第四章:風災編 第16話 帝国会議 ― 風哭の脅威
王が生まれたとき、
最初に動くのは“敵”ではない。
“国家”だ。
それは恐怖か、
期待か、
あるいは利用か。
どの国家も、
新たな力の誕生を見逃すことはできない。
ましてその力が
“世界の風脈を揺るがす特異王風”であるならば――
帝国は黙っていない。
彼らの動きは、
祝福でも脅威でもなく、
ただ“国家として当然の反応”。
アリアはまだ知らない。
この会議が、
大陸全体を巻き込む“風の戦記”の
第一歩であることを――。
帝国中心区――
黒曜宮。
大理石の床に、
巨大な風紋が刻まれた円卓が置かれ、
その周囲に帝国の重臣たちが集まっていた。
その中心に、
白金の玉座がある。
その玉座に座すのは、
帝国皇帝 ガルディアス・レグナス。
灰銀の髪、鋭い金色の瞳。
威圧ではなく、存在そのものが“覇気”を帯びている男。
ガルディアス
「……風哭の王風、だと?」
観測長が震えながら頭を下げる。
「はっ……!
大陸東部にて、未曾有の王風反応が発生しました。
三重風核が統合され……
観測史上初の“風哭”へ進化したと……!」
ガルディアスは顎に手を当て、
興味深げに瞳を細めた。
「三重……王風が三つ重なったというのか。
そんなもの、歴史には存在しない。」
重臣1
「皇帝陛下。
ここは即刻、風哭の王を討つべきかと――」
バン、と円卓が鳴った。
「焦るな。」
セレスタが席を立った。
白銀の羽飾りが揺れ、
その気配は冷たく鋭い。
セレスタ
「風哭の王――アリアは、
帝国の敵ではありません。」
重臣2
「貴様……!
帝国四将軍の立場でありながら、
王風を庇うつもりか!!」
セレスタ
「事実を述べているだけです。」
ガルディアス
「セレスタ。
お前は直接会ったんだな?」
セレスタ
「はい。
アリアは風に愛され、人を守る風を選ぶ者。
利用される気はなく、
危険な思想も持っていません。」
強硬派の重臣が怒りで顔を紅潮させた。
重臣3
「ではなぜ黒風の狩人を壊滅させた!?
己の風の力を誇示するためか!!」
セレスタの瞳が冷たく光る。
「黒風の狩人が先に手を出した。
罪はアリアではなく、
勝手に動いた暗殺者どもだ。」
重臣3
「暗殺者……?
あれは“帝国のため”に動いた者だ!!」
セレスタ
「帝国はそんな命令を出していない。
“強硬派”の勝手な独断でしょう。」
議場にざわめきが走る。
ガルディアスは軽く手をあげた。
静寂が落ちる。
ガルディアス
「セレスタ。
お前はアリアを“脅威ではない”と判断するのか?」
セレスタ
「はい。
しかし――
もし彼女が世界を壊す方向へ進むなら、
私が処する覚悟もあります。」
ガルディアスは満足げに笑った。
「ほう……それがお前の答えか。」
彼は席を立ち、
ゆっくりと円卓を歩いた。
ガルディアス
「風哭の王……面白い。
その名を聞くだけで、
この帝国の風脈が震えるようだ。」
彼の瞳には、恐れはない。
ある種の“期待”すら感じられた。
ガルディアス
「捕らえる必要はない。
殺す必要もない。」
重臣一同
「なっ……!?」
ガルディアスは笑った。
「――連れて来い。
生かしておけるならば、な。」
セレスタ
「……!」
重臣1
「し、しかし陛下!
風王が帝国に従う保証はどこにも――!」
ガルディアス
「従わせるのではない。
“帝国を選ばせる”のだ。」
議場が凍りついた。
ガルディアス
「力で縛った王は裏切る。
だが、自らの意志で帝国を選んだ王は――
誰より忠実な味方になる。」
セレスタはその言葉に、
一瞬、アリアとの対話を思い出した。
(……あの少女なら……
“自分の意志”でしか動かない)
ガルディアス
「準備を進めよ。
アリア王――
風哭の少女が、
どんな風をこの大陸に吹かせるのか……
楽しみにしている。」
帝国は動き出した。
この決定は、大陸全土を揺り動かす。
そして、
アリアの運命もまた――
帝国という巨大な風に飲み込まれようとしていた。
帝国が“風哭の王誕生”を正式に把握
皇帝ガルディアスが初登場
セレスタはアリアを敵視せず
強硬派はアリア討伐を主張
ガルディアスが“連れてこい。生かせるなら”と宣言
帝国の思惑が動き始める
という、
戦記としての舞台が一段階拡張される重要回でした。
次回は――
アリアの視点に戻り、
帝国の動きを察知する風の予兆と、
村に訪れる新たな人物が描かれます。




