さよならを待ちたい気持ちを抑えて僕は今旅立つ
いつから座っているのだろうか
思い出すのも億劫だ
さっきまで夏だったのに
気が付いたら辺りには雪が積もっていた
僕には秋が向いていない
1番好きな季節なのにな
手が届きそうで届かないものが多いこの世の中
夢の中で夢が見れないのと同じように
自分が自分になるのは不可能なのだろう
蜃気楼は現象として処理され
富士の山は結果として存在する
葡萄がワインになる瞬間は
どう見ても美しいという他はない
曖昧な言葉は争いを生むが
それも個体差の問題で
入り口こそ違えど結末は一緒だ
一人の幼児が隣に腰掛けた
その子は芯しか残っていない林檎を持ち
満面の笑みを浮かべている
白い画用紙を目の前に
何色から手を付ようかと決める以前の
まだこれが何かもわからない姿
無意識の全力は
自己を認識するまで理解できない
ブラックホールと同意義の
宇宙の原点と完成系
初めて見た太陽は
人間の限界を感じさせる
幼児がいなくなったのはいつだったか
走り去って行く姿を
見たような見ていないような
朝焼けとも夕焼けとも思える空の下
大事な事を思い出しそうになり不安になった
一人の少年が隣に腰掛けた
その子は右手にナイフを持ち
左手にはペンを握っていた
何かが見えているようで
微笑で彼方を見つめている
名の有るものに興味を持ち
名の無いものは目に入らない
春夏秋冬の意味を知るのは
春夏秋冬を経験した者だけ
昨日蹴ったボールの距離を
意識せずとも今日は超える
昨日と一昨日の区別よりも
この林檎とあの林檎の違いが気になる
弱った猫に群がるカラスを
ただ見届けるしかない心身は
後に膨大な力となるだろう
時間を巻き戻す魔法を信じるが
気が付けば腕時計を使っている
少年がいなくなったのはいつだったか
ベンチにはナイフが残されていた
僕はナイフをポケットにしまい
少年の未来に安堵した
一人の青年が隣に腰掛けた
その人は僕の顔を見て
ほんの少しだけ微笑んだ後
涙を流し俯いた
いつからだろうか
階段を下る方が楽になったのは
人々は未来を心配し過去を恥じる
今は不安と不満が支配し
不完全な個体の進路を妨げる
心臓は突発的に鼓動を早め
ドブネズミがやたらと目に付く
挨拶をしてきた男性の
顔も名前も思い出せない
ただ一つわかるのは
この男性は僕を知っていて
僕はこの男性を知らないということだ
それが良いのか悪いのか
答えはとっくに自分の中にある
久しぶりに会った家族が他人に見えることがあるように
恩師をいつの間にか見下してしるように
自分が偏った思考の持ち主だと再確認させる
そんな考えをする人が大多数を占めるとしても
細分化すればするほど
個の力の恐ろしさを発見できる
意識しなければ呼吸ができない人生なんか
もう終わっているかのように思えた
青年がいなくなったのはいつだったか
いやはじめからいないのかもしれない
少し僕に似ていたかな
何だか懐かしい気持ちになった
そんな気持ちがした瞬間
一人の老人が隣に腰掛けた
その人は何も持たず
また何をするわけでもなく
ただ僕の隣に座っていた
どのくらい経っただろうか
老人が真っ直ぐ正面を向き
視線を彼方に向け話し始めた
昔わからなかった事が今わかるように
時が解決してくれる事もあるが
どうしても自分で解決しなくてはいけない問題もある
真の愛とは何かを知った時
人は仮のゴールを迎える
そこから先は簡単で
真理の扉を開ける日も近い
ヒントは其処此処に落ちている
拾う順番も大切だが
本当に重要なのは拾った物をなくさない事だ
君にもいつかわかるだろう
君は私と出会えたのだから
僕は感動と感謝を覚えた
花鳥風月に意味は無い
風林火山も必要無い
この世に必要なのはたった二つであると理解した
老人がいなくなったのはいつだったか
歩き去って行く姿を
見たような見ていないような
朝焼けとも夕焼けとも思える空の下
大事な事を思い出し○と○○が満ちてきた
一人の神が隣に腰掛けた
その神は何も持たず
また何をするわけでもなく
ただ僕の隣に座っていた
神がいなくなったのはいつだったか
もうそんな事はどうでもいい
自分のやる事をやるだけだ
どのくらい休んだかわからないが
この時間も必要経費だ
さぁ僕も立ち上がろう
過去と未来を繋ぐとしよう
それが僕の使命だから
さぁ僕も立ち上がろう
まだ僕は旅の途中