第四章:風災編 第29話 戦場の選択 ― 王と命令
戦場では、迷いは死に直結する。
軍には命令があり、王には直感がある。
どちらも正しい。
どちらも危険だ。
二つが噛み合わなければ、守れる命も、救える未来も、簡単に零れ落ちる。
王が軍と並び立つ時、最初に試されるのは――
力ではなく、選択だった。
北方前線。
旋風は、
なおも荒れ狂っていた。
瓦礫が舞い、
地面が引き裂かれる。
帝国兵たちは、
防陣を維持しながら、
必死に耐えている。
指揮官
「前衛、下がるな!!
陣形を崩すな!!」
軍令が飛ぶ。
だが、
アリアの視線は、
別の場所を見ていた。
アリア
(……あそこ。)
旋風の中心ではない。
少し外れた地点。
風が、
異様に歪んでいる。
アリア
「……あの場所……
風が……
“命令を待ってる”。」
エリオン
「命令……?」
アリア
「うん。
壊せって言われるのを……
待ってる風。」
セレスタが、
馬上から叫ぶ。
セレスタ
「王よ。
前に出るな。」
アリア
「……でも。」
セレスタ
「軍令は、
旋風の中心制圧だ。」
アリアは、
一瞬、
拳を握った。
アリア
(……中心を潰しても……
また……
生まれる。)
アリア
(……命令を出してる“人”を……
止めないと……。)
ロウガ
「アリア。
どうする。」
アリアは、
深く息を吸った。
アリア
「……セレスタ。」
セレスタ
「何だ。」
アリア
「……中心じゃない。」
セレスタ
「……理由を。」
アリア
「旋風は……
“作られてる”。」
アリア
「風が……
誰かの意志を……
待ってる。」
セレスタの目が、
細くなる。
セレスタ
「……つまり。」
アリア
「命令者が……
別にいる。」
一瞬の沈黙。
砲撃音。
悲鳴。
時間はない。
セレスタ
「……全軍。」
セレスタ
「王の指摘地点へ、
第二小隊を向かわせる。」
指揮官
「将軍!?
軍令を変更するのですか!?」
セレスタ
「責任は、
私が取る。」
兵たちが動く。
第二小隊が、
旋風の外縁へ向かう。
その瞬間。
隠れていた人影が、
風除け符を剥がした。
反風主義派
「……見つかったか。」
ロウガ
「やっぱりだ!!」
アリア
「……お願い。」
アリア
「風を……
解放させて。」
反風主義派の男が、
叫ぶ。
反風主義派
「王がいる限り、
風は……
人を狂わせる!!」
アリア
「……違う。」
アリア
「狂わせたのは……
恐れだよ。」
アリアは、
一歩、
男の前に出た。
アリア
「……命令を……
やめて。」
男
「黙れ!!」
男が符を掲げた瞬間。
風が、
止まった。
完全な静寂。
兵たちが、
息を呑む。
アリア
「……風は……
命令されなくても……
流れる。」
アリア
「……誰かを壊すために……
流れる必要は……
ない。」
王風が、
ゆっくりと広がる。
旋風が、
軸を失い、
崩れ始めた。
兵
「……風が……
ほどけていく……!」
反風主義派の男は、
膝をついた。
男
「……なぜ……
命令が……
通らない……。」
アリア
「……命令より……
“対話”を選んだから。」
旋風は、
完全に消えた。
戦場に、
静けさが戻る。
セレスタは、
深く息を吐いた。
セレスタ
「……王よ。」
アリア
「……何?」
セレスタ
「今の判断は、
軍令違反だ。」
アリア
「……うん。」
セレスタ
「だが……
正しかった。」
兵たちの視線が、
アリアへ向く。
恐れではない。
信頼でもない。
“理解しようとする目”。
アリアは、
その視線を受け止めた。
アリア
「……私は……
命令しない王でいたい。」
セレスタ
「……難しい道だ。」
アリア
「……でも……
風が……
それを望んでる。」
戦場は、
再び動き始める。
だが、
その中心には、
確かに――
新しい“王の在り方”があった。
・軍令と王の直感の衝突。
・旋風が“意図的に作られていた”事実。
・アリアの判断による戦場の転換。
・セレスタが王の判断を受け入れる瞬間。
・兵たちの視線が変わり始める描写。
が描かれました。




