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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第11話 真核の問い ― 風が哭き、風が笑う

風には記憶がある。

触れたものすべてを、

抱いた痛みも、赦した優しさも、

どこかに刻んで流れてゆく。


だが、風が“泣く”ことを

誰が想像しただろうか。


風が泣くのは二度。

そして笑うのは一度だけ。


風王の真核に触れた者は、

その意味を理解することを

避けては通れない。


アリアの三重の風が、

いま真核へと触れようとしている。

アリアの前に浮かぶ光球――

それが、風王の真核だった。


風の心臓。

風が世界へ生まれる“最初の一息”。


アリアが近づくと、

光球が柔らかく脈動し、

空間全体が呼吸を始める。


深い息。

長い息。

まるで大陸そのものが寝息を立てているようだった。


その時、

光球はふっと揺れ、

どこからか声が響いた。


それは性別すら曖昧な、

風のような声だった。


『……来たか。

 三重の風を持つ者よ。』


アリア

「あなたが……真核?」


真核

『我は形を持たぬ。

 人が“風の心臓”と呼ぶなら、

 それが我だ。』


アリアは胸に手を置いた。


「私に……何を問うの?」


真核はゆるやかに答える。


『すべてだ。

 お前が何を望み、

 何を恐れ、

 何のために吹く風なのか。』


アリアは息を呑んだ。


真核

『まずは……“二度の哭き”を見よ。』


風がふっと消え、

視界が暗転する。


***


アリアが見たのは――

母セレンが泣いていた記憶。


荒れる風の中で、小さなアリアを抱く姿。


泣きながらも、

必死に風を抑えようとする母。


アリア

「……これは……私の昔の記憶……?」


真核

『風が最初に泣くのは――

 “守れなかった痛み”。

 王は最初に、誰かを守れず泣く。

 セレンも例外ではなかった。』


アリアの胸に痛みが走る。


次に映ったのは――

影の王となった“未来のアリア”の涙。

さきほど別れた残影の姿。


全てを失い、

風に溺れ、

その果てでただ風だけが傍にあった未来。


真核

『風が二度目に泣くのは――

 “自分の力で世界を傷つけた痛み”。

 お前が成り得た未来だ。』


アリアは震える息を吐いた。


アリア

「……痛い……

 見たくない……

 でも……目をそらしちゃいけない……」


真核

『では――三つ目を見よ。

 最後の“笑い”を。』


暗闇が晴れ、

ひとつの景色が広がった。


温かな風が吹く丘。

その上に立つアリア。

背後には、エリオン、ロウガ、アルフレッド、ゼフィール、

そして笑顔を取り戻したセレン。


未来のアリアは、

優しい風を纏い、

微笑んでいた。


真核

『風が一度だけ笑うのは――

 “自分以外の誰かが風を愛した瞬間”。』


アリア

「それって……

 私が……誰かを幸せにできたってこと?」


真核

『そう。

 風は他者に触れ、

 他者に受け入れられて初めて笑う。

 王の風もまた同じだ。』


アリアは涙を溢しながら、

その未来を見つめた。


「私が……

 本当に守りたい人たちを守れたなら……

 風は笑ってくれるんだね……」


真核

『問うぞ、アリア。』


真核の声が、深く響いた。

風脈そのものが問うている――

そんな存在の重さだった。


『お前の風は――誰のために吹く?』


アリアは胸に手を当て、

涙を拭き、

真っ直ぐに答えた。


「私の風は――

 “私の大切な人たち”のために吹く。

 誰かのために泣いて、

 誰かのために笑って、

 そして……

 世界が泣いているなら、

 その涙を拭える風になりたい。」


真核の光が揺れた。

穏やかに、温かく。


真核

『ならば……王の資格あり。

 三重の風は、もはや一つの王風へと昇華する。

 新たなる名を持つ風だ。』


アリア

「……名前……?」


真核

『“風哭ふうこくの王風”――

 それがお前の風。

 二度泣き、一度笑う風。

 その意味を理解した王にだけ許される風だ。』


アリアの三重の風核が同時に光り、

ひとつの風へと統合されてゆく。


黒と銀と金白。

三色が融け、

世界にひとつしかない風になっていく。


真核

『受け取れ、アリア。

 お前だけの風を。

 “風哭の王風”を――』


光が爆ぜ、

アリアは新しい風の中に包まれた。


その瞬間、

大陸全土の風脈が震え、

誰もが“何かが変わった”と気づいた。


アリアは――

真の王風を手に入れたのだ。

風の真核がアリアへ問いを投げかける


“二度泣き、一度笑う風”の真意が明かされる

過去の痛み、未来の影、自分が望む未来の風

アリアが“誰のために風を吹かせるか”を宣言

三重の風が統合され新しい“王風”へ

名は 風哭ふうこくの王風


という、

風災編の核心に触れる重要な回となりました。


ここからアリアは、

ただの“王候補”ではなく――

世界に二度と現れない唯一の風王として歩み始めます。

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