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平和な世界に勇者召喚  作者: 和威
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プロローグ

はじめまして〜和威(カズイ)です。

1日一話投稿で頑張りたいと思ってます。思ってますよ。いや、本当。

祖母が言った。

「この子は、16の今日いなくなる。」と、

家族は混乱した。

産まれたばかりの赤子を囲み頭を悩ませた。

祖母の予知は外れない。16歳の誕生日に何かが起こる。自分達は16年しか共に過ごせない。

母は泣いた。

父は母を抱き締め祖母を見つめた。

「死ぬわけではないのですよね?」

「死ではない。16より先が視えん。光に包まれた後……いなくなった。」

「「………」」

「……光に包まれる時、足元に見知らぬ文字列が在ったり…は?」

祖母は静かに眼を閉じ…

「視えた。赤い三重の円。その中に記号のような……文字が」

父と母は顔を見合わせた。

「「召喚魔法!?」」










高槻家の女性は、予知能力を持つ巫女が稀に生まれてきた。

今世では、千夏の祖母がそうだ。

近所の人は天気予報より当たる位の認識だが、知る人からすれば百発百中。

その代わり、本人の意志で視えるわけではないらしい。

祖母の予知を求めてやって来る権力者等も、視えない時は残念そうに帰って行った。

そんな祖母から、産まれた時に予知された高槻千夏は、今日で16歳になる。

異世界召喚だと騒ぐ家族に、物心つく頃から道場に通わされ、中学校にあがる時には、父と兄から伊達眼鏡を渡された。髪型は前髪長め、後ろは二つ縛り。成績はクラスの中の上をキープ。

目立ってはいけないと厳命された。

なぜなら、予知後、積極的にライトノベルを家族全員が読み始めたからだ。

そして、最近の召喚物はクラス転移が増えていた。

目立つ存在は録な目に遇わないから。

まぁ、父だけは「変な虫が〜むにゃむにゃ」言っていたけど。

千夏は、まだ真新しいブレザーを着ると、机の上に置いてあった猫型のリュックを手に取る。

去年の誕生日に母から貰った手作りのリュックで、背負うと短い足(肉球付き)と尻尾がプラプラと揺れた。

お気に入りである。

カバンを持ち、玄関へ向かう。


玄関の前では、家族が勢揃いしていた。父は遅刻だろう。

兄が筒状に畳まれた茶色の布を差し出した。

「これ、美穂に作って貰ったから、向こうに行ったらちゃんと着用しろよ。もし、スマホ使えたら写真撮って送れよ。」

そう言って、千夏の背中と猫型リュックの間に差し込んだ。

「千夏ちゃん……」

兄の隣に立っている美人に話しかけられる。近所のお姉さんにして、兄の恋人である。

実の兄だが、死ねば良いのにと思う。

「千夏ちゃん、猫好きだから、猫耳付きのマントなんだよ。よかったら使ってね。…………あぁ、千夏ちゃん千夏ちゃん千夏ちゃん!!」

ギュ〜と強く抱き締められた。

「ん〜千夏ちゃん!!千夏ちゃんのにほひ〜。此がさい、ごおおお」

兄に襟首を掴まれて、引き離された。

「最後なのに、変態臭出すな」

「だって〜、最後なのよ。もう、嗅げないのよ。」

と言いながら、美穂姉は兄に抱きついた。

イチャ付き始めたバカップルから、視線を外すと母に抱き締められた。父も近づいてきた。

「忘れ物はない?ハンカチ、ティッシュ、ぁ、水筒にはちゃんと麦茶入ってる?」

「お母さん、まるで遠足に行く小学生だよ。それじゃ。」

慌てる母を父が苦笑しながら宥めた。

「千夏、残念な事だが義母さんの予知は、外れたことがない。どういう世界に行くのか確認する術を父さん達は、持ってもいない。会えなくなると思うと胸が引き裂かれるような痛みを覚える。千夏……元気で…な。どんな世界でも、千夏が幸せになれることを祈ってる。」

「うぅ〜千夏ちゃ〜ん、ママも〜祈ってるから〜ね〜。うあぁ〜ん」

号泣しはじめた母の背中をポンポン叩き、父を見上げる。

「お父さん、お母さん、今日まで育ててくれてありがとう。お父さんとお母さんの娘に生まれて、幸せだよ。此れからだって、幸せに向かって爆進するから、大丈夫。私も、みんなの幸せを祈ってる。」

そう言って、千夏の方から両親に抱きついた。抱き締め返される。

長いようで短い抱擁を、両腕を伸ばしてほどくと距離をとった。一人一人顔を合わせ微笑む。

別れるときは、笑顔と決めていた。

「それじゃ……」

別れを口にしようとした瞬間、千夏の足元が輝いた。

祖母が言っていた通りの、赤い三重の円に見慣れぬ記号のような文字。

「えっ‼ここでえぇぇぇぇぇ❗❗❗」

赤い円から立ち上った光に包まれ、千夏の雄叫びを残して光と共に消えてしまった。

床に残された千夏の学校のカバンを兄が拾う。

「締まらないな……」

「「「…………」」」



千夏が消えた後、哀しみもそこそこに父は会社に走っていった。電車通勤だ。

今日ぐらい車で行けばまだ間に合っただろうに、残念な父だ。

母は洗濯しなくっちゃ〜と言って、奥へ消えていった。

玄関に残された俺と美穂だったが、突然、美穂が叫んだ。

「千夏ちゃんの〜ベッドシーツ〜」

「!?」

二階に走り出した美穂を追いかける。

美穂がやろうとしていることを、兄として、何より恋人として断固阻止するために❗








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