第四章:風災編 第7話 風の試練 ― 世界が震える
風は本来、世界を繋ぐ“道”だ。
大陸の上を流れ、海を越え、
山脈をなでるように渡ってゆく。
風脈は、ひとつの命のように巡り、
それを読み解く者が“王”となる。
だが――
アリアが宿した“三重の風”は、
世界の風脈にとって“想定外の音”だった。
風は反応し始める。
世界の奥底に眠る力が、
新たな王を迎えるための準備を始める。
それは祝福か、破滅か。
まだ誰にもわからない。
アリアが目覚めてから数時間後。
トーレン村は、暴風の痕跡が嘘のように静まっていた。
だがその静けさは、どこか不自然な重みを伴っている。
ロウガは空を見上げ、眉をひそめた。
「……なあ、なんか空の色が変じゃねぇか?」
アルフレッドも計測器をのぞき込み、顔色を変える。
「風の流れが……乱れています。
大陸全体の“風脈”が揺らいでいる……?」
エリオンはアリアへ目を向ける。
アリアは村の丘の上で風に触れ、
その様子をじっと感じ取ろうとしていた。
三重の風紋はもう背中から浮かんでいない。
だが、アリアの周囲の空気は透明度を増し、
まるで世界そのものが彼女を中心に息づいているようだった。
エリオン
「アリア……風が……君に反応している。」
アリアは小さく頷いた。
「……うん。
世界中の風が……私の名前を呼んでる。
でも……これ、ただの反応じゃない。」
ゼフィールが険しい表情で言う。
「“試練”だ。」
アリアはその言葉に視線を向けた。
「試練……?」
ゼフィールはゆっくり息を吸い、
王族の血に刻まれた古い記憶を語り始めた。
「王の風が極限に達したとき、
世界の風は“真の王”を探し始める。
そして試すんだ。
その王が――
世界を導く資格があるかどうか。」
ロウガ
「嬢ちゃんが試されるってことか?」
ゼフィール
「正確には……
“三重の風”が何を望んでいるか、だ。」
アリアはゆっくりと目を閉じた。
三つの風が胸の奥でうなり、それぞれ違う旋律を歌っている。
影界の風は静かな闇。
母の風核は荒ぶる渦。
そして新しい風は、透明な光。
それらがひとつの方向へ向かおうとし、
また別の方向へ広がろうともしていた。
まるで、世界の地図を塗り替えるように。
その時――
大地が低く唸った。
エリオン
「……今の、何だ……?」
アルフレッド
「地震ではありません……
風脈そのものが……大きく動いている……!」
空が裂けた。
白い裂け目のような光が、
空間を横切って現れた。
ロウガ
「お、おい……なんだありゃ……!」
風が逆巻き、空気が震える。
アリアは本能的に知った。
――世界が、呼んでいる。
ゼフィールの顔が蒼白になる。
「来る……“風の審判者”だ……!」
アル
「風の……審判者……?」
ゼフィール
「風脈の奥底に宿る、古き風の意志。
王候補が現れた時だけ姿を現し、
その力が世界に適合するかを判断する存在……
王族ですら伝承でしか知らない……!」
裂け目の向こうから、
ゆっくりと人影が現れた。
長い風衣を纏い、
顔は仮面で覆われ、
その歩みは波のように滑らかで――
風そのものだった。
仮面の男はアリアの前で立ち止まり、
その視線だけで周囲の空気を震わせた。
そして低い、風のような声で言った。
『……ようやく現れたか。
三重の風を持つ“真王”。』
アリア
「……あなたは?」
仮面の審判者
『我は風脈より生まれし古き意志。
その名を持たず、ただ“風の意志”として在る者。
——お前を試しに来た。』
アリアは一歩も引かずに見返した。
「私が……王にふさわしいかどうかを?」
『否。
“王”になれるかではなく——
“王を超えてしまわぬか”を試す。』
ロウガ
「こ、こえてしまう……?」
審判者はアリアへ手を翳し、告げた。
『三重の風は、世界の理を乱す。
その身を保てぬなら、お前は風災そのものとなる。
ゆえに——試す。』
大地が震えた。
空が鳴った。
風が唸りを上げた。
審判者
『——これより、“風王の試練”を始める。』
アリアの瞳が鋭く輝く。
「いいわ。
受けて立つ。」
風が吠えた。
世界が王を試す音だった。
アリアの覚醒が大陸規模の異変を引き起こし、
“風の審判者”が姿を現す回 となりました。
世界の風脈が揺らぐ
三重の風に世界そのものが反応
風脈の奥から“審判者”が出現
アリアは「王を超えうる存在」と認識される
そして“風王の試練”が開幕する
ここから物語はさらに大きなスケールへ進み、
アリアは“世界と対話する存在”へと踏み出します。




