第三章:影界戦火編 第4話 深淵回廊 ― 心を喰らう影と、エリオンの堕落
王は、敵を斬る者ではない。
仲間の影と向き合い、
その心を守る者だ。
だが——王といえど、人である。
■ 影界 第二階層《深淵回廊》
階段を下りると、世界は再び歪んだ。
そこは巨大な“螺旋の回廊”。
空も壁も床も存在せず、
ただ、黒い霧に浮かぶ道が続いている。
ミラ
「……ここは……“心を試す階層”……」
アルフレッド
「記録に残ってる……
影界第二階層《深淵回廊》。
記憶を喰らい、心を削り取る……」
ロウガ
「また変なとこに来ちまったな……」
アリアは、道の中央に漂う“光の欠片”に気づいた。
アリア
「……記憶の破片?」
触れようとした瞬間、
ミラが強く腕をつかむ。
ミラ
「アリア様!!
絶対に触れてはいけません!!
あれは“心の記憶を抽出する影”です!!」
アリア
「……なるほど。
影界は、心そのものを武器にしてくるのね。」
■ ■ 影の侵食 ― ロウガの過去
突如、ロウガが膝をついた。
ロウガ
「……うっ……なんだ……これ……!」
影がロウガの足元に広がり、
そこから“人影”が立ち上がった。
ロウガ
「やめろ……見るな……!」
アリア
「ロウガ!!」
影は、
かつてロウガが守れなかった仲間たちの姿をしていた。
“ロウガ……なぜ助けなかった……”
“お前が裏切った……”
“俺たちを見捨てた……”
ロウガ
「違う……違うんだ……!!
俺は……俺は……!!」
アルフレッド
「ロウガさん! 影の幻覚です!!
信じないで!!」
だがロウガの瞳は揺らいでいた。
アリアは一歩踏み出し、
ロウガの肩を掴み叫んだ。
「あの人たちは、あなたが守れなかったんじゃない。
“あなたを守るために戦った”のよ!!」
ロウガ
「……っ……アリア……」
アリアの風がロウガの周囲の影を吹き飛ばし、
幻は消えた。
ロウガは背を丸め、涙を落とした。
ロウガ
「もう……全部、背負って生きるしかねぇと思ってた……
でも嬢ちゃんに言われると……肩が軽くなるんだよ……」
アリア
「あなたの影は、私が一緒に背負うわ。」
ロウガは照れくさそうに顔を背けた。
■ ■ アルフレッドの“隠された影”
次にアルフレッドの足元から影が伸びた。
アルフレッド
「えっ……? 僕……?」
影は“母親”の声で囁いた。
“あなたは弱い子……
誰かに依存しないと何もできない……”
“逃げてばかりの子……”
アルフレッド
「……そんな……!」
ミラ
「アルフレッド君!! 幻よ!!」
アリアは優しく微笑んだ。
「アルフレッド。
あなたは弱くなんかない。
誰よりも他者を信じて、
一緒に歩ける強さを持ってる。」
アルフレッドは涙を流しながら言った。
「アリア様……
僕……強くなります……!
あなたの風と一緒に……!」
アリア
「ええ。あなたはもう仲間よ。」
影が霧散した。
■ ■ エリオン ― 血片の暴走
しかし次の瞬間——
エリオンが苦悶の叫びを上げた。
エリオン
「ぐあああああああっ!!」
血片が真紅に脈動し、
黒灰の翼が暴れ、影を引き寄せる。
ミラ
「だめ!!
影界の負の魔素が血片に直結してる……!!
このままじゃエリオン様が“影に堕ちる”!!」
アルフレッド
「術式が……飲まれてる……!!」
ミラの魔導陣が軋み、
また額から血が流れた。
ミラ
「エリオン様……!!
お願い……耐えて……!!」
エリオン
「ミラ……。
もう……無理だ……
俺は……影に引かれて……!!」
影界の風が、
エリオンを飲み込もうと手を伸ばす。
アリアはエリオンの前に飛び込んだ。
「私はあなたを守る!!
絶対に渡さない!!
影界にも……“私の片翼”は渡さない!!」
エリオンの目に光が戻り、
彼は震える声で言った。
「アリア……
お前が呼ぶ限り……
俺は……戻る……!」
アリアがエリオンの胸に手を当てると、
血片の輝きが弱まった。
ミラ
「……アリア様の“意志”が……
血片の暴走を止めてる……!?」
アルフレッド
「これは……王と片翼の……
“共鳴”……!!」
風が二人を包んだのは、
この影界には存在しないはずの“光の風”だった。
■ ■ ノクスの“問いかけ”
その時、
深淵の奥から声が響いた。
『……王よ。
心とは……光か、影か。
誰を救い、誰を捨てる?』
アリア
「全員救う。
私はそれしか選ばない。」
ノクスの声が低く笑った。
『全てを救おうとする王ほど……
深い影を生む。
お前が踏み出すたびに……
誰かが暗闇に落ちよう。』
アリア
「そんな未来、私が断ち切る!!」
『ならば、試してみせよ——
《第三階層・影鏡界》でな。』
深淵回廊の終端で、
巨大な“鏡の門”が開いた。
その鏡に映っていたのは——
アリア自身の姿。
エリオン
「アリア……
お前の影が……門の向こうに……!」
ロウガ
「こりゃ……ヤバいぞ……」
ミラ
「アリア様の“影の分身”……
影界が王に対して用意する最大試練……!」
アリアはまっすぐ鏡の中の“影のアリア”を見据える。
「——行くわ。
自分の影を、断ち切るために。」
光の風が、影界に確かに吹いた。
影界第二階層の試練を中心に描きました。
ロウガの過去の影
アルフレッドの心の傷
エリオンの血片、影に堕ちかける
ミラの命を削る封印術
アリアが仲間を守る姿勢が確固に
影界の王ノクスが“選択”を突きつける
次なる試練は《アリア自身の影》との対決
影界はアリアの“心”そのものを飲み込もうとしており、
物語はさらに深い層へ進みます。




