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追い風  作者: 無名
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追い風

川の音が響きながら鳥のさえずりと共に太陽がベンチに日影を作る

そこに一つの影(とく)が風に流されるように歩き


「......はぁ、」


ため息だけが静かに流される

奥から太陽に照らされた人間が2人いや1人追い風の中歩いている


「太陽に2人照らされてるが比喩として殊勝なことしてんのは1人かもな」


と風に流されている1人の男(とく)が呟いた


「いやぁ助かるよ」


「ここまでありがとうねぇ」


と荷物を持ってもらっていた老婆が太陽に照らされた人間に軽く頭を下げて言った


男が荷物を老婆に返し振り返らずに歩いていく追い風に向かって


風に流される男(とく)が頭をかきながら呟いた


「ああやってペットボトルは完成する」

「他人と干渉し社会的ラベルを貼っていく」

「結局飲まれるだけ、飲まれてあとは捨てられるだけ」

「.......」


風に流されるような影(とく)と太陽に照らされた2人の男がすれ違う

風に流されながら歩く男の肩に一つの手が乗り言われる


「兄ちゃん、財布落としたぞ」


風に流される男(とく)が止まり振り返った風に逆らった瞬間だった

財布を受け取り言った


「どうも」

「...........」

「さっきも婆さん助けてましたよね」

「頼まれたんですか?」


川を見ながら男が


「頼まれてなんかない」


と言った


するととくがため息をつきながら言った


「.....はぁ」

「じゃなぜ?随分お人好なんだな」


男が歩き出して


「そんなことはどうだっていい、ただ俺の中のルールを守っただけよ」


と言い

振り返らずに手だけ軽く振った


とくが舌打ちした


「...チッ」

「そうかよ、名前は?」


男が振り返らずにつぶやいた


「れん」


とくが少し笑いながら言った


「まぁ飲まれるだけ飲まれてみな飲まれた後の自分の中身のなさに気づくのも束の間さ」


カバンに入っていたペットボトルを取り出し飲み干してゴミ箱に投げ捨てた


不穏な雰囲気が漂うアパートの一室のドアが不愉快な音で開き

とくが靴を揃えずにすぐさま軋んだ椅子に座る

ノートを書く音だけが部屋に響く


「レンとか言った奴は

そんなことどうでもいい俺のルールを守っただけとか抜かしていたが、どうでもいいのになぜ他人を助けると言うことがルールに入っている?

どうでもいいなんて言葉を言い切れる訳がない。

どうでもいい奴らが入っているルールに従っているうちは振り切れていない消耗されるだけだ。」


と思考に追いついていない手がそうと短い時間だけ動いた。


風が窓に当たる音が薄暗い日差しと共に部屋に集まると


「ブー、ブー、ブー、ブー、」


突然とくの携帯の振動がベッドに伝わる

とくが寝転んだまま電話を切る


「プー、プー、」


が携帯は鳴り続ける


「......うるせぇな、」


「..もしもし」


とくと電話の隙間から声が漏れる


「もしもし、とくだよな?お前の両親の遺産だが」


「俺たちが貰うことになった。金に困ってんだ」


とくが軋む椅子に座りながら窓を見て言った


「...寝言は寝て言えよ、お前に選ぶ資格はないし譲る義理もねぇよ」


とくの耳と電話の隙間から聞こえる声が大きくなる


「俺たちいとこの関係だろ?困った時は助け合えってお前の両親も言ってただろ?」


とくが足を組んで言った


「だれも、狼から逃げてる羊が狼から逃げてることに困ってて狼に助けを乞う訳があるかよ」


携帯から聞こえる音質の悪いため息と共に声が漏れる


「......はぁ」


「とりあえず話し合いたいからあの川の前のベンチで集合な明日」


「プー、プー、」


とだけ残して電話が切れる

とくが携帯をベッドにほっぽり投げてつぶやいた


「遺産なんていらないし、遺産にかぎつけてくる猫も拾うつもりはない」


「あの2人には申し訳ないが受け取るのも譲るのも真平御免被るよ」


カレンダーを破り次の日にするかのように次の日になる


ドアの不愉快な音がアパートに響く


鳥の囀りと共にベンチに日影があるような天気だ

奥に迫り来る夕焼けと曇天

とくが待ち合わせ場所のベンチに腰をかけ足を組むと足音がした1人とは言わない


「よう、いとこだぞ。」


影は一つではなかった

とくが座ったまま言う


「俺には殊勝なこと言ってるだけの獲物を囲んでいるハイエナにしか見えないな」

「なんで5人もいる。」


とくが立ち上がったその瞬間

1人の拳がとくの顎を捉えた


「...だろうな」


曇天が完全に空を囲った頃

意識が曇天のように曇る


「..........」


電柱だけが光る

今日は星が見えないいや、今日消えたのかもしれない

とくが重い瞼を開ける


「.......ハァ」


とくの荷物が懐に投げられる


1人の男がベンチに座って暗い川に反射した星のない空を見ながら言った


「...ほらよ」


「随分間抜けなツラだな」


とくが上体を起こし川を見ながら言った


「お前は随分殊勝なツラだな」

「...れんとか言ったけね」


れんがため息をつき立ち上がって言った


「......取られたもんはないようだな」


とくもそれに続き立ち上がって少し伸びて言った


「取られるもんもねぇや」


れんが歩き出して言った


「そうかよ、ペットボトルみたいに捨てられてたから拾ってやったよ」


れんが振り向かずに手を軽く振って聞いた


「お前名前はなんだっけ?聞いてなかったな」


とくの足音が暗闇に消えていきながら一言だけ言った


「とく」


れんが少し笑いながら言った


「......真似すんじゃねぇよ」


とくが歩き出し暗闇の中でしばらく続く足音

足音が一つ増えた


「トン、トン、トン、」


通り過ぎた足音が言った

1人の老婆だった


「......あの、兄ちゃんがあんたのこと必死に守ってたよぉ」


足音のリズムが少し変わった


「そうかよ、余計な世話だよ」


しばらく暗闇で足音が鳴った頃

ため息が暗闇の中で響く


「.....はぁ」

「貸を作るのは道理じゃねぇんだけどな、」

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