第四章:風災編 第37話 原点 ― 風と出会った日
答えを探す時、人は前へ進もうとする。
だが、
本当に必要な答えは、
たいてい――
最初に立っていた場所にある。
王になる前。
戦場に立つ前。
誰かを救うと決める前。
風は、
その日のことを、決して忘れていなかった。
夜明け後。
前線野営地の外れ。
アリアは、
一人で歩いていた。
風は、
ほとんど感じられない。
だが、
完全な無音でもない。
胸の奥で、
かすかな記憶が、
揺れていた。
アリア
(……風と……
最初に……
会った日のこと……。)
視界が、
ゆっくりと滲む。
***
それは、
まだ王でも、
戦士でもなかった頃。
小さな村。
トーレン。
山と草原に囲まれた、
風の通り道にある村だった。
幼いアリアは、
村外れの丘に座っていた。
膝を抱え、
泣いていた。
理由は、
覚えていない。
ただ、
胸が苦しくて、
世界が怖かった。
アリア(幼)
「……やだ……
こわい……。」
その時。
風が、
吹いた。
強くも、
荒くもない。
頬をなでるような、
やさしい風。
アリア(幼)
「……?」
涙が、
風にさらわれる。
不思議と、
泣き声が、
止まった。
アリア(幼)
「……あなた……
だれ……?」
風は、
答えなかった。
ただ、
丘の草を揺らし、
空へ向かって流れていく。
アリア(幼)
「……いかないで……。」
思わず、
手を伸ばす。
その瞬間。
風が、
一瞬だけ、
戻った。
幼い手のひらに、
確かな“温度”を残して。
アリア(幼)
「……あったかい……。」
それが、
最初だった。
風は、
命令されなかった。
選ばれもしなかった。
ただ、
そこにいて、
寄り添った。
***
現在。
アリアは、
静かに目を開けた。
アリア
「……そうだ。」
アリア
「……私は……
風を……
使ったことなんて……
一度も……
なかった。」
エリオンが、
後ろから声をかける。
エリオン
「答えが、
見えたか。」
アリア
「……うん。」
アリア
「風がなくても……
人は……
人に寄り添える。」
アリア
「でも……
風があれば……
もっと……
寄り添える。」
エリオンは、
静かに頷いた。
エリオン
「否定でも、
依存でもない……
共存か。」
アリア
「……うん。」
アリアは、
空を見上げる。
まだ、
風は戻らない。
だが、
恐れはなかった。
アリア
「……カイロスに……
答える。」
エリオン
「どうやって。」
アリア
「……行動で。」
その瞬間。
ほんの一筋、
風が、
頬をかすめた。
気のせいか。
それとも――
風は、
もう一度、
“最初の日”を
思い出させたのかもしれなかった。
・アリアと風の原点となる幼少期の記憶。
・「風を使う王」ではなく「風と共にある人」という定義。
・カイロスの問いに対する、思想的な答えの核。
・次の行動への決意。
が描かれました。




