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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第6話 新たなる風 ― 三重の旋律

世界は、本来“単一の風”だけで成立している。

風の王の血を継ぐ者はその風をより深く理解し、

やがてそれを操る存在となる。


しかし、アリアはその摂理を越えた。


影界の王術による風、

母から受け継いだ暴風の核、

そして自らの魂が生んだ新しい風。


三つの風が、ひとつの身体に宿ることなど、

歴史上ただの一度もなかった。


それがどれほどの奇跡であり、

どれほどの危険であるかを――

仲間たちはまだ知らない。

村の中心に吹き荒れていた暴風が、

嘘のように静まっていた。


風が止んだ世界は、

不思議なほど静かだった。


エリオンはアリアを抱きしめたまま、

その顔を覗き込み、囁いた。


「アリア……

 聞こえるか……?」


返事はない。

アリアの身体は柔らかく温かいが、

意識は深い眠りに落ちている。


ロウガは腕を組み、空を睨んだ。


「嬢ちゃん、本当に……大丈夫なんだろうな?」


アルフレッドは魔導計測器を震える手で操作する。


「魔力波形は……安定しているように見えます……

 ですが……異常なほどに複雑で……

 “どの風が主体か”判別できません……」


ゼフィールは沈黙したまま、

アリアの胸の位置に手を当てた。


「……三つだ。」


「三つ?」

エリオンが顔を上げる。


ゼフィールは深く息を吸った。


「アリアの中で、

 風核が三重に共鳴している。」


「三重……?」

ロウガが眉をひそめる。


「嬢ちゃんは核を二つ持ってんだろ?

 なんで三つなんだよ?」


ゼフィールは、

アリアの胸に手を置いたまま目を閉じた。


「彼女は……

 “自分自身の風”を生み出したんだ。

 二つの風核がぶつかった結果、

 その衝突の中心で“新しい風”が発生した。」


アルフレッドが息を呑む。


「新しい……風……?

 そんなこと、あり得るんですか?」


「本来は、あり得ない。」

ゼフィールの声は低く、震えてさえいた。


「王の風は血統に刻まれたもの。

 新たな種類の風が生じるなど、

 世界法則が歪むほどの異質……

 むしろ“禁忌”に近い。」


その時だった。


アリアの身体から、

微かな“音”が漏れた。


風が鳴くような、

光が震えるような、

そんな響きだった。


エリオンがハッと顔を上げる。


「今のは……?」


次の瞬間――

アリアの背後に、

淡く光る三つの“風の紋”が浮かび上がった。


ひとつは銀色の風。

ひとつは深い影を孕んだ黒い風。

そしてもうひとつは――

淡い金と白が混じる、見たことのない風。


ロウガ

「な、なんだ……これは……!」


アルフレッド

「三重属性……

 しかもすべて“王級”……

 こんな現象……前例がありません……!」


ゼフィールは後ずさった。

恐れからではない。

理解できないものを前にした、王族の本能からだった。


「……アリア……

 君はもう……

 “ただの人間”じゃない……」


その時、

アリアの瞳が静かに開いた。


美しい双眸は、

以前よりも深い光を宿していた。


金、銀、そして淡い碧光の三色が混ざり合い、

世界を映す鏡のように輝いている。


アリアはまず、母を探すように視線を彷徨わせ、

次に仲間たちへ目を向けた。


エリオンが息を呑む。

ロウガも口を開けたまま固まった。


アルフレッドは震えながら呟いた。


「アリア様……本当に……

 お戻りになったのですか……?」


アリアはゆっくりと呼吸し、

胸に手を当てた。


「……聞こえる……」


「聞こえる?」

エリオンが問う。


アリアは微笑む。


「三つの風が……

 私の中で歌ってるの。

 私を……生かそうとしている。」


その声は不思議なほど穏やかで、

しかしどこか人ならざる透明さを帯びていた。


ゼフィールは言葉を失った。

やっとの思いで絞り出す。


「アリア……

 君の風は……もうこの大陸の“規格外”だ。

 扱いを誤れば、

 世界が君を王として選ぶ前に……

 君そのものが、大地の風を支配してしまう……」


アリアはその言葉を静かに受け止めた。


「……わかってる。

 でも、私は……王になるために生きてるんじゃないよ。

 “私の大切な人たち”を守るために生きてる。」


エリオンが目を見開いた。


ロウガが涙ぐんだ。


アルフレッドが胸を押さえた。


セレンは、娘を見つめて呟く。


「アリア……

 あなたは……

 私が想像した以上の風になったのね……」


アリアは静かに微笑んだ。


「――行こう。

 この風が、何のために生まれたのか……

 確かめに。」


仲間たちは頷いた。


三つの風がアリアの背で揺れ、

新しい王の物語が動き出す。

アリアが “三重の風” を持つ存在へと変貌し、

新たな覚醒を遂げる姿が描かれました。


アリアが目覚める

三つの風核(影界+セレン+新生核)

三重の風として顕現

仲間たちの驚きと不安

アリア自身の決意と未来への一歩


アリアは“規格外の王”へと進化しましたが、

同時にその風は大陸に“新たな運命”をもたらします。


次回は――

この三重の風が初めて世界に触れる瞬間。

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