第三章:影界戦火編 第5話 影鏡界 ― 影のアリア、王を裁く
王は他者を照らす前に、
まず己の影と向き合わなければならない。
影は偽りなく、そして容赦なく“真実”を告げる。
■ 影界 第三階層《影鏡界》
アリアたちの前に立ちはだかるのは、
黒い鏡が無限に並ぶ“無窮の回廊”。
どの鏡にもアリアが映っている。
しかし——
すべてのアリアの瞳は、冷たい黒。
ミラ
「この階層は《影鏡界》。
“本人の影”を具現化し、戦わせる階層……!」
アルフレッド
「つまり、この鏡の向こうにいる……
黒いアリアが……!」
ロウガ
「嬢ちゃんの“影”かよ……」
エリオンがゆっくり剣を構えた。
エリオン
「アリア。
必ず……俺も隣に立つ。」
アリアは静かに首を振った。
「これは……私一人の戦い。
影は、私が生んだものだもの。」
エリオンの瞳が揺れる。
アリア
「でも……終わったら、また隣にいてね。」
エリオン
「……もちろんだ。」
■ ■ 影アリア、現る
鏡面が黒く波打ち、
そこから“影のアリア”が一歩踏み出した。
影アリア
「やっと来たのね。
本当のあなたに会う日を……
ずっと待っていたわ、アリア。」
その声はアリアと同じ、
けれどどこまでも冷酷で、美しい響き。
アリア
「あなたが……私の影。」
影アリアは微笑む。
「ええ。“王になれなかったアリア”。
あなたの中に隠れている、本物の弱さ。」
アリア
「……違う。
私は——」
影アリアは遮るように言った。
「あなたは迷っている。
ガルスを救えたと思ってるの?
帝国を救った?
そんなの、ただの自惚れよ。」
空気が凍りつく。
ミラ
「アリア様……聞いちゃダメです!!」
影アリア
「風の王?
笑わせないで。
あなたはいつも……自分のために戦ってる。」
アリア
「……!!」
影アリア
「“王である自分”に酔ってるだけ。
仲間を救いたい?
それも自己満足。」
アリアは言い返そうとしたが、
喉が震え、言葉が出なかった。
エリオンが吠えるように叫ぶ。
エリオン
「黙れ!!
アリアはそんな浅い王じゃない!!」
影アリアはゆっくり彼を見る。
「エリオン。“片翼”なんて呼ばれて喜んでるの?
あなたはただ、アリアに縋ってるだけ。」
エリオン
「っ……!」
影アリア
「“愛してる”と言う勇気もないくせに。」
エリオンの顔が強く歪んだ。
ミラ
「アリア様、影は攻撃してきます!!
迷った瞬間、心を乗っ取られます!!」
■ ■ 影アリアの“心剣”
影アリアは黒い霧を集め、
アリアと同じ形の剣を生み出した。
影アリア
「さあ……始めましょう。
アリア。“本物”の王を決める戦いを。」
アリアも静かに剣を構える。
アリア
「私は……影なんかに負けない。」
影アリアの瞳が鋭く光る。
「じゃあ証明してみせて。
あなたが本当に“王”なのかどうか。」
二人が同時に地を蹴った。
ガキィィィィィッ!!
黒と黄金灰色の風がぶつかり、
鏡の回廊に無数の亀裂が走った。
■ ■ 心の戦い
アリア
「私は……何も間違ってない!!
救いたいものを救ってるだけ!!」
影アリア
「そうね。
でも救えなかった者の数は……もっと多いわ。」
アリアの動きが止まり、
心臓が強く締めつけられる。
影アリア
「帝国で死んだ者達は?
あなたの選択で救われなかった人は?
その罪、全部“風に流して”逃げてるだけ。」
アリア
「……やめて……!」
影アリア
「王なら全て背負いなさい!!」
ザシュッ!!
影アリアの剣がアリアの肩を切り裂いた。
黒い血が零れる。
エリオン
「アリアッ!!」
アリア
「私は……逃げてなんか……!」
影アリアは耳元で囁く。
「あなたは……“王になりたがっている子供”なのよ。」
その瞬間、アリアの表情が歪み——
剣が大きく揺らいだ。
■ ■ 影の王ノクスの囁き
鏡の上空から、
低く美しい声が重なった。
ノクス
『……王よ。
影は、あなたの真実。
この影を斬れなければ、世界は救えぬ。』
アリアは震えた手で剣を握り直した。
アリア
「私は……私は……!」
影アリアは冷たく笑う。
「ほら、言ってごらんなさい。
あなたは何者?」
アリアの目に、迷いと痛みが浮かぶ。
エリオン
「アリア!!
お前は……お前は俺が見てきた……!!
誰より優しくて強い——!!
“本物の王”だ!!
迷うな!!」
アリアの瞳が震え、
風がわずかに動いた。
影アリアは剣を振り上げる。
「決着をつけましょう……アリア。」
アリアも剣を構え直し——
「私は……!
“王”として——!!」
黄金灰風がアリアを包んだ。
アリアと“影のアリア”の激突回でした。
影界第三階層《影鏡界》突入
アリアの影が、アリアの“罪・弱さ・迷い”を突く
ロウガとアルフレッドも影を受ける
エリオンがアリアを奮い立たせる
ノクスが影の真理を語る
心の戦いの最初の衝突が発生
次回はいよいよ、
アリアと影アリアの戦いが決着へ向かいます。




