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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第二章:王の道、灰より始まる 第18話 皇帝の布告 ― 帝国を二つに割る言葉

国を裂くのは外の剣ではない。

ただ一つの“言葉”が帝国を二つに分かつ。

その瞬間、歴史は音を立てて動き出す。

■ 帝国・炎冠宮《王座の間》


蒼い炎の灯る王座の間に、

帝国中枢の重臣たちが集められていた。


空気は張りつめ、

誰もが噂していた。


――皇帝が「布告」を出す、と。


重臣のざわめきが渦巻く中、

皇帝カリオス三世がゆっくり立ち上がった。


鎧ではなく、白と金の礼服。

千年の帝国を象徴する威厳をまとう。


王座から響く声は、

静かでありながら鋼のように強かった。


「帝国臣民に告ぐ。」


空気が変わった。


「宰相ガルス・ハーゲンは、

 禁じられた《血術》を国家のためと偽り使用した。

 これは『禁血戒律』に対する重大な反逆である。」


重臣たちがざわめく。


皇帝は続けた。


「よって本日をもって――

  宰相ガルスを解任する。」


場が凍りついた。


「そして帝国は……

 “血”ではなく“意志”のもとに立ち返る。

 これをここに布告する。」


歴史的な瞬間だった。


だが同時に――

これは帝国を完全に二つへ割る宣言でもあった。


■ 宰相ガルスの反撃


その布告は、宰相府へ瞬時に伝わった。


ガルスは書簡を握りつぶし、

机を叩きつけた。


「……ついに、やったな……カリオス!!」


副官が震えながら問う。


「宰相……これでは我々は……!」


ガルスは狂ったように笑い、


「帝国は、皇帝のものではない。

  “血を継ぐ者”のものだ。」


そして叫んだ。


「《血殉騎けつじゅんき》――

 全隊、起動!!」


赤い魔導陣が次々に立ち上がり、

帝都地下で封じられていた“影の軍団”が目を開いた。


帝国は完全に、二つに割れた。


■ 帝国各地での衝突


布告が出たその日のうちに、

帝国全土で皇帝派と宰相派がぶつかり始めた。


・皇帝派:第一軍団、第四軍団、情報局

・宰相派:血術研究局、魔導諜報軍、血殉騎


帝国は静かに、しかし確実に戦乱へ踏み込む。


■ 灰冠砦 ― 不吉な報せ


夕刻。

灰冠砦に一人の伝令が馬を飛ばし、

血だらけの状態で倒れこんだ。


「た……大変です……

 アリア王……!」


アリアが駆け寄る。


「落ち着いて。何があったの?」


伝令は震える唇で言った。


「帝都で……“内戦”が……!

 宰相軍が皇帝派を襲撃して……

 帝国が二つに割れ……!」


アリアの胸が締めつけられる。


(ついに……きた……

 帝国が……崩れていく……)


エリオンが顔を青ざめさせた。


「帝国が……内戦……」


ロウガは怒りに叫ぶ。


「ざまあみろ……って言いてぇところだが……

 これ、こっちにも影響来るな……!」


ミラが震える。


「帝国が混乱したら……

 ガルスは確実にアリア様を狙います……!」


アリアは拳を握った。


「戦いが……避けられなくなってきた。」


だが――


その時、アリアは振り向いた。


「エリオン……?」


エリオンが壁に手をついていた。


額に汗。

呼吸が荒く、胸を押さえている。


■ エリオンの異変


アリアが急いで駆け寄る。


「エリオン、どうしたの!?」


エリオンは苦しげに言った。


「……血が……騒いでる……

 “灰冠の血片”が……反応して……

 帝国の“内戦の血”が呼びかけてくる……!」


ミラが青ざめた。


「まさか……

 《灰冠計画・第零試験体》としての血が……?」


エリオンは壁に頭を押しつけるようにして叫んだ。


「アリア……近づくな……

 俺の中の“血”が……

 お前を……獲物として……!!」


アリアはその手を掴んだ。


「そんなものに……負けないで!!

 エリオンは“人”よ!!

 血じゃなく、意志で生きてる!!」


エリオンの瞳が揺れる。


(アリア……

 君は……どうして……そんなに……)


風がそっと二人を包み込む。


エリオンの呼吸が少しずつ落ち着いていく。


アリアは胸元に手を置き、静かに言った。


「あなたは私の“片翼”。

 絶対に失わない。」


エリオンは目を閉じて、苦しく笑った。


「……俺は……君のために……

 まだ、折れられない。」


■ ミラとアルフレッドの決断


アリアとエリオンが離れた後、

ミラはアルフレッドと向かい合った。


「アルフレッド……

 あなたの刻印も反応し始めてる。

 このままじゃ危険よ。」


アルフレッドは苦しげに胸を押さえる。


「でも……

 アリアのそばで戦いたい……!」


ミラは決断したように言った。


「いえ――

 “あなたは守られなければならない”。

 今のあなたを利用しようとする者がいる。」


「レムルス……?」


ミラは静かに頷く。


「あなたは“アリアを揺らす道具”にされる。

 だから守るの。

 王のためでも、自分のためでもなく――

 あなたが“あなた”でいるために。」


アルフレッドは涙をこぼしながら言った。


「……ミラ……

 僕を……守ってくれる……?」


ミラは優しく彼の手を握った。


「ええ。

 あなたはもう“血の兵器”じゃない。

 アリア様の民よ。」


■ 皇帝布告から半日後


砦に新たな伝令が到着した。


「アリア王!!

 皇帝派が押されています!!

 帝都の治療院が……血殉騎に包囲され……!」


アリアは息を呑む。


「カイウス……!」


彼は今、治療院にいるはずだ。


エリオンが言う。


「……ガルスは“証言”を消す気だ。

 黒翼の敗北は帝国の象徴。

 そしてカイウスは“真実”を知っている。」


アリアは決断した。


「帝都へ向かう。」


ロウガが叫ぶ。


「正気か!?

 今の帝都は地獄だぞ!!」


アリアは静かに言う。


「それでも……

 助けなきゃいけない人がいる。」


風が強くなり、

アリアの外套を揺らした。


「風が言ってるの。

 “今行け”って。」


エリオンも剣を握りしめる。


「俺も行く。

 君の隣に立つ。」


ミラも手を挙げる。


「アリア様を止められる人はいません。

 なら、一緒に行きます!」


アルフレッドも震えながら言う。


「僕だって……アリアを支えたい!」


アリアは笑った。


「ありがとう、みんな。」


こうして……


灰冠王アリア率いる直轄隊は、

 ついに帝都への“逆襲”へと動き出す。


帝国最大の内乱の中心へ――

風の王が飛び込む。

いよいよ物語は

帝国大戦編(前半) に突入します。

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