隷属の首輪
(εдε)⊃))メガネ、メガネ、ドコ?
「ああ、……う…!」
全身が痛い。
電流が身体に残ってるようで、ピリピリとした痛みが襲う。
最初に殴られたお腹も、髪の付け根も、頬もジクジクと痛い。
身体が痺れて動けない。
「クフフ、それ以上動かないで下さいよ?クフ、フフ、あ~、この娘の悲鳴が聞きたければ構いませんがね?クハハハハハ!」
「……下衆が!!」
ウィルネストさんが、悔しそうに歯を食い縛る。
握り締めた拳から、ポタポタと血が流れ落ちた。
「フ~、全く使えない物たちだ。いくら掛かったと思ってるんだか、」
何とか、顔を上げ見ると ゲルティさん達が走って来るところが見えた。
はは、みんな、強い、な、
「潮時ですね。クフフ。」
会長はベッドから降りると、私を抱え上げた。
会長が指を鳴らす。
部屋の奥に1人が通れる程の空間が現れる。
「嬢ちゃん!!」
ゲルティさん達が部屋に入ってきた。
「ウィルネスト!何で動かねぇ!!」
「くっ!」
「クハハハハハ!あなた達も動かないで下さいよ?余り、弱られると後で楽しめませんからね!」
「……隷属の首輪だと!?」
ゲルティさんが、私の首に嵌められた物に気づく。
隷属の首輪…………異世界物にときどき出てくる奴隷用の道具。なら、私はこの男の奴隷にされたのか…………。
この世界に来る前から、有るかも知れないから気を付けるように言われてたのに、
一方的にやられて、簡単に嵌められて、……皆に迷惑掛けて……情けない、
ゴメン、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、美穂姉……
涙がポロポロと溢れていく。
また、会長に舐めとられた。
それでも涙は止まらない。
「クフフ。可愛いじゃあないですか?こんなに泣いて。此れで、勇者だって言うんですから!クハハハハハいや、まだ、卵ですかね!」
「てめえが!!何で!!」
「何で?クフフ、気付いてないとでも?クハハッ馬鹿にしないで貰いたい。一応、商人ですよ?私。情報で食べてる人間ですよ?まぁ、まだ気付いてない者の方が多いでしょうが、ねぇ。私が逃げなかったのは、其れだけの価値がこの娘に有ったからですよ!」
「……糞が!!」
「クフフ。では、私は此れで失礼させて頂きますよ?追わないで下さいよ。なに、殺しはしません。壊れるかも知れませんけどね!クハハハハハ、は?」
会長の動きが止まる。
涙で滲む視界に、剣の切っ先が写る。
「……貴…様ぁ……」
会長が、ゆっくりと振り返る。
「長々と話してくれて助かりました。確か、隷属の首輪は持ち主が死ねば外れた筈ですね?」
私から姿は見えないけど、この声はセルヴィス叔父様。
「……チナツは眼を閉じてなさい。」
「…………はい。」
言われた通りに眼を閉じた。
「ぐっ!がはっ!」
会長の呻き声とボタボタと身体に降りかかる……血。
腕の力が抜け、落ちる私を直前で受け止める腕が有った。
ゲルティさん?
ドスッと何かが倒れる音が直ぐ近くでした。
首輪が外れ、楽になる。
私はゲルティさんに抱えられたまま、ガラスの部屋から連れ出された。
もう、良いかと思い眼を開ける。
男達が紐で縛られ、側に魔石が集めて置かれていた。
緑の魔石に混ざって、青い魔石も見える。
次いで、自分の身体を見る。
血で、真っ赤に染まっていた。
「ふぅ、ん……リフ、レッシュ、」
まだ、麻痺が残っているらしく 喋りにくい。
セルヴィス叔父様がやって来る。
「連れてきた私の落ち度だ。すまない、チナツ。」
「…………そんな事、無い、私の、意思です。そ、れに、通路、み、けたの、私、ですよ?」
「……それは……そう、だが」
「嬢ちゃんはもう、喋るな。セルヴィスも、お前だけの責じゃねぇ。全員が油断してた。」
あぁ、また、意識が朦朧としてきた。
「ウィル、ネストさ、んは?」
「!あぁ、此処に居るぞ、どうした嬢ちゃん?」
「フフ、も、チナツで、良い、よ。呼ん、でたでしょ?」
ウィルネストさんが罰の悪そうな顔をした。
「悪い、」
「……良い、ですって」
言いながら、私はウィルネストさんに弱々しく手を伸ばした。
反射的に、ウィルネストさんが私の手を握り返してくる。
「……ヒール…」
白い光がウィルネストさんの手を包み込む。
「なっ!」
拳の傷が綺麗に治る。
「…あり、がと、うござい……ま…」
あぁ、気を失って、ばっかり、だな…………
「何で!!俺の傷じゃなく、自分の傷を治せよ!!」
「……もう、気を失ってる。静かにしろ。」
「くそ、何で最後に礼まで言うんだよ……。助けられてんのはこっちだってのに……。」
「…………それはそうとセルヴィス、良かったのか あの男を殺して…」
「……証拠は充分有りますし、聞きたい事は有りましたが……正直、チナツの悲鳴が聞こえた辺りから 理性がぶっ飛んでたんでしょうね?はは、まぁ問題ないでしょう。どのみちこの男は死刑です。殿下方も、チナツには甘いですからね。不問でしょうよ。」
ゲルティはパーティでの殿下達を思い出す。
「はぁ、それもそうだな。」




