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嘘つきは嘘の中に本物を練り込み、嘘に溶かす

 高校2年の進路調査アンケートを前に、脳内で3つの選択肢を提示する。


1.ぐしゃぐしゃにして捨てていったんなかったことにする。

2.適当に書いて今後の展望を後回しにする。

3.小説家になりたい思いの丈を担任の先生や母に話す。


 迷わず「2」である。「3」を選ぶには実力と実績が必要だ、と当時は一丁前に考えていたので、小説執筆の専門学校に通う選択肢がなかった。加えて、本当につまらないこだわりだが、大学在学中に受賞する方がイカしていると思っていた。『小説家デビュー計画』においてもそういう算段だった。


 ただし、大学進学にあたっては学びたい分野や将来就きたい仕事を公言する必要があって、小説家の代わりを考えなければならなかった。大学に行かずとも、高卒で就職する選択肢も十分にあったからだ。


 結局、高校進学の二の舞を見事に演じることとなった。私にとって、創作活動を他者に告白することは、片想いの相手を打ち明けるのと同じくらい恥ずかしい告白だったのだ。


 どうしてとことん秘密主義なのかと考えると、単純に自信がないだけである。そのくせ頑固で、思いを曲げたくなかったから、本心を隠して偽りに身を染め続けた。


 だからなのか、我ながら一筋縄ではいかなかったのは、本心と真逆の選択を続けているのに、それでもなお一度決めたことを成し遂げようとしてきたことである。矛盾を矛盾として受け止めながら、私は静かに、しかし強引に走り続けた。


 一方で、高校退学というレッテルが1年経ってようやく重みを主張し始めた。退学になって気持ち晴れやかだった頃の自分が馬鹿らしい。というか、馬鹿そのものだった。


 時間の経過が、自省をもたらしたのだ。自分が何をしてしまったのか。母を悲しませ、部活動の顧問を幻滅させ、仲間に迷惑をかけて、自分の経歴に泥を塗ったのか。


 誰かに責め立てられたわけではない。大学進学を前に己を振り返り、改めて痛感したのだ。


 部活動を中途半端に辞め、勉強も運動もとりわけ秀でているわけではない。創作活動を話す気もない。しかしセンスもない。自分のステータスからあらゆる情報を引き算したとき、私は当然ながら何者でもなかった。


 ただ、執筆活動を通して、『書く』という行為に魅力を感じたのは収穫だった。


 執筆活動を公表せず、書くことを生業とする仕事を挙げるとして、何があるだろう。


 熟考の末、小説家の代わりに将来やりたい仕事として掲げたのは、新聞記者だった。大学も政治経済系の学部を希望した。


 小説家として働きたいはずなのに、私は偽りの仮面を被り続けた。創作活動を隠す選択をしたというよりも、隠すのが当たり前だった。ただ、私の嘘はその場限りではなく、気持ちを込めて取り組むからタチが悪い。


 毎朝、新聞の政治経済面と国際面をチェックし、自分の意見を組み立てる練習をした。塾に行き、蓄えた知識と月並みな意見を小論文に捲し立て、先生に添削してもらった。拭えない退学歴を少しでもぼかしたくて、英検2級や漢検2級を始め、いろいろな資格を取った。


 センター試験で合格した大学に進学した私は、大義名分をあっさり捨てて創作活動を再開する。


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