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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第40話 対話 ― 二人の王

王が向き合う時、必ずしも剣は必要ない。

力を誇るためでも、勝敗を決めるためでもなく、

ただ――

理解するために、向き合う瞬間がある。

風を憎んだ王と、風に寄り添う王。

二つの道は、まだ交わってはいない。

だが、

この対話は、確かに世界を変える第一歩だった。

無風の地。

廃れた石造りの見張り塔。


そこは、

帝国でもなく、

風無き王国でもない。


ただの境界。


アリアは、

一人で塔の前に立っていた。


武器は持たない。

風も呼ばない。


約束されたのは、

言葉だけ。


やがて。


反対側から、

一人の男が現れる。


黒衣。

仮面は外され、

素顔がさらされている。


カイロス。


二人の王は、

数歩の距離を残して立ち止まった。


長い沈黙。


最初に口を開いたのは、

カイロスだった。


カイロス

「……なぜ、

 ここへ来た。」


アリア

「……あなたが……

 見ていたから。」


カイロスの眉が、

わずかに動く。


カイロス

「罠かもしれない。」


アリア

「……うん。」


アリア

「でも……

 それでも……

 話したかった。」


風は、

吹かない。


だが、

空気は張り詰めていた。


カイロス

「……風がない場所で、

 人を救ったそうだな。」


アリア

「……一緒に……

 やっただけ。」


カイロス

「それは、

 王のすることではない。」


アリア

「……王だから……

 やった。」


沈黙。


カイロス

「風は、

 多くを奪った。」


カイロス

「公平に。

 無差別に。」


アリア

「……うん。」


アリア

「だから……

 風だけに……

 任せちゃ……

 いけない。」


カイロス

「……ならば、

 なぜ否定しない。」


アリア

「……否定したら……

 風は……

 誰も……

 慰められない。」


カイロスの視線が、

揺れる。


カイロス

「……慰め……

 だと?」


アリア

「……泣いてるのは……

 人だけじゃ……

 ないから。」


カイロス

「……風が……

 泣く……?」


アリア

「……うん。」


アリア

「……傷つけられた時……

 迷った時……

 風も……

 泣く。」


カイロス

「……くだらない。」


だが、

その声は、

以前ほど硬くなかった。


カイロス

「……だが。」


カイロス

「お前は、

 風を使わずとも、

 人を救った。」


アリア

「……うん。」


カイロス

「ならば……

 王は……

 力など……

 不要ではないか。」


アリアは、

首を振った。


アリア

「……力は……

 必要。」


アリア

「……でも……

 主役じゃない。」


アリア

「……人が……

 人を……

 見捨てないための……

 “余白”。」


沈黙が、

塔の中に落ちる。


カイロスは、

目を伏せた。


カイロス

「……私の国は……

 力を……

 恐れすぎた。」


アリア

「……恐れるのは……

 悪くない。」


アリア

「……でも……

 一人で……

 抱えちゃ……

 だめ。」


カイロス

「……私は……

 王だ。」


アリア

「……私も。」


二人の視線が、

初めて、

真正面で交わる。


カイロス

「……すぐには、

 答えは出ない。」


アリア

「……うん。」


アリア

「……それで……

 いい。」


その瞬間。


ほんの一瞬。


無風の地に、

微かな空気の揺れが生まれた。


風ではない。


だが、

確かに――

“対話が生んだ余白”だった。


カイロスは、

一歩、後ろへ下がる。


カイロス

「……戦争は……

 続く。」


アリア

「……うん。」


カイロス

「だが……

 次は……

 違う形だ。」


アリア

「……待ってる。」


二人は、

背を向けた。


剣を交えず、

勝敗も決めず。


だが、

この対話は、

確かに――

世界の歯車を、

一つ、

ずらした。

・アリアとカイロスの初の直接対話。

・力と否定ではなく「余白」という第三の価値観。

・両者が互いを“敵”だけで見なくなる転換点。

・戦争が思想戦へと完全に移行。

が描かれました。

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