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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第25話 西方風災 ― 崩れる都市

災害は、敵ではない。

それは、怒りでも、悪意でもない。

ただ――

壊れた均衡が、音を立てて崩れるだけだ。

帝国西方。

風脈が絡まり、街が息を失いかけている。

王は、その中心へ向かう。

誰かを裁くためではなく、誰かを救うために。

帝国西方。

都市ヴァル=グラード。


高い城壁の内側で、

空が裂けるように渦を巻いていた。


暴風。

上昇気流。

逆流する風脈。


建物の屋根が剥がれ、

石畳がめくれ上がる。


市民

「逃げろ!!

 風が……風が止まらない!!」


別の市民

「子どもが!!

 誰か……!!」


帝国兵

「隊列を保て!!

 結界が……持たない!!」


アリア一行が到着した瞬間、

風が悲鳴を上げた。


アリア

(……苦しい……。

 この風……

 絡まって……

 どこへ行けばいいか……

 わからなくなってる……。)


セレスタ

「見えるか。」


アリア

「うん。

 風脈が……

 都市の下で、

 結び目になってる。」


アルフレッド

「複数の風脈が、

 無理に統合され……

 破裂寸前です。」


ゼフィール

「帝国の管理風術だな。

 効率化のために、

 流れを一本化した。」


ロウガ

「それで……

 詰まったってわけか。」


風が、

泣き叫ぶ。


アリア

「……この風……

 “怒って”ない。

 ただ……

 苦しくて……

 助けを求めてる。」


セレスタ

「王よ。

 何ができる。」


アリアは、

一歩、前へ出た。


アリア

「……ほどく。」


エリオン

「ほどく?」


アリア

「絡まった風を……

 元の道へ返す。」


アリアは、

両手を広げた。


風哭の王風が、

彼女の周囲で、

ゆっくりと回り始める。


泣き声のような、

低い共鳴。


アリア

「大丈夫……。

 もう……

 泣かなくていい……。」


その声に、

暴風の一部が、

一瞬、弱まった。


帝国兵

「風が……

 静まって……?」


だが、

次の瞬間。


都市中央の塔が、

大きく傾いた。


ロウガ

「アリア!!

 塔が!!」


アリア

「……わかってる。」


アリアは、

風へ語りかける。


アリア

「……全部、

 一気にほどこうとしないで。」


アリア

「……一つずつ。

 元いた場所へ……

 帰ろう。」


風が、

戸惑うように揺れた。


そして――

一本の風脈が、

そっと、

流れを変えた。


アルフレッド

「……成功している……。

 風脈が……

 再分岐している……!」


だが、

負荷は大きかった。


アリアの足が、

わずかにふらつく。


エリオン

「アリア……!」


セレスタ

「無理をするな。」


アリア

「……まだ……

 終わってない……。」


その時。


瓦礫の下から、

子どもの泣き声が聞こえた。


子ども

「……おかあ……

 こわい……。」


風が、

その声を運ぶ。


アリアの胸が、

強く締め付けられた。


アリア

「……ごめんね。」


アリアは、

風の一部を、

自分の背へ引き寄せた。


風哭の王風が、

一瞬、

強く鳴った。


アリア

「……この子だけ……

 先に……守る。」


次の瞬間。


子どもの周囲の風が、

やさしく包み込み、

瓦礫を浮かせた。


帝国兵

「救助成功!!」


市民

「……王が……

 王が……

 助けた……。」


アリアは、

息を荒くしながらも、

再び風へ向き直る。


アリア

「……まだ……

 泣いてる風が……

 たくさんいる……。」


セレスタは、

その背中を見つめた。


セレスタ

「……帝国は、

 この光景を、

 忘れないだろう。」


風は、

まだ荒れている。


だが――

確かに、

崩れは止まり始めていた。


王は、

災害の中心に立ち、

剣ではなく、

“対話”で、

都市を救おうとしていた。

・帝国西方都市ヴァル=グラードの風災害。

・管理された風脈が生んだ破綻。

・アリアが風を「鎮める」のではなく「ほどく」選択。

・一人の命を優先する王の判断。

・帝国兵と市民が目撃する“王の姿”。

が描かれました。

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