自我
移りゆく季節というものを感じなくなったのは
いつの間にか寝ている様な感覚に近く
日々失われているのに気が付かず
ある日ある時唐突に感じるデジャブの様に
様々な経験が価値へと変化し結晶化したからだろう
人とは違う景色を見ていたはずだった
可能性や確率という言葉を考えたこともなかった
非情にも細胞は増え続けやがて止まる
自分の声の届く範囲には限界があった
今では眼鏡がなくては外に出られない
時期は違えど祝福は誰にでも訪れる
それまでに気付くべき4つのこと
2つは必ず気付いてしまう
もう2つに気付くのは少数派
4つの真理はこの世の理を悟らせた
普通のことに悩み特別なことを妬み
見えている天井に手は届かないが高さはわかる
本気で走らなくなったのは必要性がないからではない
怪物など存在しないのに恐怖を感じるのは
恐怖を通貨にして頑丈な家を建てるため
人生は旅ではない
何かに何かの代わりはできない
同じ日は2度と来ないと皆知っているはずなのに
ただ時間は戻るということを知っている人は
知らない人の時間を奪う権利を得た
最高と最低の幅は決まっている
特異でもなく普通でもないのは許容範囲だった
綺麗な言葉や汚い言葉など存在しない
天使は囁かないが悪魔は囁く
神の考えを理解するのは不可能だった
圧倒的な暴力と絶対的な知識
選択は各々に委ねられた
球体は時間と共に巨大化し形を変える
水を与えられた草の成長は著しいが
躊躇いを与えられた草はより空に近付いた
風の見える少年
光を触れる少女
その子達はその極めて珍しい能力を
自分の為には使わない
それは自然なことであった
自分は今決断を前に佇んでいる
答えはほぼ決まっている
動かないのは不安だからでも悲観しているからでもない
新しい感情が手に入るのを待っている
それ以外の準備は全て整っている