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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第19話 帝国境へ ― 白銀の風、再び

国境とは、線ではない。

それは意思だ。

誰を守り、誰を拒むか。

帝国の境界に近づくにつれ、風は重さを帯びていった。

その風の中に、アリアは懐かしくも鋭い気配を感じていた。

白銀の風。

斬るためではなく、見定めるための風。

帝国の刃が、再び姿を現そうとしていた。

帝国東部国境。

赤茶けた大地に、巨大な防風壁が連なっている。


人工的に整えられた風脈が、

境界線として空気の流れを分断していた。


ロウガ

「……でけぇ壁だな。

 風まで締め出してやがる。」


アルフレッド

「帝国の防風結界です。

 自然風と王風の侵入を抑制するための……

 かなり古い術式ですね。」


アリアは足を止めた。


アリア

「……この風。

 帝国のものじゃない。」


エリオン

「違う?」


アリア

「うん。

 もっと……澄んでて、

 冷たいけど、嘘がない。」


その瞬間だった。


風が、横から割り込んできた。


白銀の疾風。

一直線に走り、

地面にひとりの影を刻む。


セレスタ

「――久しぶりね。

 風王アリア。」


ロウガ

「……出たな。

 羽将軍。」


白銀の羽飾りが揺れ、

セレスタ・ヴァレリアが静かに立っていた。


エリオンは一歩前に出る。


エリオン

「今度は何の用だ。

 捕まえに来たのか。」


セレスタは首を振った。


セレスタ

「違う。

 ――警告に来た。」


アリア

「警告?」


セレスタ

「帝国内部が割れている。」


その言葉に、

一行の空気が張り詰める。


セレスタ

「黒風の狩人は壊滅した。

 だが、生き残りがいる。」


ゼフィール

「……帝国内部に?」


セレスタ

「ええ。

 彼らは“反風主義派”と手を組み始めている。」


アリアの胸がざわついた。


アリア

「……風を憎む者たちと……。」


セレスタ

「皇帝陛下はそれを快く思っていない。

 だが、全てを把握しているわけでもない。」


ロウガ

「つまり……

 帝国の中に、勝手に戦争始めようとしてる連中がいるってことか。」


セレスタ

「そういうこと。」


セレスタはアリアをまっすぐ見た。


セレスタ

「帝国に入れば、

 あなたは“客”であり、

 同時に“象徴”になる。」


アリア

「……狙われる。」


セレスタ

「ええ。

 特に、

 “王を恐れる者”と

 “王を否定したい者”から。」


風が低く鳴った。


アリア

「……それでも、行くよ。」


セレスタ

「迷いは?」


アリアは首を振った。


アリア

「ない。

 風が言ってる。

 “逃げたら、もっと泣く”って。」


セレスタは小さく息を吐いた。


セレスタ

「……あなたは、本当に王ね。」


エリオン

「セレスタ。

 あんたは、どっち側だ。」


セレスタは一瞬だけ視線を伏せ、

そして答えた。


セレスタ

「私は帝国の将軍。

 だが――

 帝国が間違えるなら、

 私は“帝国の刃”として、それを正す。」


アリアは静かに頷いた。


アリア

「じゃあ……

 一緒に進もう。」


セレスタ

「……正式な同行はできない。」


アリア

「わかってる。」


セレスタ

「だが、

 帝国境内で“偶然”再会することはあるかもしれない。」


その言葉に、

ロウガが苦笑した。


ロウガ

「便利な偶然だな。」


セレスタは微かに口元を緩め、

背を向けた。


セレスタ

「覚えておきなさい、アリア。」


セレスタ

「帝国は巨大な風車よ。

 正しく回れば恵みになる。

 だが、歯車が噛み合わなければ……

 人をすり潰す。」


白銀の風が再び吹き、

セレスタの姿は消えた。


残された一行の前で、

帝国境門がゆっくりと開き始める。


重く、

低い音を立てて。


アリアは一歩、踏み出した。


アリア

「……行こう。

 風がどこで泣いてるのか、

 ちゃんと確かめに。」


その背に、

風哭の王風が静かに寄り添った。


泣き声の名残を残しながら。

・帝国国境への到達。

・羽将軍セレスタとの再会。

・帝国内部の分裂と第三勢力の結託。

・アリアが“危険を承知で進む”決意を再確認。


という、

戦記としての緊張が一段階上がる回となりました。

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