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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第四章:風災編 第4話 風核解放 ― 母を救うための代償

風の王家に生まれた者は、

風に愛される。

そして同じだけ、風に呪われる。


アリアの母セレンが抱えていた痛みは、

彼女自身の力に由来するものではない。

“娘を守るために、自らを犠牲にした風”が、

母という存在を蝕み続けていたのだ。


だが風核が限界を迎える時、

宿主は二度と戻れない。


アリアは知っている。

誰かの風核を癒やすということは——

誰かがその“痛み”を肩代わりすること。


今、彼女は王ではなく、

娘として選ばなければならない。

暴風は弱まりつつあったが、

村の上空にはなお、不吉な雲が蠢いていた。


セレンの身体はアリアの腕の中で震えていた。

風核の光は微かに弱まったものの、

その奥では制御しきれない魔力が渦を巻き、

いつ再び爆ぜてもおかしくなかった。


ゼフィールが重い口調で言う。


「……間に合わない。

 風核は崩壊寸前だ。

 このままだと……セレンは、風そのものに“還る”。」


アリアの指先が震えた。


セレンを守りたい。

でも、どうすれば。


エリオンが焦ったように声を上げる。


「アリア! 何とかできる方法は……!?

 お前なら……母さんを……!」


ゼフィールが冷静な声で遮った。


「ある……ひとつだけ。」


全員が息を呑む。


ゼフィールは静かに続けた。


「風核を安定させるには、

 同じ“王家の血”が風核を受け取り、

 負荷を分散させる必要がある。」


アリアはすぐに理解した。


「つまり……

 誰かが、母の風核を“分けて持つ”ということ……?」


ゼフィールが頷く。


「俺か……アリア、君だ。」


ロウガが叫んだ。


「ふざけんな!!

 嬢ちゃんまで危ねぇことしなくても――」


ゼフィールは目を閉じる。


「風核は王家にしか扱えない。

 ロウガやエリオンでは……耐えられず死ぬ。」


エリオンは拳を握りしめたまま、

悔しそうに歯を食いしばった。


「……力になれないのか、俺は……」


アリアは母の手を握りしめる。

その手は冷たく、危うく、震えていた。


セレンの瞼が微かに開く。


「……ア、アリア……?」


その声は弱々しく、

風にかき消されそうだった。


アリアは母の頬に触れた。


「お母さん、大丈夫。

 私がここにいるよ。」


セレンは苦しげに首を振った。


「だめ……近づいちゃ……

 あなたまで……巻き込まれる……」


アリアは強く抱きしめた。


「巻き込まれたっていい。

 私はあなたの娘だよ。」


その言葉に、

セレンの瞳が大きく揺れた。


ゼフィールが近づき、静かに告げる。


「セレン。

 今、生き残る道は一つしかない。

 あなたの風核を……

 アリアか俺が引き取る。」


セレンは息を呑み、

アリアを抱く腕に力を込めた。


「ダメ……アリアは……この世界の希望よ……

 あなたには……重すぎる……

 そんな運命……背負わせたくない……!」


アリアは首を振った。


「もう、背負ってる。

 私が歩くって決めた道だよ。」


セレンの瞳が震え、

嗚咽がこぼれた。


ゼフィールが淡々と告げる。


「選択の猶予は、あと数分だ。

 風核は崩壊の臨界にいる。」


アリアは母を見つめた。


「お母さん……

 あなたの風核を……

 私に分けて。」


セレンは息を呑んだ。


「アリア……

 それをすれば、あなたは――

 “影界の王の風”に加えて……

 私の“狂った風”まで抱えることになるのよ……

 身体が……心が……壊れるかもしれない……!」


アリアの声は優しく、それでいて揺るぎなかった。


「大丈夫だよ。

 お母さんは、私を守るために苦しんできたんでしょう?

 今度は……私があなたを守る番だよ。」


セレンの瞳から、涙が零れた。

その涙は風に乗り、消えていった。


震える手が、アリアの頬を包む。


「……アリア……

 私の風核を、あなたに預ける。

 その代わり……

 どうか、生きて。

 私の代わりに……

 風の未来を……」


アリアは母の手を握り、静かに頷いた。


「約束する。

 お母さんも、生きて。」


そして――

アリアは母の胸へ手を添えた。


ゼフィールが魔術式を起動し、

光が大地を揺らす。


「《風核分与ディバイド・コア》開始……!」


アリアの身体へ、

セレンの風核の半分が流れ込む。


痛みが走る。

世界が裂けるような圧痛。

心臓が止まりそうなほどに、

風が体内を暴れ回る。


アリアの膝が折れそうになった瞬間――


エリオンが支えた。


「アリア!!

 俺が支える……倒れるな……!」


アリアは震えながら微笑む。


「エリオン……ありがとう……」


セレンは娘の名を何度も呼んだ。


「アリア……アリア……アリア……!」


その声が、

痛みを越える力をくれた。


光が収まり、風が止む。


アリアは荒い息をつきながら、

母を抱きしめた。


セレンの風は弱まったが、

確かに“生きていた”。


アリアの胸の中で、

二つの風核が微かに脈動している。

アリアが母を救うために“風核を受け継ぐ”回でした。


風核分与という禁呪

ゼフィールかアリアしか選べない状況

セレンの本心

アリアの無条件の愛

そして、二つの風核を抱えたアリアの“新たな危険”


アリアは母を救いましたが、

その代償はあまりにも大きいものです。


次回、アリアの身体は異変を見せ始め、

“新たな風の王の形”が顕現します。

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