第四章:風災編 第24話 波紋 ― 王風が揺らす帝都
風は、音もなく広がる。
一度流れを変えれば、その影響は、人の心にまで及ぶ。
帝都地下で起きた出来事は、小さな解放にすぎなかった。
だがその一歩は、石で固められた帝国の秩序に、確かな亀裂を入れた。
王は、戦場に立たずとも、世界を揺らす。
翌朝。
帝都は、
いつもと同じように目を覚ました。
市場は開き、
兵は巡回し、
鐘は正確に時を告げる。
だが、
風だけが違っていた。
市民A
「……なんだ……
今朝の風……
少し……軽くないか……?」
市民B
「気のせいだろ。
帝都の風は、
ずっとこんなもんだ。」
だが、
確かに変化はあった。
地下から、
ほんのわずかな風が、
地上へ漏れ始めていた。
***
皇城。
円卓会議室。
重臣たちが集まり、
緊張した空気が張り詰めている。
重臣
「地下封風施設に異常が発生しました。」
別の重臣
「誰の許可で調査を……!」
セレスタ
「……私の判断です。」
ざわめき。
セレスタ
「風哭の王が、
危険行動を取ったのではありません。」
セレスタ
「“危険な思想”が、
すでに地下に存在していた。」
学術院代表
「だが、
封風施設は帝国の安全保障だ。」
セレスタ
「安全の名で、
風を殺していたのなら、
それは安全ではない。」
一瞬の沈黙。
皇帝ガルディアスが、
ゆっくりと口を開く。
ガルディアス
「……王風は、
帝都を壊したか。」
誰も答えられない。
ガルディアス
「……否。」
ガルディアス
「帝都は、
まだ立っている。」
皇帝の視線が、
一同を射抜く。
ガルディアス
「だが、
立ち方を……
問われ始めている。」
***
同じ頃。
帝都外縁区。
石壁に囲まれた古い街区で、
人々が小声で語り合っていた。
市民C
「聞いたか……
風哭の王が……
地下の風を……
解放したって……。」
市民D
「王が……
帝国に刃を向けたのか……?」
市民E
「違う……
誰も死んでない……
ただ……
風が……戻っただけだ……。」
風が、
通りを抜ける。
ほんの一瞬、
誰かが目を閉じた。
***
アリアは、
皇城の一室で、
窓の外を眺めていた。
アリア
「……広がってる。」
エリオン
「何がだ。」
アリア
「私のしたことの……
“余波”。」
ゼフィール
「波紋は、
止められない。」
アルフレッド
「ですが……
制御はできます。」
ロウガ
「問題は……
帝国がどう出るかだな。」
その時。
扉が静かに開いた。
セレスタが入ってくる。
セレスタ
「……思った以上に、
早く広がっている。」
アリア
「怒ってる人も……
いる?」
セレスタ
「多い。」
アリア
「……それでも。」
アリアは、
窓の外の風を見つめた。
アリア
「泣けなかった風が、
少し……
息をできるようになった。」
セレスタ
「……それが、
帝国を変える可能性になる。」
アリア
「壊す可能性にも……?」
セレスタ
「ええ。」
セレスタ
「だからこそ、
帝国は……
あなたを手放さない。」
風が、
低く鳴いた。
アリア
「……私は、
檻には入らないよ。」
セレスタ
「知っている。」
セレスタ
「だから、
“試練”が用意される。」
エリオン
「試練?」
セレスタ
「王として、
帝国に“関われるか”を示す場。」
アリア
「……戦場?」
セレスタ
「……災害だ。」
一同が息を呑む。
セレスタ
「帝国西方。
風脈が完全に乱れ、
都市ひとつが、
消えかけている。」
アリアの胸で、
風哭の王風が、
強く震えた。
アリア
「……行く。」
セレスタ
「断る選択もある。」
アリア
「でも……
風が……
泣いてる。」
その言葉に、
セレスタは、
静かに頷いた。
セレスタ
「では――
それが、
帝国があなたを見る“次の目”になる。」
・封風施設解放の影響が帝都全体へ波及。
・帝国中枢の動揺と皇帝の判断。
・市民の間に生まれる評価と疑念。
・アリアが“波紋の中心”になっていく過程。
・次なる舞台として“帝国西方の風災害”が提示。
が描かれました。




