第四章:風災編 第28話 前線へ ― 風王、帝国軍と行く
前線とは、境界線のことではない。
そこは、
命が押し合い、恐れが形を持ち、判断が一瞬遅れただけで、多くが失われる場所だ。
王が軍と行くということは、守られる存在ではなく、
“結果を背負う存在”になるということ。
アリアは、その覚悟を持って、帝国軍の列に加わった。
帝都北門。
重装歩兵の列が、
朝霧の中で整列していた。
軍旗が風を切り、
装甲が鈍く鳴る。
帝国北方遠征軍。
風災対応と、
境界安定化を名目とした部隊。
セレスタは、
白銀の外套を翻し、
指揮台に立っていた。
セレスタ
「これより、
北方前線へ進軍する。」
セレスタ
「任務は二つ。」
セレスタ
「第一。
暴走する風脈の鎮静。」
セレスタ
「第二。
風災に乗じて動く、
不穏分子の排除。」
兵たち
「了解!!」
その列の中に、
アリアの姿があった。
簡素な外套。
武器は持たない。
だが、
兵たちは視線を向ける。
兵A
「……あれが……
風哭の王……。」
兵B
「子どもじゃないか……。」
兵C
「でも……
西方を救った……。」
アリアは、
静かに前を見ていた。
エリオン
「……完全に、
戦場の顔だな。」
ロウガ
「背中、
任せていいんだよな。」
アリア
「……うん。」
アリア
「でも、
私は命令しない。」
ロウガ
「は?」
アリア
「軍を動かすのは、
セレスタ。」
アリア
「私は……
“風を見る”。」
ゼフィール
「最前線の観測者か。」
アリア
「……うん。」
進軍が始まる。
舗装路を抜け、
荒れ地へ。
風が荒くなり、
砂が舞う。
アルフレッド
「風圧が……
不規則です。」
ゼフィール
「自然災害ではない。」
セレスタが、
アリアの隣へ馬を寄せる。
セレスタ
「見えるか。」
アリア
「……うん。」
アリア
「風が……
“押されてる”。」
セレスタ
「何に。」
アリア
「……人の意思に。」
その時。
前方の空が、
歪んだ。
轟音。
土砂が舞い、
地面が裂ける。
兵
「前方!!
風災発生!!」
巨大な旋風柱が、
地面から立ち上がる。
家屋の残骸。
岩塊。
鉄片。
すべてを巻き上げる。
セレスタ
「防陣を敷け!!
前衛、結界展開!!」
兵たちが動く。
だが、
風は止まらない。
アリア
(……違う。)
アリア
(これは……
“壊そうとしてる風”。)
アリアは、
一歩、前へ出た。
エリオン
「アリア!!」
アリア
「……大丈夫。」
アリアは、
目を閉じる。
風哭の王風が、
彼女の周囲で、
低く鳴る。
アリア
「……誰が……
こんなこと……。」
風が、
答えを運ぶ。
断片的な、
歪んだ意思。
『……王……
要らない……』
アリアの胸が、
強く脈打った。
アリア
「……また……
“王を拒む風”……。」
旋風の奥で、
人影が見えた。
黒布。
風避け符。
ロウガ
「……反風主義派!!」
セレスタ
「全軍、警戒!!
これは災害ではない!!」
アリアは、
両手を広げた。
アリア
「……止める。」
セレスタ
「一人でか。」
アリア
「……一人じゃない。」
兵たちの列。
セレスタ。
仲間たち。
そして、
風そのもの。
アリア
「……風。
もう……
誰かを傷つけるために、
泣かなくていい。」
王風が、
大きく脈動する。
旋風が、
一瞬、
揺らいだ。
兵たちが、
その光景を見つめる。
ここが、
戦場だ。
だが、
剣よりも先に、
王が立っていた。
・アリアが正式に帝国軍と行動開始。
・前線における王の立場の明確化。
・自然災害ではない“意図的な風災”の発覚。
・反風主義派の再登場。
・軍と王が同時に動く戦記フェーズへの突入。
が描かれました。




