第四章:風災編 第22話 謁見 ― 皇帝ガルディアス
王と王が向き合う時。
そこに剣は要らない。
必要なのは、力をどう使うかという意志。
そして、その意志を最後まで貫く覚悟。
帝国皇帝ガルディアスは、数え切れぬほどの将と王を見てきた。
だが――
風に泣かれ、風に選ばれ、それでも人として立つ王は、まだ見たことがなかった。
謁見の間に、静かな嵐が生まれようとしていた。
皇城最奥。
謁見の間。
高い天井。
幾何学的に刻まれた風紋。
重厚な柱の向こうに、
白金の玉座が据えられている。
その玉座に座す男。
帝国皇帝――
ガルディアス・レグナス。
金色の瞳が、
ゆっくりとアリアを捉えた。
ガルディアス
「……近う。」
アリアは一歩前に進み、
深く礼をすることなく、
まっすぐに立った。
ロウガが息を呑む。
エリオンがわずかに緊張する。
だが、
ガルディアスは笑った。
ガルディアス
「よい。
王に頭を下げる王は、
好かぬ。」
謁見の間に、
微かなざわめきが走る。
貴族
「無礼だ……。」
ガルディアス
「黙れ。」
一言で、
空気が凍りついた。
ガルディアス
「風哭の王。
名を。」
アリア
「アリア。
ただの名前です。」
ガルディアス
「よい名だ。」
皇帝は玉座から立ち上がり、
階段を下りてくる。
その足取りに、
恐れはない。
ガルディアス
「聞こう。
その風で、
何を守るつもりだ。」
謁見の間が静まり返る。
アリアは、
一瞬だけ目を閉じた。
風が、
そっと背に触れる。
アリア
「……私の大切な人たちを。」
ざわめき。
貴族
「国ではないのか。」
司祭
「帝国でもないのか。」
アリア
「うん。
最初は、
そこから。」
ガルディアス
「それだけか。」
アリア
「それで、
十分だから。」
皇帝の口元が、
わずかに歪む。
ガルディアス
「欲はないのか。
国を。
民を。
覇権を。」
アリア
「欲しいなら、
守ると思う。
でも……
欲しいから守るんじゃない。」
ガルディアスは、
しばらく沈黙した。
そして、
低く笑った。
ガルディアス
「……面白い。」
ガルディアス
「多くの王は、
守ると言いながら、
支配を欲しがる。」
ガルディアス
「だが、お前は違う。」
皇帝は、
アリアの目を真正面から見据える。
ガルディアス
「問おう。
帝国が、
その“大切な者”の一部になりたいと願ったら。」
謁見の間の空気が、
張り詰める。
アリア
「……帝国が、
誰かを泣かせるなら、
私は断る。」
ガルディアス
「ほう。」
アリア
「でも……
一緒に守れるなら、
拒まない。」
風が、
静かに鳴いた。
セレスタが、
その音を聞き取った。
ガルディアス
「……条件付き、というわけか。」
アリア
「うん。
私は、
風を泣かせる国には、
与しない。」
ガルディアスは、
しばらく考え込み、
やがて大きく笑った。
ガルディアス
「よかろう。」
一同が息を呑む。
ガルディアス
「風哭の王アリア。
帝国は、
お前を敵としない。」
ガルディアス
「だが――
同盟でもない。」
アリア
「……中立?」
ガルディアス
「観察だ。」
皇帝は背を向け、
玉座へ戻る。
ガルディアス
「お前が、
どんな王になるのか。
この目で見極める。」
アリアは、
静かに頷いた。
アリア
「うん。
ちゃんと見て。」
ガルディアスは、
最後に一言、
低く告げた。
ガルディアス
「――もし、
その風が帝国を壊すなら。」
アリア
「……止めて。」
皇帝は、
一瞬だけ目を見開き、
そして笑った。
ガルディアス
「……いい覚悟だ。」
謁見は終わった。
だが、
帝国と風王の関係は、
ここから始まったのだ。
・皇帝ガルディアスとの正式謁見。
・「何を守るか」という核心の問い。
・アリアの価値観と王としての軸の提示。
・帝国との関係は敵でも同盟でもなく「観察」。
・セレスタと皇帝がアリアを“王として認め始める”描写。
が描かれました。




