第三章:影界戦火編 第10話 影王宮アトラ・ノクティス ― 黒風の王アリア
王は光だけでは成れない。
影も涙も、失ったものも抱えて初めて——
“完全な王”となる。
だが影界の王は、それを歪めて奪おうとする。
■ 影王宮
影哭界の深奥に突如現れた巨大な宮殿。
空は血のように赤く、
宮殿は黒鉄の柱によって支えられていた。
アルフレッド
「……ここが……
影界の王が棲む場所……」
ロウガ
「空気が重てぇ……胸が締めつけられるぜ……」
エリオンは一歩前に立ち、
宮殿の奥だけを睨み続けていた。
エリオン
「……アリアがいる。
あの奥に……確かに、アリアの風がある……!」
ロウガ
「風……? でも嬢ちゃんは……影に……」
エリオン
「影に堕ちても……アリアの“風”は消えない。
だから必ず取り戻す!!」
その時。
宮殿の入口が、
まるで口を開くように軋んだ。
■ ■ 《影使徒ルージュ》の軍勢
入口から黒い兵士達が出現し始めた。
影の鎧を纏い、
目だけが赤く光る“影兵”。
数は百、千……
いや、視界の果てまで続いている。
ロウガ
「おいおい……あの数、冗談じゃねぇぞ……!!」
アルフレッド
「しかも……
あれ、一体一体に“悲しみの魔素”が詰まってる……
影哭界で吸った涙が……兵に……!!」
ルージュが姿を現す。
ルージュ
「ノクス様の王宮へ足を踏み入れた時点で……
あなたたちの未来は“消滅”で決まってるの。」
エリオン
「黙れ。
お前を殺してでも進む。」
ルージュは嗜虐的に笑った。
ルージュ
「試してごらん?
“王なき軍勢”が、どこまで戦えるか。」
■ ■ ロウガの“影吼乱”
影兵の一斉突撃。
地鳴りのような足音。
黒い波。
ロウガが前に躍り出た。
ロウガ
「嬢ちゃんのために……
ここで止まるわけにゃいかねぇ!!」
拳が黒く光り、
影界の空気を震わせる。
「獣闘術・影吼乱ッ!!」
地が割れ、
衝撃波が影兵をまとめて吹き飛ばした。
アルフレッド
「ロウガさん!!
この階層の重圧に逆らって……あんな力を……!」
ロウガ
「嬢ちゃんが泣いてるなら……
俺が吼えて道ぁ作るだけだ!!」
だが影兵は次々と再生し、
再び押し寄せてくる。
ルージュ
「無駄だよ。
涙から生まれた軍勢は……悲しみによって無限再生する。」
■ ■ エリオン、片翼として覚醒の一歩
エリオンが剣を構える。
深紅の血片が、黒い光へ変わり始める。
アルフレッド
「エリオンさん!!
その光……影に近い……!!」
エリオン
「わかってる……
でも今は……アリアを取り戻すためなら……!!」
ロウガ
「おい……! 今ここで暴走したら……!」
だがエリオンは吠えるように叫んだ。
「アリアァァァァ!!!
絶対に連れ戻す!!
影でも光でも……俺はお前の“翼”だ!!」
血片の力が剣へ流れ込み、
黒灰色の斬撃が影兵ごと宮殿の壁を裂いた。
アルフレッド
「これ……完全に血片の限界を超えてる……!!
エリオンさん……自分が死にます!!」
エリオン
「構わない!!
アリアを救えるなら……!!」
ロウガ
「バカ野郎!!
嬢ちゃんはそんなの望まねぇ!!」
ルージュ
「命を削る翼……美しいね。
でも、それすら影に沈む運命。」
影兵がさらに押し寄せる。
エリオンは倒れながらも剣を握る。
エリオン
「アリア……待ってろ……
絶対に行く……!!」
■ ■ ミラの残光、再び
その時だった。
宮殿の天井から、
微かな光の粒が降り注いだ。
アルフレッド
「これは……ミラさんの光……!」
ミラの声のような暖かい響きが、
胸の奥にふと流れ込む。
――“アリア様を……守って……”――
エリオンの血片が、
ミラの残光でわずかに落ち着く。
ロウガ
「ミラ……!
まだ嬢ちゃんを……見てんだな……!」
アルフレッド
「エリオンさん!!
ミラさんの光が、影の浸食を抑えてくれてます!!
今のうちに……宮殿へ!!」
エリオン
「……ミラ……
お前……アリアを守って……
俺たちを導いて……
本当に……ありがとう……!」
光は道を照らし、
宮殿の中心へと続いていく。
ルージュ
「逃がすと思った?
影王宮はあなたたちを“迷宮”に変えるわ。」
だがロウガが吼えた。
ロウガ
「行くのは“嬢ちゃんの心臓部”だけだ!!」
拳の轟音とエリオンの斬撃が、
影兵の壁に穴を開ける。
道ができた。
エリオン
「行くぞ!!
アリアのもとへ!!」
仲間たちは影王宮へ駆け込んだ。
■ ■ 黒風の王アリア
影王宮・中心核。
薄暗い玉座の間で、
アリアは静かに座っていた。
白いドレスは黒く変色し、
瞳は深紅。
髪は黒風のように揺れ、
その背に影の王冠が浮かんでいる。
アリア
「…………」
ノクスがすぐ横で囁くように言う。
ノクス
『美しい。
影を纏った王よ。
お前は光よりも……闇が似合う。』
アリアは静かに答えた。
アリア
「……ノクス……
私は……まだ……光なの……?」
ノクスは微笑む。
『お前はもう“光と影のあいだ”。
その揺らぎこそ、王の資質。
さあ……最後の儀式を始めよう。
『黒風の王』として完全に覚醒するために。』
アリアの瞳はどこか遠く、
まるで眠っているように虚ろ。
アリア
「……エリオン……
ロウガ……
アルフレッド……
ミラ……」
名を呼ぼうとするたび、
影がその声をかき消す。
ノクス
『王よ。
その名を忘れよ。
過去の光は不要だ。
お前は“影の王”となる。』
そして、アリアの胸元に黒風が集まり始める。
その影は、
明らかに“アリアではない何か”になろうとしていた――。
影界編の核心へ突入する重要回でした。
影王宮突入
ルージュの影軍勢との激突
ロウガの必殺技“影吼乱”
エリオンの覚醒前兆(危険な暴走)
ミラの残光による導き
そして 黒風の王アリア、初登場
ノクスによる“王冠の儀”開始
ここからアリア奪還戦が本格化し、
物語は一気にクライマックスへ。




