第四章:風災編 第20話 帝都への道 ― 王を迎える風、拒む風
王は、いつも歓迎されるわけではない。
その力が強ければ強いほど、人は恐れ、距離を取り、時に牙を向ける。
帝国の地を踏んだ瞬間から、アリアの風は変わった。
泣いている。
だが、それは悲しみだけではない。
“見られている”という緊張。
“測られている”という重圧。
帝都へ続く道は、すでに戦場だった。
帝国領内。
石畳の街道が、
まっすぐ帝都へと伸びている。
道の両脇には監視塔。
風読みの兵。
結界柱。
アルフレッド
「……完全に管理された風ですね。
自然の流れが、
すべて制御されています。」
ロウガ
「息が詰まるな。
風まで鎖に繋がれてやがる。」
アリアは黙って歩いていた。
アリア
(……この風。
怒ってる。
でも……諦めてもいる。)
エリオン
「アリア。
大丈夫か。」
アリア
「うん。
でも……
この国の風は、
“自由に吹くこと”を忘れてる。」
リード
「帝国は、
風を“力”として扱います。
管理し、
測り、
武器にする。」
ゼフィール
「王風とは、
真逆の思想だな。」
街道を進むにつれ、
人の数が増えていく。
市民たちは立ち止まり、
遠巻きに一行を見る。
囁き声。
視線。
恐れと好奇。
市民A
「……あれが……風王……?」
市民B
「災いを呼ぶって噂だぞ……。」
市民C
「でも……
思ったより……普通の子だ……。」
その言葉に、
風が小さく揺れた。
アリア
「……風が、
また泣いてる。」
エリオン
「どうしてだ。」
アリア
「“恐れられる痛み”。
“期待される重さ”。
どっちも……
風には重たい。」
突然、
前方の空気が張り詰めた。
帝国兵の部隊が道を塞ぐ。
指揮官
「風哭の王アリア。
帝都までの道程、
護衛を交代する。」
リード
「正使リードだ。
これは皇帝陛下の勅命による――」
指揮官
「承知している。
だが――
“監視”も兼ねる。」
ロウガ
「……露骨だな。」
アリアは一歩前に出た。
アリア
「いいよ。
見たいなら、
ちゃんと見て。」
指揮官が一瞬、言葉を失う。
指揮官
「……その余裕が、
帝国を揺るがすのだと、
理解しているか。」
アリア
「うん。
だからこそ、
隠れない。」
風が、
ほんのわずかに温度を変えた。
兵たちの間に、
ざわめきが走る。
ゼフィール
「……彼女は、
帝国が想定している
“王”じゃない。」
アルフレッド
「測れない力ほど、
国家は恐れますからね。」
再び歩き出す一行。
帝都の外壁が、
遠くに見え始める。
巨大な城壁。
幾重にも重なる風防結界。
空を覆うような圧。
アリアは立ち止まった。
アリア
「……帝都の風。
泣いてない。」
エリオン
「泣いてない?」
アリア
「うん。
“泣くことを許されてない”。」
ロウガ
「……それ、
一番ヤバいやつじゃねぇか。」
アリアは深く息を吸った。
アリア
「大丈夫。
泣けない風なら……
私が代わりに泣く。」
その言葉に、
風哭の王風が、
確かに応えた。
帝都の門が、
ゆっくりと開く。
王を迎える風と、
王を拒む風が、
真正面からぶつかり合っていた。
アリアは、
その境界へ足を踏み入れた。
・帝国領内の“管理された風”。
・市民たちの恐れと好奇の視線。
・護衛という名の監視。
・帝都が抱える“泣けない風”。
・アリアの覚悟の深化。
が描かれました。




