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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第二章:王の道、灰より始まる 第6話 灰冠の王、立つ ― 光と血のはざまで

血に生まれた者でも、血に従わなくていい。

人は、意志で立てる。

だから――王にもなれる。

夜明け直後。灰冠砦の門が静かに開いた。

冷たい風の中、一人の男が歩いてくる。

黒衣、蒼い瞳、雨に濡れた髪――エリオン・ヴァス。


彼が踏み入れた瞬間、砦中がざわめきの渦になった。


「帝国の監察官!?」「裏切り者か?」「いや、味方か……?」


ロウガが剣を抜いて走る。

「てめぇ……今さら何のつもりだ、エリオン!」


エリオンは止まった。

その瞳に、かつての冷酷さはなかった。

ただ、静かな決意だけが宿っていた。


「アリア・ヴァルステッドと話がしたい。」


「お前に話すことは――」


ロウガの怒声を遮り、アリアが現れた。

灰色の外套を羽織り、風をまとって。


「いいわ。通して。」


ロウガが食い下がる。

「嬢ちゃん、こいつは帝国だぞ!」


「でも、嘘はつかない人よ。

 ……嘘をつく必要のないほど、残酷だから。」


エリオンは苦く笑う。


「相変わらず、よく見ているな。」


■ 砦の会議室


静かな部屋の中。

アリアとエリオンは向かい合っていた。


「単刀直入に言う。」

エリオンが袋を机に置く。

中には黒い血液が詰まった魔導容器。


「これは帝国が“方舟計画”の復活に使おうとしている“血”。

 おそらく、お前の“同族”だ。」


アリアの胸が締めつけられる。


(……同族……?

 私と同じ“灰冠の血”を持つ者が、まだ……?)


エリオンは続けた。


「帝国はお前を討つのではなく、“取り込む”方に舵を切った。

 宰相ガルスは、“灰冠の王”を人工的に作ろうとしている。」


「……あの血管の中にいた声。あれは――」


「“灰冠の始祖の残響エコー”だ。

 神でも霊でもない。

 ――ただの“血に残った意識”だ。」


アリアは掌を握る。

紋章が熱を帯びた。


「私は、あれにはならない。」


「そうだ。だからこそ来た。」

エリオンはアリアを見つめる。


「お前に、“王になる覚悟”があるか確かめるためだ。」


アリアの視線が揺れた。


「王……?」


「国を持つ者、民を守る者。

 お前がそれを望むのなら、“血”にも“帝国”にも飲み込まれない力が必要だ。」


沈黙。


アリアはゆっくりと答えた。


「……私は神にはならない。

 血にも従わない。

 ただ――“人の王”になる。」


エリオンは、ほんの少しだけ微笑んだ。


「ならば、支援しよう。

 帝国ではなく、“アリア”に。」


■ 同時刻 ― 帝都郊外


黒衣の兵たちが進軍していた。

胸の紋章は赤い渦――“血導師団けつどうしだん”。


ガルスの命令で再編された、血誓専門部隊。

その先頭に立つのは、淡金の髪の少年。


「……アリア・ヴァルステッド。

 あなたを迎えに行きます。“方舟の器”として。」


少年の瞳に、感情はなかった。


■ 灰冠砦 ― 夜


アリアは砦の広場に立っていた。

兵たち、村人たち、避難民――

すべての“灰冠軍”が見守っている。


エリオンは遠巻きに腕を組み、ロウガはアリアの側に立つ。


アリアは一歩前に出て、旗を手に取った。

灰と銀の紋章が、炎の光で揺れる。


「私は、灰冠の血に生まれました。

 でも、その血に未来はありません。」


人々の顔が上がる。


「だから――私が創る。

 血ではなく、“意志”と“誓い”で結ばれた国を。」


風が吹く。

旗が大きくなびく。


「帝国が血で世界を統べるなら、

 私は意志で世界を照らす。」


その言葉に、砦の兵たちが息を呑む。


アリアは剣を抜き、天に掲げた。


「私、アリア・ヴァルステッドは宣誓する。

  血の王ではなく、意志の王として立つ。

  灰冠軍はここに、“アルメリア王国”の旗となる!」


沈黙の後――


「――王だ!」「アリア様が、王だ!」

「灰冠の王、万歳ッ!!」


砦が揺れるほどの歓声が響く。


ミラは泣きながら笑い、ロウガは叫び、

エリオンは静かに目を伏せた。


(……これでいい。

 “血の王”ではなく、“人の王”。

 彼女なら――世界を変えられる。)


だが遠く、風の中に不気味な気配。


――ザ…ザザザ…


空気が震えた。

帝国から来る血導師団の“呪い”の気配。


アリアは振り返る。

瞳が灰に光る。


「来る……“血の王を創りに”。

 なら――迎え撃つだけ。」


旗が大きくはためいた。


灰冠軍の戦いは、もう退くことはない。

アリアはついに“王としての宣誓”を果たし、

灰冠軍は正式に《アルメリア王国》として旗揚げしました。


一方で帝国は“血導師団”を差し向け、

アリアを“神の器”として回収する計画を本格化。


エリオンはアリアを選び、

ロウガとミラは彼女の隣で共に戦う道を選ぶ。


いよいよ、

血 vs 意志 の戦争が始まります。

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