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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第二章:王の道、灰より始まる 第20話 血渦宮《けつかきゅう》へ ― 王、帝国の心臓へ突入す

帝国の心臓が脈を打ち、

世界の血が逆巻く時、

王は中心へ歩み出す。

恐れではなく、

意志のために。

■ 帝都中心部 ― 赤黒い渦


帝都の中央――皇帝宮と宰相府が並ぶ地区は、

今や“異形の宮殿”へと変貌していた。


赤黒い魔素が渦を巻き、

建物がねじれ、

まるで“巨大な心臓”が脈打つように震えている。


ミラが息を飲む。


「……これが……《血渦宮けつかきゅう》……?

 帝国の中心が……魔導器みたいに……融合してる……!」


ロウガが拳を握りしめる。


「こんな化け物じみたもん、帝国の仕業じゃねぇぞ……!」


エリオンが眉をひそめ、

黒い渦を見つめて言った。


「これは……“帝国の血脈”だ。

 ガルスが帝国中に眠る“血の記憶”を強制起動している……」


アリアが剣に手を添える。


「帝国中の“血”を……

 使って何をする気……?」


エリオンは小さく答えた。


「“新しい帝国”を生む気だ。

 血による帝国……

 つまり“血で支配された大陸”を。」


アリアは肩を震わせた。


「そんな、血で縛られた世界なんて……!

 絶対に許されない!!」


その瞬間、風がいっそう強く吹き荒れた。


「行くわ。

   血渦宮の中心へ。」


■ 獣王連邦の援軍


その時、遠方から多数の影が走り込んできた。


銀の狼の影。

白い獣人の斥候。

そして――


「アリア!!」


フェンリスが軍勢を率いて現れた。


ロウガが叫ぶ。


「獣王!! 来てくれたのか!!」


フェンリスは帝都に渦巻く血霧を見て、

牙をむき出しにした。


「この悪臭……

 “帝国の死臭”だ。

 放っておけば大陸ごと呑まれる。」


アリアは頷き、立ち位置を整えた。


「ありがとう、フェンリス。

 でもここから先は……私たちが行く。」


フェンリスは笑う。


「わかっている。

 王の戦場は、王が決めるものだからな。」


そして囁くように付け加えた。


「アリア。

 心の“揺れ”を持ったままでは勝てんぞ。」


アリアはハッと息を呑む。


(……まただ。

 心を見抜かれている……)


フェンリスは続ける。


「揺れるのは悪いことではない。

 だが、その揺れを“剣”に変えられるのは——

 お前だけだ。」


アリアは深く息を吸った。


「……ありがとう。」


■ レムルスの“王の心試し”


血渦宮に近づいた瞬間、

影がゆらりと揺れた。


アリアの横へ、

まるで歩いてきたかのようにレムルスが現れる。


ミラが悲鳴をあげる。


「ま、また!?

 どうしてこの人、どこにでも出てくるの……!」


レムルスはほほえんだ。


「王よ。

 ついに来たね。

 “帝国の心臓”に。」


アリアは剣先を向ける。


「邪魔をする気ね。」


レムルスは首を振った。


「邪魔じゃない。

 “試す”だけだ。」


影が地面に広がり、

アリアとレムルスだけが異空間に引きこまれる——

かのように見えたが、

周囲の仲間はまったくそれに気づかない。


(……精神世界!?)


レムルスが囁く。


「アリア。

  お前が最も恐れているものは何だ?」


アリアの心臓が跳ねた。


影に映り込む。

帝国の民が叫んでいる姿。

傷つく仲間たち。

エリオンの倒れる姿。

そして――

自分自身が王座で“独り”になっている姿。


アリアの声が震えた。


「……私は……

 “誰も救えなくなる未来”が怖い。」


レムルスは笑った。


「ならば教えてやるよ。

 王は“孤独”だ。

 王は“救えない”。

 王はいつか“誰かを切り捨てる”。

 これが世界の理だ。」


アリアは目を見開く。


「そんなの……認めない!!

 私は——

 救える限り、救う!!

 それが……私が選んだ“王の道”よ!!」


影が砕けた。


レムルスは微笑んで影へ消える。


「——なら見せてごらん。

 “孤独を越える王”。」


風がアリアの背中を包んだ。


■ 血渦宮 入口


アリアが戻ると、

エリオンが心配そうに彼女を見つめていた。


「アリア……大丈夫か?」


アリアは微笑んだ。


「ええ。

 あなたが……呼び戻してくれた気がした。」


エリオンは少し照れたように目をそらす。


(守りたい。

 アリアを……どんな影からも。)


血渦宮の前に立つアリア。

その背にエリオン、

ロウガ、ミラ、アルフレッド。


そしてフェンリス軍が後方を固める。


風が吹き抜ける。


「さあ——行こう。

  帝国の心臓へ。」


アリアが一歩踏み出すと、

血渦宮の壁が血管のように震え、道が開いた。


アリア隊はその赤黒い道へ進む。


■ 宮内 ― 血の回廊


中は……まるで帝国の千年の歴史が

“血の形”で渦巻いているかのようだった。


過去の王たちの影。

帝国滅亡の記録。

反乱の血潮。

そして帝国が犯した罪の記憶。


ミラが泣き出しそうになる。


「ここ……

 帝国の“記憶そのもの”……!」


エリオンは胸の奥が焼けるような痛みに苦しむ。


(くそ……血が……疼く……!

 俺は……この宮に……“選ばれた血”だから……)


アリアはエリオンの手をそっと握った。


「大丈夫。

 ここに“意志”で立てるのは、あなただけ。」


エリオンはその手を握り返す。


「アリア……

 必ず、お前を守る。」


■ 血の王座


長い回廊を進んだ先、

巨大な“赤い玉座”があった。


その玉座に

ひとりの男が座っていた。


銀髪。

冷たい紅の瞳。


——宰相ガルス・ハーゲン。


「ようこそ、アリア王。」


アリアは剣を握りしめる。


「ガルス……

 あなたは帝国を血で染めた。

 どうしてここまで……!」


ガルスは静かに立ち上がった。


「私は帝国を“救う”ためだ。

  血の国は、血でしか統一できない。」


アリアは首を振る。


「人を傷つける国なんて、救いじゃない!!」


ガルスはゆっくりと手を広げる。


「なら問おう、アリア。

 “意志の王”よ。」


赤黒い血が渦を巻く。


「血を否定して世界を救えるのか?」


アリアは迷わず答える。


「救える!

  私は——血じゃなく、“意志”で救う!!」


ガルスの唇が歪む。


「では、証明してもらおう。

 “帝国を救う王”かどうか。」


血渦宮が震え、

ガルスの背に巨大な“血の翼”が広がった。


アリアの風が、灰と共に渦を巻き始める。

ここから第二章のラストバトルです。

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