黒龍伝説とは
リュクス村には村人だけが知る伝説があった。その伝説の名前は黒龍伝説。村の北側にある丘に黒龍が舞い降り、再生と滅びをもたらすとされていた。
もちろんそれはプレイヤーにとってイベントになるのだがOβをやっていた者達は総じてこう評価した。
『労力と報酬が見合わないクソイベント』
見合わない理由は簡単だった。約一日の時間を費やしてクエスト達成率50%、ランクCの報酬しかもらえないのだ。しかも、黒龍に会うどころか丘にいるのはビックゴブリン一体のみ。当初はバグか何かであろうとプレイヤーは判断したが運営が正式に発表した。
『黒龍イベントには一切のバグは存在しない』と。
それ以来、プレイヤーは挑む事は時間の無駄としロストエデンにおいて一番の糞クエストと呼ばれるようになった。
だが、考えてみて欲しい。伝説で語られる存在がたかがゴブリンでしたなどありえるのだろうか?答えはNOである。それなら一つの仮定が立てられた。プレイヤーは黒龍イベントの“発生条件”を満たしているが黒龍の“出現条件”を満たしていない可能性だ。龍と闘うのは神話からずっと騎士であり勇者であり英雄の役目なのだ。英雄の資格無き者の前に黒龍が現れるわけがない…だが、もし資格がある者が現れ黒龍との相対を望んだ時、伝説は始まる
第二話~黒龍とカグヤ~
カグヤは目の前に居る黒龍を見て笑顔を浮かべていた。暇潰しのつもりでイベントをこなし、ゴブリンと戯れようと思っていたカグヤにとって目の前の存在は自身の今の力を試すのに充分な存在だった。
「貴様が我の敵か」
黒龍は空中に浮かびながらそう言った。全身を漆黒とも呼べる鱗を纏い、全てを見抜くような眼でカグヤをみていた。
「そう…私は敵」
カグヤはそれだけしか言わず、黙って自身の武器である小さな金槌を構え、黒龍を見つめた。
「そうか…なら、今ここで死ぬがいい!」
そう言い放つと同時に黒龍は口から漆黒のレーザーをカグヤ目掛けて放つ。それは地面を刳り出し、辺りに災厄を齎すと呼ばれているブレスであった。
「邪魔…」
だが、カグヤはそれを蚊を叩き潰す様に金槌を一振りで吹き飛ばす。
「手加減は…よくない」
金槌とブレスの衝突でカグヤの前髪が綺麗に別れその真紅の細い眼が現れる。その右眼には六芒星の魔方陣が浮かび上がっていた。
「……貴様は怖くないのか。ここで死んだら貴様は本当に死ぬのだぞ」
「怖くない…私が恐いのは……この世界を楽しめない事」
黒龍の問いにカグヤは即答した。死ぬのは怖くない、怖いのは自身が快楽に恐れを抱く事だと。
「そうか…なら、遊びは終わりだ!」
黒龍が一括すると同時にそれは起きた。黒龍から溢れ出る魔力が雲を漆黒に染め上げ、雷が降り注ぐ。その巨大な翼は羽ばたく毎に嵐の様な風を生み出し、カグヤに襲いかかる。
カグヤはそれを同じように金槌で凪払おうとするが無理だと判断し、金槌を下に向けて振り下ろしスキル名を念じる。
ハンマーアタック大
その刹那、ブレスを薙ぎ払った衝撃波が地面にぶち当たりカグヤを空高く打ち上げる。その数コンマ遅れて黒龍のブレスがカグヤの居た場所を消滅させる。
コズミックハンマー
素早く空中技であるスキル名を念じて空中を叩き迫り来る暴風やブレスの合間を掻い潜り黒龍を肉薄にしていく。
カグヤはエターナルエデンでの感覚を思い出す。飛行スキルや魔法が無くても少しの応用で空を飛べる事をカグヤは知っていた。その結果、愛しいペット達を手懐けたり、色々な人と戦い勝利してきた。失ったモノが再び戻って来た事にカグヤは喜びを感じ、何より目の前の強敵に感謝した。
自動パッシブスキル『勝者を暗殺する者』発動
自動パッシブスキル『種を滅ぼしし者』発動
スライム達を毒の罠により皆殺しにし、蠱毒の様に死にかけたスライム達が集まった存在すら毒で殺したカグヤにとってこの戦いが始めての実戦であり、感覚を思い出す為の戦いであった。
一方は六天龍の一角を務めし最強の龍。もう一方は初日スライム三万匹以上を毒殺し、運営から警告文、GMからは特殊称号を与えられし無自覚な廃人。
今ここに本当の黒龍伝説が幕を開けた。
緊急クエスト発生
破滅と創生の黒龍カラミット襲来
参加プレイヤー
カグヤ
クエストクリア条件
カラミットの撃破又は撃退
クエスト難易度Lunatic
クエストクリア報酬
黒真珠の契約石
ソロ単独報酬
???
撃退報酬
黒龍の涙
賢者の石
討伐報酬
黒龍の素材
黒龍の卵
称号『災厄を救いし者』
称号『創生を滅ぼす者』