第四章:風災編 第21話 帝都入城 ― 王を見る者たち
帝都は、帝国そのものだ。
石で築かれ、法で固められ、恐怖と秩序で均衡を保つ巨大な都市。
その中心に、いま“王”が足を踏み入れようとしている。
だが王を見る目は、決して一つではない。
忠誠の目。
計算の目。
疑念の目。
恐怖の目。
そして――
憎しみの目。
風はすでに、それらすべてを知っていた。
帝都正門。
巨大な城門が完全に開き、
人の流れが止まった。
市民。
兵士。
役人。
無数の視線が、
アリアへ向けられる。
ざわめきが、
低い波のように広がった。
市民A
「……本当に、
あの子が……王……?」
市民B
「風哭の王だ。
災いを呼ぶって……。」
市民C
「でも……
剣も構えてない……。」
アリアは背筋を伸ばし、
一歩ずつ進んだ。
アリア
(……見られてる。
期待も、
恐れも、
全部……。)
風哭の王風が、
静かに背中に寄り添う。
リード
「これより、
風哭の王アリア様を、
皇城へ案内する。」
号令が響き、
道の両脇に兵が並ぶ。
だがその整列は、
歓迎ではなく――
完全な警戒だった。
ロウガ
「……王様扱いってより、
危険物搬送だな。」
エリオン
「静かにしろ。」
皇城へ続く大通り。
左右には、
貴族の館。
学術院。
聖堂。
それぞれの建物から、
異なる風が吹き出していた。
ゼフィール
「……学者の風だ。
知りたがっている。」
アルフレッド
「聖堂からは……
拒絶と祈りが混ざった風……。」
アリア
「……憎しみもある。」
エリオン
「誰のだ。」
アリア
「“王という存在そのもの”に向けた……
古い憎しみ。」
皇城前広場に到着すると、
重厚な階段の上に、
数名の人物が並んでいた。
帝国貴族代表。
軍高官。
学術院長。
聖堂司祭。
そして――
白銀の羽を背負った将軍。
セレスタ。
セレスタは、
無言でアリアを見つめていた。
アリア
(……この人は……
ちゃんと“私”を見てる。)
学術院長
「これが……
風哭の王……。」
貴族
「幼すぎる。」
司祭
「神の秩序に反する風だ。」
その言葉に、
風がぴり、と鳴いた。
アリアは足を止め、
階段を見上げる。
アリア
「……私は、
帝国に挑みに来たわけじゃない。」
静寂が落ちた。
アリア
「でも……
試されるなら、
逃げない。」
司祭
「王とは、
神に選ばれる存在だ。」
アリア
「風に選ばれた。」
司祭
「それは、
神に反する。」
その瞬間、
風が大きく揺れた。
だが、
アリアは抑えた。
アリア
「反するかどうかは……
これからの行いで決まる。」
セレスタが一歩前に出る。
セレスタ
「……その通りだ。」
視線が集中する。
セレスタ
「王を裁く前に、
王の行いを見るべきだ。」
学術院長
「……将軍の言う通りかもしれんな。」
貴族たちが、
不満そうに沈黙する。
アリアは静かに息を吐いた。
アリア
(……ここは、
戦場じゃない。)
(……でも……
戦いより、
ずっと難しい。)
皇城の扉が、
ゆっくりと開いた。
アリアは、
その中へ足を踏み入れる。
無数の視線を背に受けながら。
・帝都入城。
・市民と権力者、それぞれの視線。
・学者、貴族、宗教者の反応。
・セレスタの明確な中立姿勢。
・アリアが“言葉で立つ王”であることの提示。
が描かれました。




