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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第8話 風王の試練 ― 第一段階『風の重奏』

試練とは、力を測るためのものではない。

心、意志、そして存在そのものを問うものだ。


風の王に生まれた者は、

風を操る前に“風と対話できるか”を問われる。

対話できぬ王は、風を災害にし、

対話できる王だけが、風を祝福に変える。


だがアリアが宿した“三重の風”は、

これまでの王の基準を越えた。


世界が恐れ、期待し、揺らぎながら、

彼女の答えを求めている。


今、風脈そのものがアリアへ問いかける。

審判者の宣告とともに、

世界が揺れた。


風が逆巻き、

空気が鋭い刃のように震え、

大地からは薄い光が風に引かれるように立ち昇る。


ロウガ

「アリア! 下がれ!!」


アリア

「いいえ……

 この風は……“私を選ぼう”としてる。」


エリオン

「でも危険だ! お前はまだ核の安定が――」


アリアは静かに首を振った。


「大丈夫。

 これは……戦いじゃない。“対話”だから。」


ゼフィールは審判者を凝視しながら呟いた。


「……本当に対話で済むのか……?

 あれは世界の意志。

 王族ですら触れることを許されない……」


審判者は仮面越しにアリアを見つめた。

その声音は風を切るように鋭く、しかしどこか厳粛だった。


『試練第一段階――

 “風の重奏じゅうそう”。』


空が割れた。

風脈が露出し、空に三つの風の道が現れる。


一つは“銀の風”。

一つは“黒の風”。

一つは“金白の風”。


アリアの胸の奥で、

核がうなるように共鳴する。


影界の黒。

母の暴風の銀。

そしてアリア自身が生んだ新しい金白。


三重の風が、胸の中で震えた。


審判者

『三つの風を“同時に”奏でよ。

 王の器は、その和音にこそ宿る。』


アルフレッド

「三つの風を……同時に……!?

 アリア様の身体が……耐えられるはずが……!」


エリオン

「アリア……やめろ!!

 お前の命に関わる!!」


アリアは仲間たちを振り返り、

そっと微笑んだ。


その微笑みは、どこか懐かしく、

どこか新しかった。


「大丈夫。

 だって――

 私は、私の風を信じてる。」


その一言が、仲間たちの胸を深く震わせた。


アリアは静かに両手を広げ、

風を招くように息を吸い込んだ。


胸の核が脈動する。


――ドン……


影界の黒風が、背中から立ち上る。


――ギィン……


母の銀風が、髪を揺らす。


――キィィン……


新しい金白の風が、足元から光を灯す。


三つの風が、アリアの周囲で円を描き、

世界に旋律のような“音”を響かせた。


耳には聞こえないはずの音が、

確かに聞こえる。


風が、歌っている。


審判者が低く呟く。


『……風が……歌うだと……?

 三重の風が“和音”を生むなど……

 ありえぬ……ありえぬ……!』


アリアは静かに目を閉じた。

内側の風と外側の風をひとつに結ぶように。


「――調和して。」


その一言と同時に、

三つの風は優しく溶け合い始めた。


黒風は銀風を包み、

銀風は金白を導き、

金白は黒風を照らす。


三つが交わる中心で、

小さな光が生まれた。


それは風の核ではない。

風の“心臓”のような光。


ゼフィールが震えた声で言う。


「まさか……

 三重融合トリニティ・シンフォニア……!

 そんなもの、王家の伝承にすら載って……!」


審判者の仮面に、

怒りとも驚愕ともつかぬ気配が走る。


『……これほどの風を……

 誰が、お前に許した?』


アリアは目を開けた。


その瞳は、

風の三色を宿しながらも、

ひとつの光で満ちていた。


「誰の許可もいらないわ。

 私は……

 “守りたいものがある”から、進むだけ。」


その言葉の瞬間、

アリアの背から三重の風が爆ぜた。


光の風柱が天へ伸び、

大陸中の風脈が震えた。


ロウガ

「うおおおお!!

 空が割れたぞ!!」


アルフレッド

「風脈が……書き換わっていく……!!

 アリア様の風が、世界の風を……導いている……!」


エリオンは涙を浮かべながら呟いた。


「アリア……

 君は……どこまで行くんだ……?」


審判者は両手を広げ、

風脈の一部を受け止めるように構えた。


そして――

初めて仮面をわずかに下げ、

かすかに口元を動かした。


『……認めよう。

 第一段階、“風の重奏”――合格。』


アリアの足元に風が集まり、

次の空間への道が開かれた。


審判者

『だが、これで終わりではない。

 次の試練は――

 “風そのものの本質”。

 逃げ場は、もうどこにもない。』


アリアは覚悟を込めて頷いた。


「わかってる。

 進むわ。

 私の風がどこへたどり着くのか――

 確かめないと。」


審判者は風の中へ姿を溶かし、

次の試練への扉が開いた。


アリアの物語は、

風の王を越えた“新しい軌道”へ進み始める。

“風王の試練・第一段階『風の重奏』”突破回 でした。


アリアが三重の風を同時に操る

三つの風が“和音”を生む現象

審判者の驚愕

新たな風の光“風心ふうしん”の誕生

そして試練の第一段階合格


ここから試練はさらに苛烈になり、

アリアは“王の本質”と向き合うことになります。

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