第二章:王の道、灰より始まる 第26話 風の王、歩き出す ― 新たな旅路と第三章への序章
人が国を作り、
国が歴史を作り、
歴史が“王”を作る。
だが王は、歴史に従うだけではない。
未来を切りひらく者だ。
■ 帝国・中央広場 ― 戦後復興会議
血渦宮崩壊から三日後。
帝都では暫定統治の会議が開かれていた。
フェンリスとアリアは、
帝国の要職者たちと向き合っていた。
老臣
「アリア王……
ガルス宰相亡き後、帝国をまとめられるのは
あなたしかおりません。」
若い将校
「皇帝陛下の最後の手紙も……
あなたを後継に指名する内容でした。」
アリアは静かに答えた。
「私は“帝国を支配する王”にはなりません。
でも、“帝国を導く友”にはなれます。」
広場にざわめきが走る。
アリアは続けた。
「帝国の未来は、帝国の民が作るもの。
私はその手助けをしたいだけ。」
フェンリスが口角を上げる。
「これぞ“意志の王”の言葉だ。」
老臣たちは深く頭を下げる。
「……その御心だけで十分でございます。」
帝国は、
アリアを“導き手”とする暫定体制へ移行した。
■ 生還したカイウス
その後、治療院を訪れたアリアたちは
驚くべき人物に再会した。
黒翼カイウス――
彼はまだ重傷だが、確かに生きていた。
カイウス
「……アリア王。
また……会うとはな。」
アリア
「生きててよかった……!」
カイウスは照れ隠しのように鼻を鳴らす。
「俺は不死身じゃないが……
お前と戦った程度では死なない。」
エリオン
「へぇ……負け惜しみにしか聞こえないな。」
カイウス
「なんだと、この小僧……!」
ミラが苦笑しながら宥める。
その後、カイウスは真剣な表情で言った。
「アリア。
お前の王道は……俺には眩しすぎる。
だが……帝国の民は、お前に救われた。
それだけは覚えておけ。」
アリアは微笑んだ。
「ありがとう、カイウス。」
■ エリオンの血片の“真名”
帝都を巡る途中、
エリオンがアリアの隣で急に足を止めた。
アリア
「どうしたの?」
エリオンは胸の血片を押さえた。
「……血片が……俺に“言葉”を返してきた。
まるで……名前を持つように。」
アリア
「名前……?」
エリオン
「“灰冠の片翼”……
それが……俺の血片の名だ。」
ミラ
「血片が自我を持ってる……!?
そんな……!」
アルフレッドは震えながら言う。
「つまり……
エリオンは“血ではなく意志を宿した存在”……
アリア様と同じ“王の系譜”に……?」
エリオンは真っ直ぐアリアを見る。
「アリア、俺はもう迷わない。
お前の隣で、この世界を守る。」
アリアの胸が熱くなる。
「エリオン……ありがとう。」
二人の距離が、
確かに近づいた瞬間だった。
■ フェンリスが託した武具
その夕刻。
フェンリスはアリアを帝都外の丘へ呼び出した。
フェンリス
「アリア。
これは我が一族に伝わる“風を導く盾”だ。」
彼が差し出したのは、
銀と灰の紋章が刻まれた美しい盾。
《灰狼の風盾》
フェンリス
「風の王、お前は“風の刃”ではなく、
“風の意志”を持っている。
なら、守る力も必要だ。」
アリア
「……こんな大切なものを?」
フェンリス
「大切だから託す。
お前には、それだけの価値がある。」
アリアは胸に盾を抱き、深く頷いた。
「ありがとう……フェンリス。」
フェンリス
「王よ。
次の戦場は……“帝国の外”にあるぞ。」
■ レムルスの影、南方へ
帝都南端の廃塔の上で、
レムルスは赤い夕陽を眺めていた。
レムルス
「アリア。
君はますます強くなっていくね。」
影が塔の壁を伝い、
南方大陸を指した。
「でも……
世界はまだ救われていない。
“影界”が動き始めた。」
レムルスは不気味に笑い、
塔から飛び降りた。
■ 帝都の夜明け
翌朝。
アリアは帝都の城壁に立っていた。
風が静かに吹いている。
エリオン
「アリア……どこへ行く?」
アリアは南方を見つめて言った。
「第三章。
“影界”へ向かう。」
ロウガ
「また戦いか……嬢ちゃんらしいぜ。」
ミラ
「アリア様と一緒なら……どこまでも!」
アルフレッド
「僕も……あなたの王道を見たいから。」
アリアは振り返り、微笑んだ。
「私は風の王アリア。
次は……この世界の“影”を討つ。」
そして、
故ガルス宰相の墓標に向かい、
静かに誓った。
「あなたの帝国は、
必ず……私が守るわ。」
風が白い光を運び、
帝都に新しい朝が訪れた。
第二章:完
第二章 「王の道、灰より始まる」 はこれで完結です。
世界にはまだ語られていない巨大な“影”が潜み、
第三章ではアリアの王道が
さらに深く、広い世界へと広がります。




