ヴァンじゃなくて良かったんだよ?
今日は、本当に暑かった!資源回収で外にいたんすよ!
汗凄い!
提供されたお茶イッキ飲みっす!
扉をくぐった先は、ダンジョンでは無かった。
アルヒレスタ王国よりも高い城壁。
大きな門から続く長い人と馬車の列。
並んでいる人達も印象的だ。
露出している部分が鱗で覆われていたり、太い爬虫類の様な尻尾を揺らしている。
角や翼が生えている人も居る。
獣人、エルフ、ドワーフも居た。
「…………此処って、もしかして」
「あぁ、魔族の国 ハイルニアだ。」
「えっ、ダンジョンに行くんじゃないの!?」
「……ダンジョンは明日からだな。ギルドにも、顔は出しとかないと駄目だし、今日はハイルニア観光でもして過ごす。」
ぐいっと、また腰を引き寄せられる。
!?
「デートしようぜ、チナツ!」
「な、な、何で…」
バチンッ!
ミシェルがいつの間にか手にした鞭を鳴らした。
目が座っていて……怖い!
「それ以上、お嬢様に触れないで下さい。鞭、味わいたいですか?」
ヴァンが手を離す。
「危ないメイドだな、別に痛くも痒くもないが そう言う趣味はない。」
「良かったですわ。喜ぶ輩を打ってもつまらないですからね。」
うぅ、ドS発言ですよ。ミシェル……。
「だが、デートぐらいは良いだろう?健全だし、チナツもアルヒレスタ以外は初めてなんじゃないか?興味、あるだろう?魔族の国だぞ?」
最後の方は、私に聞いてきた。
確かに、興味深いですけどね!
其れに、冒険者になりたかったのも異世界の色んな所を廻りたかった訳で……。
「……ごめん、ミシェル。ダンジョンには早く行きたいけど、魔族の国に興味は……ある。」
私の言葉にヴァンがニヤリと笑った。
ミシェルが悔しそうにヴァンを睨んだ。
「……仕方有りませんわね。」
鞭を仕舞う。
「じゃあ、デート決定だな。メイドは離れて付いてこいよ!」
「……其れぐらい、弁えております!不本意ですが!」
「後は猫だが、」
ヴァンがまた、ティオの首根っこを掴む。
「ニャ~!乱暴は止めるニャ!」
ティオが抗議の声をあげる。
仕方なくダミーのリュックをミシェルに渡した。
「ティオ、今日は戻っててくれる?」
「ニャ~、」
ビシッと、ヴァンの方に右前足をつき出すと、
「ご主人に変な事したら、直ぐに噛みつくニャからニャ~!!」
と叫んでから、ヴァンの手を振りほどき私の腕の中でリュックに戻った。
ヴァンとミシェルが驚き、目を見張った。
「其れが、本体か」
「驚かされますね。ティオ様には……。」
「これ以上は何も出ないけど、ね。ほら、行くんなら行きましょ!ギルドと観光!」
当然ながら、ヴァンの顔パスで列に並ぶ事無く街に入った。
守備兵の方々に、敬礼されて居心地悪かったな。
門を抜けると、大きな通りが目の前に広がっていた。
通りの両端には、隙間無く出店が並んでいる。
そして、通りを埋め尽くす人、人、人。
「……何でこんなに、人が多いのよ?」
私は、ヴァンに聞いてみた。
「この大陸に有る物がほぼ此処で揃える事が出来る。魔の回廊以外にも、この近くにはダンジョンが在る。この大陸にしか存在しない魔物が居る。後は、力試しとかだな。」
へ~、と感心してたらヴァンに手を掴まれた。
「見ての通り、ごった返してるからな 繋ぐくらい構わんだろ?」
困ったような顔で見詰められた。
「はぁ、じゃあギルドは何処に在るんです?先に済ませてしまいましょう。」
ヴァンは嬉しそうに笑うと、私の手を引いて歩き出した。
「こっちだ。」
こんな小さな事で、喜ばないでほしい。
本気なのかと思ってしまうじゃない……。
軽く数百年は生きてるだろう人なんだから……。
大通りから其れほど離れていない場所に、ギルドはあった。
「……何処の国でも、ギルドって正門の近くなの?」
「ん、そうだな。殆どの国でギルドはこの位置だな。異変に気付きやすいし、出撃もしやすい。城の側には兵士が詰めてるからな。」
「ちゃんと理由が有るんですね~。……ヴァンて、この国の王様よね?こんな風に歩いてて問題ないの?」
「問題ないな。いつも転移で移動してるし、黒のイメージが強いから少し違う格好をしてればバレない。」
「……わざと、黒1色なの?」
「ああ、魔王っぽいだろ?」
そう言って、ニヤリと笑った。
魔王っぽいって…………子供っぽい?
でも、其れで、バレないなら有り?
まぁ、良いかとギルドのドアを開けた。
私、ヴァン、ミシェルの順で入った。
午前中と言う事もあり、ギルドの中は冒険者が大勢居た。
そう言えば、この時間に来たの初めてかも。
ヴァンがスタスタと歩いて行くので、小走りで付いて行く。
受付の前で止まると、振り返り手を差し出してきた。
「チナツのギルドカードと昨日の紙」
「あ、はい」
私は、慌ててリュックからギルドカードと通知書を出した。
「これを頼む。明日から挑む。」
受付嬢に渡す。
「……! 畏まりました。少々、お待ち下さい。」
受付嬢はギルドカードと通知書を持って、2階へ上がって行った。
「昇級試験受ける前に、ギルドマスターのサインか何かが必要なの?」
「ああ、受ける前と後で必要だ。まぁ、受けた後は更新手続きがあるからついでになるな。」
「……詳しいね。」
「……暇してた時に受けたからな」
ニヤニヤしながら答えてきた。
「む~、聞かないからね?」
「其処は、聞くとこだろが!」
どうせSSSだろうし~。
羨ましくなんかないやい!
何てやり取りをしていたら、少し離れた席から笑い声が聞こえてきた。
「どこぞの優男が、メイドと小娘連れて冒険かよ!」
「良いご身分だな!そのメイドと小娘は兄ちゃんのお手付きか?羨ましいな~おい!」
「俺達にも回してくれよ?俺、小娘の方な!」
「俺はメイドの方がいいぜ!ご主人様~つってな!」
「「「ぎゃはははは!」」」
冒険者ギルドで絡まれるのは、お約束みたいな物だけど下品だね。
小娘って言われたけど、実際小娘だしね。
ヴァンを見てミシェルを見た。
2人とも目が座ってる。
ミシェルが前に進み出た。
え~、ミシェルさんなにする気?って、鞭持ってるし~~!!
「お嬢様を小娘呼ばわり。万死に値します。」
其処なの!?
本人、気にしてないんだけど!
「あん、メイドの姉ちゃんが相手してくれんの?」
シュッ!
ミシェルが鞭を振るった。
正直、目に魔力込めてないと見えない速さだった。
男達は何が起きたのか分かっていない。
テーブルが真っ二つに割れる。
「「「なっ!?」」」
ギルド内が騒然となった。
「お嬢様の前から今すぐ立ち去るか、今此処で永遠に消えるか選びなさい。」
「ひっ!」
1人が顔をひきつらせながら、走って逃げだす。
「あ、待てよ!」
2人目も逃げ出し、3人目がミシェルを睨み付けた。
「……只で済むと思うなよ!」
「…………。」
ミシェルの腕が高速で動いた。
男の衣服がハラハラと床に落ちた。
「なあ!?」
「自分の実力を理解出来ない蛆虫が、捨てゼリフ等言うものではありませんね。さっさと消えてください。お嬢様のお目汚しです。」
いや、あんたがやったんやん!
3人目の男の人は、泣いて走り去った。
……憐れ
ミシェルが鞭で追い払ったけどね、もしヴァンが動いてたら…………て、タイトルですわ
王への侮辱罪だしね~。




