第二章:王の道、灰より始まる 第21話 血翼の宰相 ― ガルスの真の姿
血は重い。
血は呪いにも、王権にもなる。
その“血”をどう扱うかで、
国の未来は決まる。
■ 血渦宮《中心殿》
玉座の間は、鼓動しているように赤黒く脈打っていた。
ガルスの背から広がった“血翼”は、
まるで生き物のようにうねり、
天井を赤く染めている。
ロウガが低く唸る。
「うわ……なんだよあれ……
人の形じゃねぇ……!」
ミラは顔を青くして震える。
「宰相ガルス……
あれはもう“血を纏った人間”じゃない……
《血脈統合体》……!」
エリオンが歯を食いしばる。
「ガルス……
帝国に眠る血脈を全部、自分に統合したのか……?」
アリアの風が強くなる。
「そんな力を……
何に使うつもりなの……?」
ガルスはゆっくりと玉座から降りた。
■ 宰相ガルスの理想
ガルスは微笑んだ。
「アリア王。“意志の王”だと言ったな。
だが、意志ほど不確かなものはない。」
血翼が広がる。
「意志は裏切る。
意志は揺れる。
意志は壊れる。」
アリアは一歩踏み出した。
「……だからって“血”で縛るの?」
ガルスの瞳が光った。
「血は裏切らぬ。
血は継がれる。
血は国を一つに束ねる。」
アリアは首を振る。
「違う!
血で縛られた国なんて……
国じゃない!!」
ガルスは楽しそうに笑った。
「では、見せてもらおう。
血より強い意志を。」
■ 第一撃 ― 血翼の宰相
ガルスが腕を広げた瞬間、
血翼が刃の雨となって襲いかかった。
エリオンが叫ぶ。
「アリア、下がれ!!」
アリアは風を爆発させ、
その刃の雨をすべてはじき返す。
灰色の風が渦巻く。
「灰風障壁!!」
ガルスは笑ったように見えた。
「良い“王の風”だ。
だが——」
まるで瞬間移動のようにアリアの背後へ。
エリオンが目を見開く。
「はやっ……!!」
アリアは咄嗟に剣を振る。
しかし――
ガルスは風の壁を素手で掴んだ。
「風は無形だが……
血は形を持つ。」
ガルスは風の壁を握りつぶすように破壊し、
アリアを吹き飛ばした。
アリアが地を転がり、
身体を支える。
(重い……!
風が……押し返される!)
■ エリオン、限界の兆し
エリオンが血渦宮の血気に反応し、
胸を押さえて苦しみ出した。
「ぐっ……
血が……疼く……っ!」
ミラが駆け寄る。
「エリオン!?
帝国の血脈に……“呼ばれてる”……!」
ガルスが冷たく振り向いた。
「ほう……興味深い。
《灰冠計画》の“片翼”がここまで来るとは。」
エリオンは荒い息を吐きながら剣を構える。
「黙れ……!
俺は……アリアの隣に立つために……!!」
ガルスは薄く笑う。
「その意志が、血の前にどれほど持つかな?」
■ ミラとアルフレッドの役目
ミラはアルフレッドの手を握った。
「アルフレッド、あなたの“血導体の特性”……
ここで役に立つかもしれない!」
アルフレッドは震えながら頷く。
「やってみる……!
僕の力で……少しでもアリアを支える!!」
アルフレッドは光の術式を展開し、
アリアの風の流れを補強し始めた。
アリアの風が安定する。
「ありがとう……ふたりとも!!」
■ 第二撃 ― 王式と宰相式
アリアが立ち上がり、剣を構えた。
「王式・灰迅双牙!!」
風刃が双方向からガルスへ迫る。
ガルスは血翼を大きく広げ、
その一撃を“飲み込むように”吸収した。
「残念だな、アリア王。
血は風を“形”として取り込める。」
ガルスが手をかざす。
「宰相式・血鎖の蛇!!」
赤黒い鎖が無数に伸び、
アリアの身体を捕らえようとする。
エリオンが横から斬る。
「アリアを縛らせるか!!」
だが鎖は斬られてもすぐ再生する。
ミラが叫ぶ。
「再生……!?
完全に“帝国の血”が意思を持ってる……!」
アリアの風が弱まってくる。
(このままじゃ……
押し負ける……!)
ガルスの声が響く。
「さあ、アリア。
“選べ”。
風で帝国を救えるのか?
それとも血に飲まれるか?」
アリアは叫ぶ。
「私は……意志で!!
みんなを……帝国を……救う!!」
風が灰と共に爆発する。
■ ガルスの告白
ガルスは一瞬、風に押され後退した。
そして小さく呟いた。
「……やはり、お前は“皇帝派”の理想ではない。
だが——
“皇帝の望んだ王”ではあるのだろう。」
アリアがはっと振り向く。
「皇帝……が?」
ガルスの瞳が細まった。
「カリオス陛下は、お前に出会う前から……
“ある願い”を持っていた。」
アリアの心臓が跳ねる。
「願い……?」
ガルスは血翼を広げ、
赤い王座の前に立った。
「――『帝国を終わらせてくれ』
それが陛下の本当の願いだ。」
アリアが息を呑む。
「え……終わらせる……?」
ガルスは微笑む。
「帝国はもう保たない。
皇帝はそれを理解していた。
だが、自分では終わらせられなかった。
だから“風の王”……
お前にその役目を期待したのだ。」
アリアの目から、震えが伝わる。
(皇帝が……帝国の終わりを……
私に……望んでいた……?)
ガルスは血翼を大きく広げて言った。
「さあ、王よ。
帝国の命運を決めるのはお前だ。
終わらせるか、救うか。
“意志の王”ならば選べ。」
アリアの頬を風が打つ。
ここからいよいよ、
第二章・最終決戦へ突入します。




