表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/75

第二章:王の道、灰より始まる 第17話 帝国分裂 ― 皇帝派と宰相派の静かなる断絶

国が壊れる時は音を立てない。

外からの侵略ではなく、

内側の“意志の断裂”が国を沈める。

■ 帝国・炎冠宮《皇帝の私室》


皇帝カリオス三世は、剣を膝に置いたまま黙していた。

その剣は“帝国建国の剣”――

本来、帝国の象徴であるそれが、

今は静かに眠る。


側近が焦ったように駆け込んだ。


「陛下……!

 宰相ガルスが《血の子ら》を起動させたとの情報が……!」


皇帝は顔を上げ、短く言った。


「ガルスは、ついに……『禁血戒律』を破ったか。」


側近が言う。


「このままでは帝国が……!」


皇帝はゆっくり立ち上がり、

窓の外――燃えるような帝都の夜景を見つめた。


「帝国は、“血の帝国”へ戻ろうとしている。

 千年前の、最悪の姿に。」


側近が問う。


「陛下は……どうされるおつもりですか?」


皇帝は静かに宣言した。


「私は、帝国を“止める”。

  そのための布告を準備しよう。」


その目には……決意と、絶望が同居していた。


■ 宰相府・禁断の作戦室


一方、ガルスは赤い魔導陣の前に立ち、

第三の兵器を起動させていた。


「《血の子ら》は失敗……

 やはり“意志の王”には、血の亡霊は通じぬか。」


ガルスの前に座る巫術師が震えて言う。


「まさか……陛下に逆らうおつもりですか……?」


ガルスは冷たく笑い、


「逆らわぬよ。

 私は“帝国そのもの”を守るだけだ。」


そして、さらなる禁忌の名を口にした。


「《血殉騎けつじゅんき》――起動準備。」


空気がひび割れ、禁血の陣が蠢きはじめた。


■ 帝国・治療院


黒翼カイウスが、ゆっくりと目を開いた。


医療官が驚く。


「黒翼様……意識が……!」


カイウスは苦しげに息をしながら言った。


「……アリア……

 あの王は……“風”ではない……」


医療官が困惑する。


「はい? 風ではないと……?」


カイウスは手を伸ばし、

自分の黒焔の残滓を見ながら呟いた。


「……あれは……“人の意志”そのもの。

 帝国の炎では……勝てぬ。」


そして、震える声で続けた。


「宰相に……伝えろ……

 アリアは、帝国を滅ぼす“魔王”ではない。

 ……『本物の王』だ、と。」


医療官は凍りついた。


■ 灰冠砦・夕暮れ


血の子らとの戦いから一日。

砦の雰囲気はどこか重かった。


アリアは塔の上で風に当たっていたが、

顔は青く、疲れが明らかに蓄積している。


フェンリスが背後から近づく。


「王よ、休め。」


アリアは無理に笑う。


「大丈夫よ。私は――」


「大丈夫ではない。」

フェンリスの声は厳しかった。

「血の影と戦い、

 心を揺さぶる影とも戦い、

 休む暇もなく、王として立った。」


アリアは少しだけ目を伏せる。


「まだ……立っていられるわ。」


フェンリスは鼻で笑った。


「そう言って倒れた王族を、何人も見た。

 倒れてからでは遅い。」


風がアリアの髪を乱す。


(……私は弱いのかな……

 レムルスに言われた通り……“揺らいでいる”のかな。)


フェンリスは静かに問う。


「アリア。

 “王である前に、人であれ”。

 人であることを忘れれば――

 影に心を食われる。」


アリアは小さく頷いた。


「……ありがとう、フェンリス。」


■ エリオンの異変


その頃、砦の中庭。


エリオンがひとりで剣を振っていた。

だが剣の軌道は乱れ、

額には汗がにじんでいる。


(……体が……重い……

 いや、違う。

 これは“血”が……反応している……?)


影がふっと、中庭に落ちた。


「……やあ、エリオン。」


レムルスだった。


エリオンは剣を構える。


「またか。」


レムルスは微笑む。


「君は、アリアの心の“片翼”だ。

 王が揺らげば、

 君もまた揺らぐ。」


エリオンは歯を食いしばる。


「お前の言葉遊びには飽きた。」


「そうかい?」

レムルスの声は楽しげだった。

「君は、アリアの“鍵”なんだよ。

 もし君の心を折れれば――

 王は確実に崩れる。」


エリオンの身体が冷えた。


(こいつ……

 最初から“俺”を狙って……!)


影が近づく。


「さあ、エリオン。

 君の“弱さ”、私に見せてごらん?」


その瞬間――

風が強く吹き、レムルスの影が揺れた。


アリアが駆け下りてきた。


「エリオン!!

 大丈夫!?」


レムルスは肩を竦めて後退した。


「……今日はここまで。

 王よ、君の“片翼”はとても脆い。

 守らないと折れてしまうよ?」


アリアは歯を噛みしめる。


「レムルス――

 エリオンには指一本触れさせない。」


レムルスは影に沈みながら笑った。


「楽しみだよ、アリア。

 “王の心”がどこまで耐えられるか。」


完全に消える。


エリオンは膝をついた。


「アリア……ごめん……

 俺、少し……弱ってる……」


アリアは彼を支えた。


「あなたは弱くなんてない。

 私の隣に立ってくれる。

 それだけで十分よ。」


エリオンは小さく笑うように息を吐いた。


(……アリア……

 俺は……君のために……)


夜風が揺れた。

物語の中心が“帝国の崩壊”と“アリアの心の疲弊”へとシフトしました。


アリアの周囲の“心”が少しずつ壊されていく――

第2章の緊張が加速します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ