第三章:影界戦火編 第9話 影堕ちの王 ― 奪還戦、始まる
王が堕ちれば、光は消える。
しかし光を失った時こそ、
仲間の真価が問われる。
■ 影哭界 ― アリア喪失直後
黒い湖が大きく波打ち、
アリアを飲み込んだ影が静かに収束していく。
エリオンは膝をつき、
胸を掻きむしるように叫んだ。
エリオン
「アリアァァァァッ!!
返せ!! アリアを……返せよ!!」
涙ではなく怒り。
自分を責める怒声。
血片の光が赤黒く染まっていく。
アルフレッド
「エリオンさん、やめてください!!
血片の共鳴が……完全に暴走します!!」
ロウガ
「エリオン!! しっかりしろ!!
嬢ちゃんは死んじゃいねぇ!!
影に飲まれただけだ!!」
エリオン
「それが最悪なんだよ!!
影に飲まれたら……もう別人になる……!
俺は……守るって誓ったのに……!」
ロウガは怒鳴り返した。
ロウガ
「守りてぇなら立て!!
泣きたいのはみんな同じだ!!
だが泣き続けてたら……嬢ちゃんが戻る場所がねぇ!!」
エリオンは歯を砕けるほど噛みしめた。
エリオン
「……アリア……絶対に取り戻す……!」
■ ■ ノクスの宣告
影哭界の湖面がゆっくりと割れ、
影の王ノクスが姿を現す。
白い髪、黒紫の衣。
美しくも冷たく、感情の奥が読めない。
ノクス
『……王の喪失。
妾にとってはこの上ない祝宴よ。』
ロウガ
「てめぇ……嬢ちゃんを返しやがれ!!」
ノクスは薄く笑う。
『返す?
妾の“王冠”を受け入れたのはアリア自身。
お前たちの声より、妾の影を選んだのだ。』
エリオン
「嘘を言うな……!!
アリアは……弱ってただけだ……!!」
ノクス
『弱さも王の一部。
その弱さを抱き締めたのが妾。
そしてアリアは今……
“影の風”として生まれ変わりつつある。』
アルフレッド
「影の……風……?」
ノクスが静かに言葉を落とす。
『――黒風の王。
それが、アリアの新たな名だ。』
エリオン
「アリアは……アリアだ!!
お前のものになんて……させない!!」
ノクスの瞳が赤く光る。
『ならば来い。
第五階層――“影王宮アトラ・ノクティス”へ。
その先で、お前たちがどれほど無力か教えてやろう。』
影が渦を巻き、
ノクスは闇の回廊へ姿を消した。
■ ■ 《影使徒ルージュ》登場
ノクスの消失と同時、
影哭界の地面に裂け目が走る。
そこからひとりの女が歩み出た。
黒と深紅の軍装、
手には鎖でつながれた大鎌。
ルージュ
「影王ノクス様の使徒——
《影使徒ルージュ》(えいしと るーじゅ)。
王の奪還? 滑稽だね。」
ロウガ
「なんだこいつ……!」
ルージュの瞳は冷たく、
仲間たちを“獲物”として見ている。
ルージュ
「アリアはもう戻らない。
影の風となり、ノクス様の王冠となる。
あなたたちは……ただの不要物。」
エリオンの剣が影で震える。
エリオン
「……アリアを侮辱したら……殺すぞ。」
ルージュ
「あら怖い。でもね——
あなたたちには“王”がいない。
軍勢は王を失えば瓦解する。
さあ、絶望して?」
エリオンが飛びかかろうとした瞬間——
アルフレッド
「だめ!!
今のエリオンさんじゃ勝てない!!
血片が……アリア様の影に反応して制御不能に……!」
エリオンの呼吸が荒い。
ロウガが彼を押さえ込む。
ロウガ
「落ち着け!! 今は嬢ちゃんのために……!」
ルージュはつまらなそうにため息をつく。
ルージュ
「じゃあこうしましょう。
あなたたちの絶望を……“形”にしてあげる。」
大鎌を振り上げ、
影が巨大化しようとした——
しかしその瞬間、
空中で光が瞬いた。
■ ■ ミラの“残光”
影使徒ルージュが睨む。
ルージュ
「光……? この階層で……?」
湖の中心に、
微かな光点が揺れていた。
エリオン
「……ミラ……?」
アルフレッド
「ちがう……でもこれは……ミラさんの魔力の痕跡……!」
ロウガ
「あいつ……嬢ちゃんを守るために……
最後の命で……“道しるべ”を残したのか……!」
光点が揺れ、
アリアの名前を呼ぶように震えている。
エリオン
「ミラ……
お前……アリアのために……
まだ戦ってるのか……!」
アルフレッドは分析しながら言った。
アルフレッド
「これは……アリア様の“核心”へ続く座標……
つまり……
“アリア様が囚われている場所への道”だ!!」
ロウガ
「行くぞ!!
ミラの最後の意思だ!!」
ルージュが道を塞ぐように立ちふさがる。
ルージュ
「行かせないよ。
影王宮へ行っても……
あなたたちはアリアに殺されるだけ。」
エリオン
「それでも行く。
アリアを取り戻すまで……
俺たちの戦いは終わらない!!」
光点が道となり、
影哭界の奥へと続く。
こうして——
アリア奪還戦が正式に始まる。
“アリア喪失”後の奪還戦序章を描きました。
アリアが影に沈んだ喪失の余波
エリオンの暴走をロウガが止める
ノクスがアリアを「黒風の王」と呼ぶ
新敵《影使徒ルージュ》登場
ミラの残光=アリアへの道標
“影王宮”への進軍開始
ここから、影界は最深部へ進んでいきます。




