第二章:王の道、灰より始まる 第25話 帝国の夜明け ― 静寂と涙、そして王の誓い
戦いの後に残るのは、
勝利でも敗北でもない。
“生き残った者たちの静かな息遣い”だ。
■ 血渦宮《崩壊の響き》
ガルスが倒れた瞬間、
血渦宮全体が大きく軋み、
赤黒い光が弱まり始めた。
ロウガ
「おいっ……崩れ始めてる!!」
ミラ
「この宮はガルスの血帝力で維持されていたんです……!
力が失われれば……自壊します!!」
アルフレッド
「早く——逃げないと……!」
エリオンは肩で息をしながら、
アリアの前に立つ。
「アリア……行くぞ!!
ここで倒れるわけにはいかない!!」
アリアは、一度だけガルスを振り返った。
その顔は安らかで、
まるで長い戦いから解放されたようだった。
アリア(心の声)
(ガルス……私はあなたを憎まない。
あなたが背負った帝国の痛み、
必ず……私が癒してみせる。)
風がアリアの外套を揺らす。
アリア
「行くわ! みんな……ついてきて!!」
■ ■ 帝都・中央街区へ脱出
崩れ落ちる血渦宮から、
アリア隊は走り続けた。
天井が落ち、
赤黒い柱が裂け、
巨大な血の翼の残骸が崩れ落ちる。
ロウガ
「こっちだ!! まだ抜け道が残ってる!!」
ミラ
「魔力が……薄まってる……
もう血脈が暴走してない……!」
アルフレッド
「ガルスが……止まったから……」
エリオンはアリアの手を離さずに走った。
エリオン
「まだ立てるか……アリア……!」
アリア
「ええ……あなたが隣にいるもの。」
その言葉に、
エリオンの頬がわずかに赤く染まった。
■ ■ 血渦宮 崩壊
最後の外壁を抜けると、
背後で音を立てて宮が沈み始めた。
巨大な血霧の柱が消え、
帝都の空はようやく本来の青を取り戻す。
ミラ
「消えていく……
血の呪いが……消えていく……!」
ロウガ
「ああ……長い悪夢が……終わったんだな……」
アリアは深く息を吸った。
(帝国が……生まれ変わる……
でも、これは終わりじゃない。
始まりなんだ。)
風がそっと吹き、
アリアの頬を撫でた。
■ ■ 帝都・中央広場
無傷ではないが、
広場には生き残った民と兵が集まっていた。
その中心に——
フェンリス軍が立っていた。
フェンリス
「アリア!!」
アリア
「フェンリス……!」
フェンリスは安堵のため息とともに笑った。
「生きていたか。
王が軽々と死ぬなど、似合わんからな。」
ロウガが叫ぶ。
「おっさん、お前も無事かよ!!」
フェンリス
「当然だ。
帝都の外は《血殉騎》の残滓で荒れていたが、
我が軍が殲滅した。」
ミラ
「フェンリス様……!」
アルフレッド
「タスカル……」
フェンリスはアリアの肩に手を置く。
「お前が倒したんだな、ガルスを。」
アリアは静かに頷いた。
「彼は……ただ、背負いすぎていただけ。」
フェンリスは瞳を細める。
「王の言葉だな。」
■ ■ レムルスの影
広場の隅。
瓦礫の上に腰かけ、
レムルスが足を組んでいた。
その姿は誰にも気づかれていない。
レムルス
「……やれやれ。
意志の王が“血帝”に勝つとはね。」
影が彼の背で揺れる。
「さて……次は“王の孤独”をどう壊していこうか。
楽しみだよ、アリア。」
レムルスは風に紛れて消えた。
■ ■ 皇帝の最後の手紙
その夕刻。
帝都再建の混乱が少し落ち着いた頃——
アリアの元に、皇帝直筆の封書が届けられた。
フェンリス
「……皇帝の印章だ。」
アリアは震える手で封を開いた。
そこには、
丁寧な筆跡でたった一文――
“帝国を救える唯一の王は、あなたです。”
――カリオス三世
アリアはその場に膝をついた。
(皇帝は……
最初から……
私を……信じてくれていた……?)
ミラ
「アリア様……!」
ロウガ
「おい、しっかりしろよ……」
アルフレッドは胸に手を当てた。
「皇帝陛下……最初から……
本当に……アリアを……」
エリオンはアリアの肩に手を置いた。
「アリア……
陛下は……お前を選んでいたんだ。」
アリアの目から、
静かに涙がこぼれ落ちた。
「……陛下……
私……必ず……帝国を……
あなたの想いごと……守ってみせます……」
風がその誓いを受け取るように吹いた。
■ ■ 帝国の夜明け
翌朝。
帝都の空は曇天だったが、
その隙間から一筋の光が差し込んでいた。
ミラ
「……朝日……」
ロウガ
「血の霧が消えて……
ようやく、空が見えたな。」
アルフレッド
「帝国……生き返ったんだ……」
エリオンはアリアの横に立つ。
「アリア……
ここからが本当の“王の戦い”だな。」
アリアは強い目で空を見上げた。
「ええ。
帝国も、世界も……
まだ私たちを必要としてる。」
そして、
胸に手を当てて宣言した。
「私は、風の王アリア。
この世界の痛みを、
ひとつずつ癒していく。」
第二章の静かなクライマックス。
第二章のテーマだった
「意志 vs 血」
はアリアの勝利に終わり、
しかし影はまだ世界に残ります。




