寝てる、なんて事はないよね?
近付いた瞬間、バッサリ!
……やられても問題ないだろう。ヴァンより強くないだろうし、言ってみればこのデーモンは中ボス?
ラスボスが翼竜の群れで、龍種より弱いらしいから……。
キースメリアさん曰く、今の私は龍種とも戦えるらしい。
だから、問題ない。
構わず、デーモンに近付いた。
じ~~~と観察してみる。
目を閉じているけど、凄く整った顔をしている。
この世界、イケメン多いよね!
黒い長髪は腰に届く程で、触ってみたくなる程にサラサラ!
エンジェルリングが眩しいぜ!
羨ましくなんか無いんだから!
「……そんなに見詰められると、流石に照れますヨ?」
おおう、喋った!
デーモンがゆっくりと目を開ける。
魔物の特徴である金の瞳。
「初めまして、美しいお嬢さん。私はバルティエヌス、見ての通り悪魔ですヨ。長く、このダンジョンに捕らわれていますが、お嬢さんが初めての客人で、とても嬉しいですヨ。」
「バルティエヌスって偽名?」
「本名ですヨ。」
「……私の悪魔のイメージの中に、本名知られたらアウト!てのがあるんだけど?」
「アウトですヨ。良くご存知で」
何でもない事の様に言う。
「正直、ウンザリしてるのですヨ。喚ばれたと思ったらダンジョンの中ですヨ?然も、待てども誰も来ない!」
まぁ、ダンジョン攻略に来て直ぐ帰ろうとする人はいないだろうし、真っ先に入り口を選ぶ人もいないだろうね。
「……喚ばれたって事は、違う世界から来たの?」
「そうですヨ。魔界と言えば分かりますか?私、其処で伯爵やっておりました。」
ぐはっ!
悪魔伯爵!上位デーモンやん!
急に自信無くなってきた!
「…………この通路って、もしかしての裏ルート?まさか、まさかのラスボスも変わっちゃう?」
「そのようですね。普通に1階、2階と踏破していくルートが有りますからね。因みにこの先に居るのは、気配からしてドラゴンですヨ?」
ガーン!!
余りのショックにヨロヨロと2、3歩下がる。
「あ、あ~、お嬢さんなら倒せますヨ?勿論、私の事も!ね、だから帰らないで!もうちょっと話しましょうヨ。本当に暇なんですヨ!」
オロオロし始める悪魔。
膝を抱え座り込む私。
棒で床に「の」の字を書き始める。
「……この棒に、従って、従って!ぐすっ、裏ルート、まさかの、裏ルート!」
「大丈夫ですヨ?大丈夫ですから、落ち込まないで!ね?……あ!何なら、私と主従契約します?お嬢さんの方が強いですし、問題ないですヨ?私もダンジョンから解放されますし、ドラゴンも2人でフルボッコですヨ!」
私は顔だけ上げて悪魔を見た。
じ~~~。
「…………最初から、契約持ち掛けるつもりだった?」
「うっ!」
悪魔が床に降り、私の前に正座で座る。
「……つもりでした。すいません。私もダンジョンから出たいのですヨ。」
頭を下げる。
「お願いします。契約して下さい。」
悪魔が土下座!!
自分からお願いする程、嫌なのか!ダンジョン生活。
仕方なく私も自分の状況を説明する事にした。
私も喚ばれた存在だとか、世界樹の事とか……。
「其れで良ければ良いよ?」
「構いませんヨ!」
「……私が寝てる間はどうなるの?契約切れる?」
「……多分ですが、魔界に帰るだけでしょう?主が生きてる限り契約は続きますヨ。」
「……長く、束縛する事になっちゃうよ?」
「元々長い人生です。何度も言いますが構いませんヨ。」
「なら、良いよ。契約しよう。どうやるの?」
悪魔の顔が笑顔になる。
契約と言う事で、私も何となく正座する。
「此方の羊皮紙に書いてある内容を良く読んでいただいてから、血でサインをお願いします。」
羊皮紙を受け取る。
「…………何故に日本語?」
「仕様です。」
「……え~と、『悪魔契約書、この契約書にサインした瞬間から貴方はバルティエヌスの主です。ダンジョンからの解放の見返りに、従者としてどんな命令にも従います。命令の代償は無し!大盤振る舞いですヨ。お買い得です。』…………。」
私は腰に差してある短剣を取り出すと、人差し指を突いた。
言われた通りに血で名前を書いた。
『チナツ タカツキ』
書きにくい!
書き終わると、羊皮紙が宙に浮き上がりビリビリと2枚に千切れた。
私とバルティエヌスの身体に、1枚ずつ吸い込まれて消える。
「契約完了ですヨ。此れから宜しくお願いします。」
頭を下げられ、慌てて私も頭を下げた。
「あ、此方こそ宜しくお願いします。」
顔を上げると、バルティエヌスと目があった。
「あっ、瞳の色が変わってる!」
金色から赤色になっていた。
「ダンジョンから解放された証ですヨ。有り難うございます。」
嬉しそうに笑った。
私も吊られて笑う。
「バルティエヌスって本名だから、此れからはバルトって呼んでも良い?」
「バルス、と名乗る事が多かったのですが?主が呼びたい名で良いですヨ。」
……バルスはちょっと抵抗があると言うかなんと言うか
名前を呼ぶ度に何処か壊しそう?
「じゃあ、バルトで宜しく!」
「はい。宜しくお願いします、我が主。」
「みんなに紹介するよ。あ、羽仕舞える?」
「小さくなら出来ますヨ。」
そう言うと、バルトの羽がぐんぐんと縮み背中からはみ出ない位の大きさになった。
私はバルトを連れてヴァン達の元に戻った。
「紹介するよ?さっき契約を結んだ悪魔伯爵のバルトでっす。」
バルトが3人に頭を下げる。
「バルトです。宜しくお願いします。」
「こっちが、ヴァン。この世界の魔王だよ。で、キースメリアさん、水龍でヴァンの腹心。で、メイドのミシェル。吸血鬼。あと、」
ティオを抱き上げてバルトの前に翳す。
「この子がティオ。私のパートナー!」
「ニャ~、パートナーニャ!よろしくするニャ!」
「此れはまた、興味深い存在ですヨ。宜しくお願いします。」
そう言うと、煙を上げてバルトの姿が変わる。
真っ黒な黒猫。
背中に小さな羽がついていて、宙に浮いている。
「ニャ!?」
「宜しくですヨ?先輩。」
「せ、先輩ニャ!うち、先輩ニャ~!」
「あはは、良かったね、ティオ。」
ティオを床に下ろす。
バルトも床に降りると、2匹は器用に前足で握手をしている。
和むわ~。
なんて、和んでいたのにヴァンに小突かれた。
「何が倒してくるね、だ。男増やしてどうする!」
「いや、なんか此処ね?裏ルートらしくてね、ボスが龍みたいなのよ?戦力欲しいな~みたいな?後、ぼっち生活可哀想?」
「そう!私、此処でずっとぼっち生活だったのですヨ!……ニャ~!」
「……無理にニャ~つけなくて良いからね?」
「分かりましたヨ。ニャ~!」
「…………。」
「ボスが龍ですか?何龍でしょう?気になりますね。会ったら笑って差し上げましょう。ククク」
もぅ、笑ってますよ。キースメリアさん?
知り合いの龍でも、いや、知り合いだと余計に笑いそう。
「はあ、裏ルートやら、ボスって事はこの道でクリア出来るんだな?なら、良い。」
「あ、そうだ。バルト、此処って丁度中間になるの?」
「はい。中間です。同じくらい上って魔物を倒せばボス部屋ですヨ。ニャ~!」
「……じゃあ、今日は此処までにしない?丁度、踊り場で床が平らだし?」
ヴァンが眉をしかめる。
「此処で寝泊まりする気か?」
「え~、だって、転移でこの場所に戻れる保証は無いじゃない。だったら、自分で結界張って寝るよ?」
「そうですヨ。転移だと入り口に戻されると思いますヨ。ニャ~!」
「…………分かった。その代わり、日本酒出して欲しいぞ、チナツ!」
「…………。」
魔王城に帰ってても、出せと言われてそうだけど?
まぁ、いっかと1人5本……計20本出した。
4人分、私じゃなくバルトの分ですヨ?
予想外の追加キャラ……。
魔界在るんか~い!
じゃあ、天界も在るのん?
出るの?出ないの?出ないだろうな~!?




