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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第12話 王の帰還 ― 新たな風をその背に

王の誕生は静かではない。

世界のどこかが震え、

誰かがその気配を感じ、

大地そのものが「形を変えよう」とする。


まして、

世界に二度と現れぬ“特異な風”を持つ王ならば――

その震動は大陸全土に波紋を広げる。


アリアは今、

ただの少女ではなくなった。

だが同時に、

誰よりも人間に近くなった。


痛みを知り、

涙を抱き、

笑いの意味を理解した王として。

真核しんかくの光が揺れ、

アリアの身体を優しく押し上げた。


一瞬、

世界が白に染まり――


次に視界が戻った時、

アリアは元いたトーレン村の丘に立っていた。


風が静かに彼女を迎える。


エリオン

「アリア!!」


最初に駆け寄ったのはエリオンだった。

悲鳴のような声でアリアを抱きしめる。


エリオン

「よかった……っ、ほんとうに……無事なのか……!」


アリアはその胸に手を置き、

小さく笑った。


「ただいま。

 ――新しい風を連れてきたよ。」


その声はいつものアリア。

けれど、その奥にある響きは違っていた。


ロウガ

「嬢ちゃん……

 なんか……雰囲気が変わっちまったな……」


アルフレッド

「魔力波形が……あまりにも美しい……

 もはや“暴風核”の乱れがない……

 完全に統合されています……!」


ゼフィールは息を呑んだ。

彼だけは、変化の深さを正しく理解していた。


「……これが……

 “風哭ふうこくの王風”……」


アリア

「うん。

 風が私に……名前をくれたの。」


ゼフィール

「アリア、君はもう……

 ただの王候補じゃない。

 世界に選ばれた――真の王だ。」


アリアは静かに首を振った。


「違うよ、ゼフィール。

 私は……“私のために”王風を使うだけ。

 誰かを守りたいから王になっただけ。

 それ以上でも以下でもない。」


その言葉に、

エリオンの胸が熱くなった。


ロウガは鼻をこすりながら笑う。


「はっ……嬢ちゃんはやっぱ嬢ちゃんだな!」


セレンも娘を見つめ、

涙をこぼした。


「アリア……

 あなたは私が誇りに思う風……」


アリアは母の手をそっと握った。


「お母さん。

 あなたが泣いた風も、

 私が泣いた風も、

 ぜんぶ一緒に……これから笑わせてみせる。」


風が、

その言葉を祝福するようにそよいだ。


***


その瞬間――

遠く離れた帝国でも異変が起きていた。


帝国観測庁てんていかんそくちょう

風脈観測室。


術式円が震え、

観測士たちが悲鳴のように叫ぶ。


「大陸東部の風脈が……

 一斉に“上昇波”を示しています!!」


「これは……王風反応!?

 数値が高すぎる!!

 こ、こんなの……歴代最高値の三倍……!」


別の観測士が震えながら報告する。


「大陸全域の風脈が連動して揺れています……

 まるで、新しい“中心”が生まれたかのように……!」


監察官

「新しい王が……誕生したのか……?」


***


再びトーレン村。


アリアの周囲で風が渦を描き、

かすかな“泣き声”のような音が響いた。


エリオン

「今の……?」


アリアは空を見上げ、

優しく答えた。


「風が……泣いてるんだよ。

 生まれたばかりだから。」


ゼフィール

「では……いつ笑う?」


アリア

「誰かが風を受け入れてくれたとき。

 その時に……風は初めて笑うの。」


エリオンはアリアの肩に手を置いた。


「なら……俺が、最初に笑わせてやるよ。」


その言葉に、

風が本当に少しだけ明るく揺れた。


アリア

「……ありがとう、エリオン。

 じゃあ、一緒に行こう。

 この風が向かう先まで。」


丘の上に立つアリアの背に、

新たな風が光となって広がる。


それは祝福か、

それとも大陸を揺らす嵐の前兆か。


アリアの旅と戦いは――

ここから新たな段階へ突入する。

アリアが現実世界に帰還

“風哭の王風”を宿した新しい風を披露

仲間たちの安堵と驚き

世界規模の風脈異常

帝国観測庁が王誕生を察知

風が泣き、そして微笑み始める


という、

アリアが“世界の風の中心”として歩き出す重要な回となりました。


次回は、

戦記としてのスケールが大きく跳ね上がります。

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