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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第5話 双核の王 ― 風が二度うなる

風は、一人の王にひとつだけ。

それが大陸の歴史に刻まれた“摂理”だった。


ひとつの風核が、

その王の命と魂を形づくり、

世界との“約束”となる。


アリアはその摂理に逆らった。

母セレンを救うために、

風核を二つ、自らの胸に抱え込んだ。


風は祝福となり得る。

だが同時に、呪いにもなる。


風が二度うなるとき、

世界の均衡は静かに狂い始める。

二つの風核がアリアの体内に溶け込んだ時、

世界はひどく静かになった。


まるで風そのものが息を潜め、

彼女の内側を覗き込んでいるようだった。


アリアは母を抱いたまま、

その場に膝をついた。

呼吸は浅く、胸の内側が熱い。


「アリア……? 大丈夫……?」

セレンはアリアの顔を覗き込む。

かつての優しさを取り戻した瞳は、

それでも娘の異変に怯えを含んでいた。


アリアは笑みを作ろうとしたが、

唇が震えて上手く笑えない。


「だいじょうぶ……

 お母さんを助けられて、よかった……」


だがその時だった。


胸の奥で、何かがぶつかり合う。


――ドンッ。


ひとつの風核が震えた。

それは影界の力を含んだ“黎明の核”。


次の瞬間、もうひとつの核が逆鳴りする。


――ギィンッ。


セレン由来の“暴風の核”。


アリアの背中が跳ね、

息が詰まる。


「っ……く……!」


「アリア!!」

エリオンが駆け寄り、アリアを抱き留める。

その腕に重さが伝わる。


ゼフィールは顔を強張らせた。


「始まった……

 二つの核が“主導権”を奪い合っている。

 アリアの体内で……風が二度、うなり始めた……!」


ロウガが怒鳴る。


「だったらどうすりゃいい!?

 どうにか止められねぇのか!!」


「止められない。」

ゼフィールはきっぱりと首を振った。

その瞳には王家の血族だけが知る“絶望”が宿っている。


「二つの核は互いに“同じ場所”に留まれない。

 通常なら、どちらかが宿主を焼き尽くしてしまう……」


エリオンの顔が蒼白になる。


「……アリアが……死ぬっていうのか……!」


アリアは苦痛に顔を歪めながらも、

エリオンの手を握ろうとした。


「……大丈夫……

 私は……耐えてみせる……」


「耐えるとか……そんな問題じゃない!!」

エリオンは叫んだ。

その声は震え、涙さえ滲んでいる。


アリアはゆっくり首を横に振った。


「だって……

 お母さんを救えるのは……

 この方法しかなかったんだもの……」


セレンの表情が崩れ落ちる。


「アリア……そんな……そんなことのために……!

 私は……私はもう……あなたを苦しめたくない……!」


アリアは母を見つめた。

その瞳は痛みに揺れながらも、

確かな“光”を宿していた。


「お母さんのためだけじゃないよ……

 私は……

 “風の未来”をこの手で選びたかっただけ……」


その瞬間、

アリアの身体を稲妻のような風が貫いた。


「っ――!!」


彼女の意識が白く塗りつぶされる。

視界が揺れ、音が消える。


……暗い。

……冷たい。


世界が影の底に沈むように、

アリアの意識が深い海の中へ引きずり込まれる。


やがて――

その闇の中に、

ひとつの“影”が立っていた。


少女のような姿。


だが風のように揺れ、

そして影のように深い。


その存在は、アリアの名を呼んだ。


「――アリア。」


「……あなたは……誰?」


少女は微笑む。


それは光でも影でもなく、

二つの風核が生み出した“新しい風”。


少女

「私は、あなたの中に生まれた“もうひとつの風”。

 二つの核が重なった時……

 あなたが生んだ“新しい王の魂”。」


アリア

「……王の……魂?」


少女

「そう。

 あなたの過去でも、母の過去でもない。

 あなた自身が選んだ未来から生まれた風。」


アリアは息を呑んだ。


少女はそっと手を差し出す。


少女

「アリア。

 あなたが私を受け入れれば……

 二つの核は“ひとつ”になる。

 あなたは壊れない。

 でも……」


アリア

「……でも?」


少女の笑みが僅かに寂しげに揺れた。


少女

「その瞬間から、あなたは“元のアリア”ではなくなる。

 王としての風が……あなたの存在を塗り替える。」


アリア

「…………」


少女

「それでも、進む?」


アリアの心は揺れた。

恐れ、痛み、責任、未来――

すべてが胸に押し寄せてくる。


だが最後に心の奥から浮かんだのは、

母の笑顔、

仲間の声、

自分が守りたい風の世界だった。


アリアは手を伸ばした。


「……進むよ。

 私は……

 風の王だから。」


少女はその手を握り、微笑んだ。


少女

「――ようこそ。

 “二度うなる風”の王へ。」


光が爆ぜ、

アリアの意識が現実へ引き戻される。


大気が唸り、

空が震えた。


アリアの背に、

新しい風が立ち上がった。


それは――

世界にいまだ存在しない“第三の風”。

アリアが“二つの風核”を抱えた代償と覚醒が描かれました。


二つの風核の衝突

アリアの命の危機

内面世界での“新しい風”との対話

そして、アリアが“未来の王”を選ぶ決断


最後に誕生した第三の風

 (アリアの魂が生んだ新たな属性)


この章では、アリアがこれまで以上に

“王としての存在”へと変わっていきます。


次回は――

アリアの変化を目の当たりにする仲間たちの視点

そして

新しい風の力の覚醒の代償

が描かれます。

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