王子様と御対面〜
ちょっぴり長くなりました。
切りの良いところで、区切りたいのでもっと長くなる話しが出てくるかもです。
長くても、サクサク読めるように書いていきたいです。
建物の中は、質素だった。
高そうな絨毯やシャンデリアがお出迎えって事はなく、ほとんど何も置かれてなかった。
城の中じゃなく騎士団本部だものね。
王子が出入りしてるみたいだから、もうちょっと華美なの想像してました。
入口突っ切って、階段を一気に5階まであがる。
他とは違う重厚そうな濃茶色の両開きの扉があった。
扉の左右に立つ騎士2人が ルークさんに気付くと、右腕を左胸に当てビシッと直立。
此が騎士の敬礼なのかとちょっと感動してたんだけど、ルークさん 敬礼スルー。
そのまま、扉をノックしようとしてたので慌てて マントの裾を掴んで止めた。
あっルークさんは、 私のトイレ待ちの間に騎士服に着替えてました。
って、この扉の向こうに居るの絶対 第1王子ですよね!私の命握っちゃってる人ですよね!こ、心の準備させて欲しい!
見上げる私に ちょっと驚いた顔をしたルークさんは、微笑むと「大丈夫だから」
と、優しく私の頭をポンポン叩いた。
扉をノックし 返事を待たずに開けてしまう。
右手で扉を開けたまま振り返り、私に入るよう視線で告げた。
私は、逃げ道は無いんだからと自分に言い聞かせ、大きく息を吸うと 部屋の中へ一歩を踏み出した。
部屋の中は、そう 社長室で良いと思う。
中心に置かれたガラス製のテーブル、それを囲むようにソファーがあり その奥に、大きめの執務机。
壁に掛けられた青い布地に眼光鋭い鷹が描かれたタペストリー。右の壁には、チェストや食器棚 高そうな酒瓶が並べられている。左の壁は、その壁を埋め尽くす大きさの本棚。
それでも入りきれなかった幾らかの本が床に積み上げられている。
ルークさんに薦められ、一番近いソファーに座る。
予想以上に身体がしずんで、慌てて態勢を整えていると、ソファーには大人が3人は余裕で座れるのに、肩がギリギリ触れない距離にルークさんが座った。
近すぎる理由を考えてみる。
此れは、「逃がさないぜ」と言う意思表示に違いない!
私とルークさんが座ったのを確認してから、執務机で書類を見ていた人物が、私達の向かいのソファーに座った。
見ないようにしていたが、この人が第1王子なのだろう。
金髪碧眼。切れ長の眼にスラッと高い鼻筋。薄くきゅっと締まった唇。
ルークさんと同じ騎士服だが、マントが足首辺りまでに長い。
ハリウッドスターも霞むかも?な美形だった。
流石異世界。
と、感心していたら 目の前のテーブルに紅茶?のティーセットが並べられ、中央には色んな形のクッキーが置かれた。
見上げると、60代位の青灰色の髪をオールバックにし 後ろでひとつに縛り 左眼にモノクルを掛けた渋いおじ様に優しく微笑まれた。
釣られて私も微笑み返してしまった。
「さて、私がこの国の第1王子 アルステッド・トゥア・アルヒレスタだ。今いる、青鷹騎士団の団長でもある。まず、ルーク 報告してくれ。」
ルークさんは頷くと、私を見て語ってくれた。
「最初に、アルの異母弟であるマルロウ様が見つけた魔法書、此れが勇者召喚について書かれた物だった。マルロウ様は、直ぐにアルに渡し アルは魔法研究所に解読するよう持っていった。だが、其処で盗まれた。で、俺がマルロウ様の協力の元 潜入して魔法書の隠し場所を探してたんだが、見付けられないまま今日に至っちまって、チナツちゃんが召喚されてしまった。魔法書は召喚の時に燃えてしまったから、実行犯とチナツちゃんの確保に動かせて貰ったんだ。」
「そう言う訳で、君がこの世界に来てしまったのは此方の不手際だ。申し訳ない。心より謝罪する。」
そう言って、アルステッド殿下が私に頭を下げた。
驚いているとルークさんや渋いおじ様まで、頭を下げた。
「やっ あの あた 頭じゃなく!顔を上げてください!」
慌てる私の言葉に顔をあげてくれる3人。
「あの、召喚された事に対して、恨みとか怒りとかの気持ちはありませんから、大丈夫、ですよ?」
事前に、召喚される心の準備が出来てたとは言えないよね〜。
「しかし、君の居た世界には当然 御家族や友人が……」
「…誰に見られる事なく召喚されていれば、そりゃ騒ぎになったと思います。でも、私 家族全員の前で召喚されましたし……。」
召喚後どうするかも、既に決まってたとは言えないし、友人も親友と呼べるような存在も作らなかった。
寂しくなかった訳じゃないけど、突然居なくなって悲しませるよりは良い。
そんな感情が顔に出てたのか、ルークさんに また頭をポンポン叩かれた。
「謝罪はさせて欲しい。その上で、此れからの君の処遇についてなんだが……」
其れからは、お互いの希望をいい合うと 騎士団本部の一室へ案内された。
準備が整うまで好きに使って良いらしい。
まぁ、あまり外には出るなとは言われたけど……。
それでも、やっと1人の時間がゆっくり持てそうで嬉しかった。
私の希望は、当然 冒険者ですよ。
それでこの世界を色々見てみたい。