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回りかけの歯車

 大学1年の夏、長編小説を公募に初めて投稿した。ネタを構想してプロットを作り、初稿と推敲を済ませて出版社に郵送するまで半年かかった。


 書き終えたときは、程良い疲労感と達成感で満たされていた。今まで周囲の反応を恐れた上に、創作のアウトプットも細々と続けていた自分が、出版社に作品を投稿するという大前提に乗ることができた。投稿後は少しの間ゆっくりしていたけれど、やがて執筆意欲がむくむくと湧いてきて、次の準備に取りかかるまでは早かった。


 もちろん大学には通っていたし、アルバイトもしていた。貯金して1人旅に行くこともあった。いろいろな経験が創作活動の糧になると信じて、なるべく予定を入れ込んだ。2ヶ月に1回程度、何の予定もない休日がポツンと入ると、部屋でダラダラしていた。


 公募は4次審査まであって、1次審査は翌年の7月に公表される。結果が分かるまではやきもきしていても仕方ないので、次作に時間を費やした。


 加えて、創作活動を通して興味関心の幅が広がったように思う。


 登場人物の服装が私の主観や嗜好に寄らないように、服の種類やトレンドを調べた。リアルな描写を書くために、実地を歩く前に事前知識を仕入れたり、アルバイト先の塾で授業終わりに小学生と雑談して最近の流行や楽しみを教えてもらったり、昔なら考えられないくらい人との交流にゆとりが生まれた。


 今思えば黒歴史の出来事でも、当時の私にとっては『ネタにできるかどうか』という視点が最優先されていた。


 数ある黒歴史エピソードからいくつか紹介しよう。


 アルバイト先の塾の同期で、前から気になっていた人に告白したら速攻フラれて、後日その恋人が同じバイトの先輩だと知ったり、大学の授業中に『もってけ!セーラー服』の冒頭を流してしまったり、弁当バイト中に後輩のお尻を不注意で鷲掴みしてしまったり(柔らかかった)、腐りかけたモヤシを「もったいない!」と我慢して食べた結果お腹を壊して、日暮里駅のトイレで籠城し、清掃員さんから「長ぇな……」と舌打ちされたり、郵便局で小説の原稿を入れた封筒を落として周囲の人に拾ってもらったり、数え始めたら枚挙にいとまがない。


 でも、間違いや恥ずかしさに尻込みしないで行動できるようになったのは結果的に良かった。その姿勢は創作だけでなく、日々の生活にも活かされることとなった。


 時折、大学ノートの『小説家デビュー計画』を読み返しながら、「本当に計画どおりいけるんじゃないか」と夢想した。何度、受賞を告げる電話を取って心臓が高鳴るビジョンを見たことか!そして目が覚めると、1次審査公表を堂々と待ち構えていた。


 ジャンルに囚われず、いろんな物語を書きたかったので、小説も幅広く読み漁った。秋葉原のブックオフはだいたい2時間近くウロウロし、複数の本を並行して読む日々を続けていた。


 作曲家を目指す友人とは連絡を取り合っていたが、試し読みは依頼しなかった。忙しそうにしていたのを知っていたし、何より『自分の作品』に対する自己評価が高すぎた。今振り返ると、恥ずかしいくらいに自信を持っていた。


 きたるべき将来に、真っ直ぐで見晴らしの良いレールが見えていたのは、心地良い感覚だった。


 新人賞の1次審査は7月に公表される。1つの賞にしか投稿していなかったので、7月は1人で受験以上の緊張感に浸っていた。


 結果発表当日、出版社の新人賞サイトを何度もリロードした。お昼を回ったとき、ページの再更新で結果発表一覧のタブが表示されて、迷わずにチェックした。

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