第二章:王の道、灰より始まる 第12話 黒焔の刃 ― 空中決戦!王と翼の死闘
王は地を歩く必要はない。
空を奪われるなら、空そのものを取り戻せばいい。
――その瞬間、王は“風”になる。
■ 空が割れる
黒翼のカイウスが展開した“黒焔”。
それは炎でも風でもない。
光を吸い、空間を腐食させる“呪いの炎”。
カイウスが剣を振り抜き、黒炎が唸りを上げて迫る。
「消えろ、風の王――
黒焔は存在そのものを喰らう!」
アリアは風を蹴り、旋回しながら回避。
だが黒炎は追尾するように軌道を変えた。
(速い……!
ただの炎じゃない。
“意志”を持って追ってくる……!)
カイウスが空で笑う。
「黒焔は“王殺し”の炎。
お前の血そのものを狙うよう作られている!」
アリアの背筋に冷気が走る。
風が乱れ、灰がざわめく。
■ 地上の仲間たち
フェンリスが地上から叫ぶ。
「アリア!!
あれは帝国が千年前に封じた“呪炎”だ!
どんな魔法でも防げぬ!!」
ロウガは剣を握りしめ、悔しそうに空を見上げる。
「くそっ! 空に手が届かねえ……!」
ミラは焦りの中で祈るように手を組む。
「アリア様……どうか……」
アルフレッドは蒼ざめながらも叫ぶ。
「アリアは……
黒焔なんかに負けない!!」
エリオンは静かにアリアの気配を追っていた。
(アリア……
お前なら“限界”のその先へ行ける。)
■ 風が砕ける
空で黒焔が渦巻き、アリアに迫る。
アリアは風の盾を張るが――
バキィッ……!!
風壁が焼け崩れた。
(風が……溶けていく……!
本当に“存在”を喰らう炎……!)
カイウスが追撃。
「風の王。
お前の意志は認めよう。
だが帝国の“絶対”の前では無力だ。」
アリアは歯を食いしばる。
「無力なんかじゃない!
私は――守りたいものがある!!」
風が渦巻き、アリアの周囲に灰が舞い上がる。
しかし黒焔はその灰さえも喰らい始めた。
アリアの頬に一筋の傷。
黒焔が触れた部分が、灰色に腐蝕していく。
(このままでは……
本当に、存在ごと消される……)
■ “血の声”が囁く
そのとき――
アリアの意識の奥で声がした。
――“力”を求めよ。
血を解き放て。
お前は“神の器”だ。
(違う……私は……)
――黒焔を越えるには“血誓の第三段階”しかない。
導こうか?
アリアは首を振る。
「黙って……!!
私は神にはならない!!」
声は嘲笑う。
――ならば空で死ね。“人の王”。
アリアの風が乱れ、身体が落ち始める。
ミラが悲鳴を上げた。
「アリア様――っ!!」
フェンリスが叫ぶ。
「風を失うな!!!」
エリオンは静かに囁いた。
「選べ、アリア。
血か、意志か――
その先の“第三の道”を。」
■ 覚醒の瞬間
アリアは落下の中で目を閉じた。
風が泣き、灰が散り、空が赤く燃える。
(風は、私の翼。
灰は、私の誓い。
血は……過去。)
(でも――
私の“未来”は、私が選ぶ!!)
アリアの胸で紋章が輝いた。
灰色と金の光が混ざり、
風が轟き、空が震える。
カイウスが息を呑む。
「……まさか……
血誓の第三段階――“王式”!?」
アリアの身体が風に包まれ、
背に“灰金の翼”が形成される。
それは炎でも風でもない。
灰の光と金の光が重なる、“意志の翼”。
「灰誓・第三段階――王式《灰金翼》!!」
空が裂けるほどの光が走る。
■ 空の王 vs 焔翼の王
アリアは一瞬で高度を戻し、
黒焔を纏うカイウスへ風の刃を突き出す。
「私は血じゃない!
風でもない!
――“意志で立つ王”よ!!」
カイウスが黒焔を展開。
「黒焔万象――“黒翼乱葬”!」
黒炎が空中で無数の刃となり、
アリアに殺到する。
アリアは翼を広げた。
「灰金翼――“光灰環壁”!!」
灰と金の輪が展開され、
黒焔を押し返す。
衝撃で空が震え、雲が吹き飛んだ。
カイウスが歯を食いしばる。
「馬鹿な……
黒焔を防いだだと……!?」
アリアが突撃する。
「あなたが奪った空は――
この国と、獣王のものよ!!」
剣が閃き、
黒焔と風がぶつかる。
灰金の翼が煌き、
黒翼が散る。
そして――
アリアの剣がカイウスの黒炎翼を切り裂いた。
■ 黒翼の崩落
炎翼が消え、
カイウスは空でバランスを崩す。
「……馬鹿な……
黒焔が……“意志”に……負ける……?」
アリアは静かに答えた。
「意志は、炎より強い。
それを教えてくれたのは――
この国の人たちよ。」
カイウスは落下しながら、
初めて苦しげに笑った。
「……ならば……
お前は……本当に王なのだろうな……」
落下する彼を、アリアは風で受け止めた。
殺さなかった。
「あなたはただ、帝国に“操られていた”だけ。
だから私は殺さない。」
カイウスは驚いた目をし、
意識を失った。
■ 空に取り戻された勝利
地上から歓声が上がる。
フェンリスが吠えた。
「空を……取り返したぞ!!
灰冠の王、よくやった!!」
ロウガが泣きながら叫ぶ。
「嬢ちゃん……本物の王だ!!」
ミラは胸を押さえて涙を流す。
「アリア様……本当に……!」
アルフレッドは呆然とアリアを見つめ、
小さく呟いた。
「……綺麗だ。
あれが……人の王の力……」
エリオンは静かに微笑んだ。
(アリア……
その翼は、誰のものでもない。
お前自身の“選んだ力”だ。)
アリアはゆっくりと地上に降り、
皆の前で言った。
「空は、誰のものでもないわ。
だから――守るの。」
その言葉に、獣人も人も全てが息を呑んだ。
次章へ向けて、アリアは“空を守る王”として世界に名を刻みました。




