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生活のために働く。食う。寝る。休む。……書ける?

 令和2年卒の新社会人。初めての1人暮らし。初めての土地。私は自分にテーマを与えた。


 『生活を成り立たせる。かつ楽しむ』。


 小説のネタ探しという名目でいろいろと試す姿勢は健在だが、1人暮らしを成立させるのが最優先だ。家事洗濯、ゴミ出し、仕事、食事。衣食住をこなすのを前提に、行きたい場所に行き、食べたいものを食べる。小説を書く。優先順位を考えながら自分の楽しみを堪能しようと決めた。


 実際、日々の仕事を覚える中で創作活動の両立は至難だった。大学時代のアルバイトは所詮アルバイトだったと痛感した。


 未知の業界だったし、就職活動の成り行きで就いた仕事なので、とにかく勉強の日々だった。


 実務に必要な下地の知識を、業務時間内に勉強する余裕はあいにくなかった。


  業務時間は先輩の指導を受けて資料作成や電話対応を行い、休日に復習と勉強をする。日々の疲れは近所のスーパー銭湯とご飯で回復し、新しい1週間に備える。


 ケアレスミスや伝達ミスが多く、ほぼ毎日落ち込んでいた。1日でも早く戦力として貢献したい。そういう焦りもあった。


 1日を終え、1週間が経ち、1ヶ月が過ぎる。目まぐるしい毎日で、小説のネタを考える余裕がなくなってきた。そのことに危機感を覚えたのは言うまでもない。


 今までと違う立場になったのだから、むしろネタが浮かんでも良いはずだ。探せ。面白そうな題材や単語、身近な人物像はどこかにあるはずだ。探さなければ見つからない。探せ。


 やがてスマホのメモ帳に書くネタの量は増えてきた。しかし、どうもそそらない。


 自分で捻りだしておいて変な話だが、ネタはシーンの断片に過ぎず、物語の顛末が見えてこなくなった。それはきっと、ネタを強引に絞り出していたからだろう。


 自分の思考から創造が死んでいくような喪失感。


 プロットを書いても内なる刺激が訪れず、筆が進まない焦燥と虚無感。


 事務的なネタ作りがもたらしたのは、無味無臭創でお利口さんな創作活動だった。


 使命感から出力されたネタには、尖りがない。でも尖りって何だろう。私の持ち味って何だっただろう。そもそも持ち味と呼べる分野なんて持っていたか?思考がひたすらループした。


 ただ、私は仕事も創作も手を抜きたくなかった。どちらも同じ温度で、同じ質で進めていかないと、日々の生活も夢も瓦解する。もちろん、高校時代の反省を兼ねて、双方のバランスは心掛けた。そうやって自分を鼓舞することにも若干疲れたが、自分のエンジンを何度もかけ直した。


 社会人1年目は新人賞への投稿こそ見送ったものの、ネタ出しは継続した。就職活動中に使っていた短編執筆ツールも使い、物語を書くことは止めなかった。


 絞り切った雑巾をさらに絞るような所業の果てに、面白い作品が生まれるかどうか。それは分からない。だが、やらないうちは進んでいないからと自分に鞭を打った。


 社会人2年目も仕事は同じ部署だった。去年で1年の流れは理解できたので、どの時期が長編を書きやすいかは分かっていた。


 今しかない。就活中、未来の自分に時間と可能性を託したことを思い出す。私は再び、公募投稿に向き合った。


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