種
ニホンチャニハ、アマイモノ
アンコハ、ツブアンハ
(*゜▽゜)_□ヨウカン!
「…………君には、心から申し訳なく思ってるよ。新しい家族も出来て此れからって時に、こんなお願いをしなきゃいけないなんて、」
精霊が項垂れて言う。
……世界樹が枯れる。
其れから、どれ程時間が経過したのか この場所では、知る事が出来ない。
目の前のちゃぶ台と急須のせいで、まったり感が半端無い。
いや…………只の現実逃避、か
「…………其れが、私が喚ばれた理由なら」
世界樹をみあげる。
そう、きっとお祖母ちゃんの予知で分かってた事だ。
「16より先が見えない。」
「ん?」
「お祖母ちゃんの予知ですよ。元の世界に16歳以降の未来が私には無い……と言えます。元の、召喚された時間に戻るのなら、この予知はおかしい。」
お茶を啜る。
どれだけ時間が経っても、飲みやすい温度だ。
「たぶん、どれだけ悩んだり、考えたり、悔やんだりしても、最後には引き受けるんでしょうね。私は、お祖母ちゃんの予知を信じています。従う事が1番ベストな事だとも……だから、そんな顔しないで、泣きそうな顔してますよ?」
「…………ゴメン、世界樹は何でも知ってる。でも、知ってるだけで何も出来ない。……此処まで、来てもらわないと助けてあげる事も出来ない。」
精霊も世界樹を見上げて言った。
「其れで、後悔した事も、ある。」
サワサワと風が流れた。
振り返った精霊は笑っていた。
「君が結界に触れた時に、勇者としての力の1部を解放してある。少しずつ、慣れて欲しい。転移も出来る筈だよ。…………その力は、君が生きる為の力だ。此れから、魔物も強くなっていく。」
精霊は私の両手を握ると、真っ直ぐに見詰めて言った。
「どうか、生きて…………次の世界樹を、宜しくお願いします。」
精霊が頭を下げた。
「……はい。任されました!」
顔を上げた精霊と微笑み会う。
「あ!此れ、持ってって!無限に沸く急須と菓子皿!お皿の方は、君が望んだ菓子が出る仕様だよ。凄いでしょ?」
望んだお菓子……何でも出るの?
やったね!
私は、丸くなっていたティオに仕舞ってくれるよう頼んだ。
「ニャ~、ニャ、ニャ~」
ティオは、ちゃぶ台の上に乗ってる物から順に肉球で触れていった。
最後にちゃぶ台を仕舞った時、精霊が驚いた様にティオの脇に手を入れ持ち上げた。
じ~~~~~とティオを見た。
「ニャ~、降ろすニャ~」
不意に、精霊は笑いだした。
「あは、あはははは!君は、フフ、そうか、なるほどね。あはははは。」
「ニャ~?」
「あの、ティオが何か?」
「フフ、そう、ティオって言うのか」
「……ご主人がつけてくれたニャ!」
「…………君は、今、幸せかい?」
「ご主人が一緒なら、何処でも幸せニャ!!」
ティオの答えに精霊は心底嬉しそうに笑った。
世界会議の場
「遅い!」
獅子王が苛つきながら叫んだ。
エーテリア王が言う。
「…そうですね。直に夕暮れです。少々、心配になってきました。」
次にオブゼスタ王が言った。
「結界の中なのだから、問題はないんダナ。」
マルジェシタ王が、身体をくねらせながら言った。
「あの子、私の好みだわ!あの、双黒と巫女の衣装が神秘的で堪んない!はぁ~、お持ち帰りしたいわぁん!」
「だから、クネクネすんじゃねぇよ!気持ち悪ぃ!しかも、巫女お持ち帰りとか!此処に居る全員で断固阻止だ!!」
控える護衛含め、全員が頷いた。
アルが言う。
「これ以上遅くなると、今日はもぅ、翼竜を飛ばすのは無理ですね。」
ヴァンが答える。
「フ、別に翼竜で帰らなくても、私が一瞬で送ってやるよ。」
「それは!」
アルが答える前に、ヴァンは世界樹の方を見てニヤリと笑うと指をパチンッと鳴らした。
全員が不思議に見ていると、ヴァンの真上に魔方陣が現れた。
其処から、チナツとティオが落ちてくる。
「ええぇぇぇ!」
「ニャ~~~!」
チナツとティオの悲鳴があがる。
ボスンッ!
ヴァンに受け止められた。
ヴァンはティオを円卓に放り投げると、笑って言った。
「お帰り、チナツ。遅かったな?」
「あ、ただいま?ヴァン…………て!何でヴァンの上に出てるの!?結界の前に出ようと思ってたのに!!」
その言葉でチナツ以外の全員が気付いた。
指を鳴らしたあの、行為……
(((転移先変えやがった……!)))
「はは、何でだろうな?練習不足だろうな、慣れれば上手く出来るさ。」
(((ぬけぬけと!)))
「…………成る程!」
(((簡単に信じた~!?)))
全員がチナツの単純さに驚いている事に気付かないまま、
「精霊も少しずつ慣れるようにって言ってましたし、要練習!ですね。」
握り拳を作り、コクコクと頷く。
「……精霊、ね。」
カルーナ王が聞いてきた。
「チナツ?世界樹で何があったのか、聞かせて貰えますか?」
「あ、はい。」
チナツは円卓からティオを抱え直すと、ポツポツと語り始めた。
私は、世界樹の役割と魔物の原因、種について話した。
話し終えると、全員が絶句していた。
世界樹が在って当たり前の人達にとって、その存在が無くなると言うのはどれ程の衝撃か……。
最初に衝撃から回復したのは、やはり、魔王 ヴァンだった。
「……枯れる前に、巫女であるチナツを喚び種を預けた、で良いんだな?」
「はい。」
「その種、見せてもらう事は可能か?」
全員の視線が集まる。
私は、胸の前に両手を持ってくると目を閉じた。
自分の鼓動とは別の鼓動を感じる。
世界樹の鼓動…………。
胸の前の両手を前に差し出し、開く。
光るクリスタルが私の手の上で浮かんでいた。
「おお~」
感嘆の声があがる。
「其れが、世界樹の種……」
「綺麗、ねぇ。」
私は、全員が見た事を確認すると、世界樹の種を包む様に手を閉じた。
種が消える。
カルーナ王が言う。
「では、種の方は巫女であるチナツに任せるしかないとして、問題はやはり、強くなっていく魔物の対処ですね。無限に強くなる訳ではないと分かっただけ良かったです。」
「……そうダナ。次の世界樹が育つまで耐えるダナ。」
「国とギルドの上層部には、話して協力を仰ぎましょう。例え、ゴブリンとて油断せぬ様に、何か変化があれば即時連絡を……」
王様達が次々に意見を出し合っていく。
「……ふぅ~」
「どうかしたか?」
ヴァンが聞いてくる。
「いえ、少し、疲れただけですよ?いろいろ、1度に聞かされましたから、」
ヴァンの方を向き、微笑みながら答えた。
不意に、ヴァンに両頬を挟まれ見詰められた。
「……嘘だな。精霊とやらに他にも何か言われたんじゃないのか?…………言え。」
何で分かったんだろう?
年の功?
「言われましたけど、言えません。私の問題なんで、どうするかは決めてあるんです。気持ちが追い付いてないだけで……だから、言いません。」
強くヴァンを見つめ返した。
ヴァンの目が据わる。
「……俺が言えと言ってる。言え、チナツ。…………言わないとこのままキスするぞ?」
「なっ!」
一斉に、全員が此方を振り返った。
「お、横暴です!そんな脅迫するなんて、何考えてるんですか!そんな事言われたって、話したくないもの…ん!?」
顔を引き寄せられ、ヴァンの唇が重ねられた。
「ん~!!」
私は、ティオを離し両手でヴァンの身体を引き剥がしに掛かったが、びくともしない。
「!?」
ヴァンの舌が唇を割って、入ってくる。
「☆◆●★□#&▲!?」
無我夢中でがら空きになっているヴァンの腹に、全力の魔力を撃ち込んだ。
椅子ごとヴァンが吹き飛んでいく。
土埃が舞う。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
私は、胸に手をあて息を整えた。
ティオが戻ってきたので抱き上げる。
「信じらんない!信じらんない!信じらんない~!!」
「はは、まさか、俺の防御越えてくるとは思ってなかったぞ?」
上体だけを起こしたヴァンが、腹を押さえながら言う。
私のファーストキスが~!
思うと涙がポロポロ溢れた。
お兄ちゃんの方を勢いよく振り返った。
「帰る!!」
ヴァン以外の全員がコクコクと頷いた。
直後、私は転移で家まで帰った。




