表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/137

第五章:帝国動乱編 第21話 浸食 ― 自由を装う支配

自由は、

鎖で縛られるより先に、

笑顔で抱きしめられる。


守ると言われ、

整えると言われ、

導くと言われる。


そして、

気づいた時には――

選べるはずだった道が、

一つしか残っていない。

帝都。


公開討議所の評判は、

静かに変わり始めていた。


「建設的だ。」

「成熟している。」

「安心して参加できる。」


褒め言葉ばかりだ。


だが、

その裏で、

微細な変化が起きていた。


***


討議所・昼。


入口で、

新しい案内が配られている。


『円滑な議論のため、

 事前に論点整理シートの提出を推奨します。』


推奨。

強制ではない。


だが、

提出しない者の席は、

後方に回された。


***


長机。


議論が始まる。


発言者の多くが、

似た言葉を使っている。


「合理的に考えれば。」

「全体最適の観点から。」

「感情論を排して。」


議論は、

滑らかだ。


だが、

角がない。


***


若い職人が、

手を挙げる。


職人

「……でも……

 現場では……

 違う……。」


運営補助員

「……論点を……

 簡潔に……

 お願いします。」


職人

「……簡潔に……

 できない……

 から……

 困って……。」


運営補助員

「……感情的な……

 表現は……

 控えて……

 ください。」


空気が、

一段、

冷える。


***


法学者が、

発言する。


法学者

「……制度は……

 人を……

 守るために……

 あります。」


法学者

「……例外を……

 多く……

 認めると……

 秩序が……

 壊れる……。」


頷きが、

連鎖する。


反論は、

出ない。


***


その様子を、

アリアは、

壁際から見ていた。


エリオン

「……静かだな。」


アリア

「……静かすぎる……。」


エリオン

「暴力はない。」


アリア

「……声が……

 減ってる……。」


***


数日後。


別の都市の討議所。


同じ書式。

同じ言葉。


運営マニュアルが、

非公式に共有され始めていた。


誰が作ったかは、

分からない。


だが、

“正しい進め方”として、

広がっていく。


***


評議院。


反王派の一人が、

報告を読む。


反王派

「……討議所は……

 安定しています。」


反王派

「過激な……

 意見も……

 抑制され……

 秩序的だ。」


第一評議員

「……問題は……

 ない……

 ということか。」


反王派

「はい。」


その言葉に、

微かな笑みが浮かぶ。


***


夜。


討議所の外。


初期から通っていた

農民が、

入口で足を止める。


農民

「……最近……

 話しにくい……。」


同行していた友人

「……変なこと……

 言うと……

 浮く……

 からな……。」


二人は、

入らずに帰った。


***


その夜。


アリアは、

机に向かい、

報告書を並べていた。


共通点。


声の減少。

語彙の統一。

“適切さ”の増加。


エリオン

「……支配だな。」


アリア

「……うん。」


アリア

「……でも……

 命令は……

 ない。」


エリオン

「だから厄介だ。」


アリア

「……自由を……

 装ってる……。」


彼女は、

静かに言う。


アリア

「……これは……

 壊す……

 段階じゃ……

 ない。」


アリア

「……浸食……

 してる……。」


***


窓の外。


帝都の灯が、

整然と並ぶ。


秩序正しい光。


だが、

その均一さの中で、

いくつかの灯が、

静かに消えていた。


声を出さなくなった者たちの、

代わりに。

アリアが

この見えにくい支配に対し、

正面衝突ではない方法を選びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ